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5:年下カレシの躾け方(※)
(8)完
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「礼人さん、あつくない?」
「うん……平気……」
「はい、こっち」
「ん……っ、くすぐってえよ……」
バカ、と言いながら、奥村は濱口に素直に髪の毛を乾かされていた。一緒にお風呂に入れて、体洗わせてくれて、髪の毛まで……! と濱口は喜びにうち震えながら、やっぱり夢じゃないよな? と奥村の耳元に確かめるようにくちづけをおとした。
「はあ……幸せ……」
「え? 何……?」
「なんでもないー」
ドライヤーの音できこえなかったのか、奥村が聞き返してくるけれど、濱口はにこにこと笑いながら、そのきれいな銀色の髪の毛をとかすように乾かしていた。さらさらとした感触で、仕事の時のようにセットされていないと、まっすぐできらきらと光っている。もう時刻はとっくに昼近くになっていて、カーテンをあけた大きな窓からは光が差し込んでいてとても気持ちがいい。
大きなソファーで濱口に甘やかされるように奥村は彼の体を背もたれにするように座っている。ドライヤーをきれいにあておわり、はい、と濱口が笑うと、奥村は濱口に近づいて、また甘えた声を出した。
「……飯、どうする?」
「なんか頼みます?」
「うん……パスタかなんか……」
「えーと、ルームサービスって……うわ、たっか!!」
「いーよ、そんくらい……」
外出るのめんどくせえし、すぐにまたしてえし、とさらっと言う奥村に、濱口はかあっと頬を赤くさせる。
「……夢じゃない? これ、ほんと夢じゃねえよな……?」
「まだ言ってんのか、お前……」
もう一回つねってやろうか? と意地悪く笑う奥村は濱口の腕の中におさまり、メニューを見て、普通の三倍くらいしそうな値段のパスタを、これとこれ、と指示して濱口に電話をさせた。
そして、それからもどってくると、また自分の背もたれになるようにさせて二人でくっついている。バスローブのまま、ぼんやりと明るい光の中、二人で居たまま、静かに時間が流れていく。幸せだなあ、と濱口が思っていると、奥村がよいしょ、と鞄に手をのばし、手帳をぱらぱらとめくり始めた。
「仕事のことは忘れるんじゃなかったの、礼人さん?」
「んー……なあ、濱口、出張いつからだっけ? 今度大阪行くっつってなかったか?」
「え? ああ、火曜日からですけど……」
「そうか……いつまで?」
「木曜日には帰ります。夜になると思うけど……」
「そっか……じゃあ、金曜日は?」
「こっちで会議。礼人さんは?」
オレはその次の月曜日からイタリアだなあ……と奥村は手帳とスマートフォンを睨むと、こてんっと濱口の方へ頭を傾けて体重を預けた。
「なあ、猛……金曜日、いい?」
「えっ!? あ、う、うん……っ」
昨日からたまに呼ばれる名前にどきどきして、濱口は奥村の腹のあたりに回している手をきゅうっと握りしめる。そんなあからさまに誘われたら、またしたくなっちまう……でも、もうすぐルームサービスきちゃうし! と一人でもやもやしていると、奥村は、よし、と手帳の一週間後の金曜日に書き込んだ。
「じゃあ、十時にオレの部屋な?」
「えっ、あ……っ、はい……っ」
家の前で待ってたらいいですか、と濱口が言うと、奥村は少し止まって、ああ、忘れてた! と鞄をまたあさった。
「ほら、これ」
「え……? ……ええっ!?」
「……なんだよ……」
いらねえなら返せ、と濱口の反応に不機嫌そうに唇をとがらせた奥村は、恥ずかしいのか俯いて、濱口の体にもたれかかった。
「……いらねえのかよ……」
「いやっ……あの、いや……びっくりして……っ!」
奥村から渡された合鍵を濱口は震える手で握りしめ、いいんですか……っ、ときいた。
「うち……鍵つくる手続が面倒で……時間かかっちまって……その……」
もっと早くに渡すつもりだったんだけど、と奥村が耳を赤くしているのをみて、濱口は後ろからぎゅうっと抱きしめる。
「やっぱり、夢じゃない……?」
「違うって」
バカ、と奥村は埋めてくる濱口の頭をなでるようにそっと手を伸ばすと、ちゅっとかわすだけのキスをして、夢だとオレも困る、と照れたように笑った。
「来週は金曜日十時、オレの部屋、な?」
「はい」
「会社の予定表も予定ありってうめとくから」
「っ、はい……っ」
「あーもう……」
泣くなよ……バカ、と言った奥村は濱口の頭をぽんぽんっとはたいて、お前、まだ髪の毛かわかしてなかったのかーとその前髪をあげた。
キスをかわしていると、部屋のチャイムがなって、パスタがきたとわかる。盛り上がりかけていたのに、と濱口が不満そうな顔をしていたが、奥村に、早くとりにいってこいといわれ、渋々とりにいく。
「うー……オレ、目ぇ、赤くねえかなあ? 恥ずかし……っ」
「ははっ、だいじょーぶだろ」
早くー飯ーと子供のように言う奥村に、濱口はハイハイとこたえて、ルームサービスをとりにいく。ここでいいです、と皿などを受け取って客室担当を帰らせると、礼人さん、と笑顔で振り向く。
奥村はその笑顔を眩しそうに見つめ、目を細めると、さっさと食って、またしよっか? と、ただ幸せそうに笑った。
了
「うん……平気……」
「はい、こっち」
「ん……っ、くすぐってえよ……」
バカ、と言いながら、奥村は濱口に素直に髪の毛を乾かされていた。一緒にお風呂に入れて、体洗わせてくれて、髪の毛まで……! と濱口は喜びにうち震えながら、やっぱり夢じゃないよな? と奥村の耳元に確かめるようにくちづけをおとした。
「はあ……幸せ……」
「え? 何……?」
「なんでもないー」
ドライヤーの音できこえなかったのか、奥村が聞き返してくるけれど、濱口はにこにこと笑いながら、そのきれいな銀色の髪の毛をとかすように乾かしていた。さらさらとした感触で、仕事の時のようにセットされていないと、まっすぐできらきらと光っている。もう時刻はとっくに昼近くになっていて、カーテンをあけた大きな窓からは光が差し込んでいてとても気持ちがいい。
大きなソファーで濱口に甘やかされるように奥村は彼の体を背もたれにするように座っている。ドライヤーをきれいにあておわり、はい、と濱口が笑うと、奥村は濱口に近づいて、また甘えた声を出した。
「……飯、どうする?」
「なんか頼みます?」
「うん……パスタかなんか……」
「えーと、ルームサービスって……うわ、たっか!!」
「いーよ、そんくらい……」
外出るのめんどくせえし、すぐにまたしてえし、とさらっと言う奥村に、濱口はかあっと頬を赤くさせる。
「……夢じゃない? これ、ほんと夢じゃねえよな……?」
「まだ言ってんのか、お前……」
もう一回つねってやろうか? と意地悪く笑う奥村は濱口の腕の中におさまり、メニューを見て、普通の三倍くらいしそうな値段のパスタを、これとこれ、と指示して濱口に電話をさせた。
そして、それからもどってくると、また自分の背もたれになるようにさせて二人でくっついている。バスローブのまま、ぼんやりと明るい光の中、二人で居たまま、静かに時間が流れていく。幸せだなあ、と濱口が思っていると、奥村がよいしょ、と鞄に手をのばし、手帳をぱらぱらとめくり始めた。
「仕事のことは忘れるんじゃなかったの、礼人さん?」
「んー……なあ、濱口、出張いつからだっけ? 今度大阪行くっつってなかったか?」
「え? ああ、火曜日からですけど……」
「そうか……いつまで?」
「木曜日には帰ります。夜になると思うけど……」
「そっか……じゃあ、金曜日は?」
「こっちで会議。礼人さんは?」
オレはその次の月曜日からイタリアだなあ……と奥村は手帳とスマートフォンを睨むと、こてんっと濱口の方へ頭を傾けて体重を預けた。
「なあ、猛……金曜日、いい?」
「えっ!? あ、う、うん……っ」
昨日からたまに呼ばれる名前にどきどきして、濱口は奥村の腹のあたりに回している手をきゅうっと握りしめる。そんなあからさまに誘われたら、またしたくなっちまう……でも、もうすぐルームサービスきちゃうし! と一人でもやもやしていると、奥村は、よし、と手帳の一週間後の金曜日に書き込んだ。
「じゃあ、十時にオレの部屋な?」
「えっ、あ……っ、はい……っ」
家の前で待ってたらいいですか、と濱口が言うと、奥村は少し止まって、ああ、忘れてた! と鞄をまたあさった。
「ほら、これ」
「え……? ……ええっ!?」
「……なんだよ……」
いらねえなら返せ、と濱口の反応に不機嫌そうに唇をとがらせた奥村は、恥ずかしいのか俯いて、濱口の体にもたれかかった。
「……いらねえのかよ……」
「いやっ……あの、いや……びっくりして……っ!」
奥村から渡された合鍵を濱口は震える手で握りしめ、いいんですか……っ、ときいた。
「うち……鍵つくる手続が面倒で……時間かかっちまって……その……」
もっと早くに渡すつもりだったんだけど、と奥村が耳を赤くしているのをみて、濱口は後ろからぎゅうっと抱きしめる。
「やっぱり、夢じゃない……?」
「違うって」
バカ、と奥村は埋めてくる濱口の頭をなでるようにそっと手を伸ばすと、ちゅっとかわすだけのキスをして、夢だとオレも困る、と照れたように笑った。
「来週は金曜日十時、オレの部屋、な?」
「はい」
「会社の予定表も予定ありってうめとくから」
「っ、はい……っ」
「あーもう……」
泣くなよ……バカ、と言った奥村は濱口の頭をぽんぽんっとはたいて、お前、まだ髪の毛かわかしてなかったのかーとその前髪をあげた。
キスをかわしていると、部屋のチャイムがなって、パスタがきたとわかる。盛り上がりかけていたのに、と濱口が不満そうな顔をしていたが、奥村に、早くとりにいってこいといわれ、渋々とりにいく。
「うー……オレ、目ぇ、赤くねえかなあ? 恥ずかし……っ」
「ははっ、だいじょーぶだろ」
早くー飯ーと子供のように言う奥村に、濱口はハイハイとこたえて、ルームサービスをとりにいく。ここでいいです、と皿などを受け取って客室担当を帰らせると、礼人さん、と笑顔で振り向く。
奥村はその笑顔を眩しそうに見つめ、目を細めると、さっさと食って、またしよっか? と、ただ幸せそうに笑った。
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