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第一章 二千年後の世界
スローライフ生活終了のお知らせ
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賢者の森の中心の開けた地には、地上五階建ての巨大な屋敷が建ち、その周囲には新鮮な水が流れている。更に辺りには大量の魔力を含んだ果実の実る木々が立ち並んでいる。
新鮮な空気と晴れ渡る空の下に構えるそれら全ては、見る者全てを圧倒するに違いない。
しかし、かくいう俺はそんな景色に既に飽きがきており、無駄に長く果てしない暇な時間に悩まされていた。
「……スローライフってこんなもんなのか?」
俺は草原の上で仰向けになりながら、青く澄み渡る空を眺めて呟いた。
そして、今日に至るまでの一ヶ月間の出来事を振り返る。
まずは、スローライフ生活初日。
俺はわくわくした思いを胸に、土を操る魔法と木々を操る魔法、その他諸々たくさんの魔法を使って、巨大な屋敷を建造した。ついでに周囲に木々や花々を植え、自然を意識した立派な外観に仕上げると、大外周りを魔法で掘削して大量の水を流し込んだ。
その水を生み出したのももちろん魔法だ。それらはいわゆる水堀というやつで、出入り口を絞り込むことで外敵への対応が容易くなり、中央の屋敷から一方的に攻撃することもできる造りである。
これで初日が終了。
ここから先は割愛する。
スローライフ生活二日目から今日まで。
初日に住居を造り、食料を見つけ、完全に生活に適応してしまった俺は、二日目から今日に至るまでほとんどやることがなかった。
そもそも賢者の森にいても娯楽がないのが一番の問題だ。
魔法に関する本、通称魔法書なんて手元に持ってないし、この世界の本があっても役に立たないだろうし、じゃあ一人で魔法の鍛錬を積むかと言われたらそれはしなかった。切磋琢磨できる相手もおらず、魔王討伐という大きな目標もなく、そんな状態でただ一人で黙々と鍛錬を積むなど苦行でしかない。
つまり何が言いたいかというと、スローライフなんて一人じゃ何も楽しくないということだ。
「……散歩するのもいい加減飽きてきたな」
寝て起きて飯を食い、時間潰しに水堀をプール代わりに泳いでみたり、リフレッシュがてら森の中を散歩してみたり、他にも木登りをしてみたり、日光浴をしてみたり……色々と試してみたが、やはり俺の心は空虚なままだった。
何か面白いことでも起きないかな……。
俺は森の中を歩きながら息を吐いた。その時。
バトロードタウンがある方角に無数の気配を感じ取った。数にして五か六くらいか。それらの気配は賢者の森に残り数歩で侵入しようかという位置で立ち止まっている。
「行くか」
何やら興味の湧いた俺は歩く速度をあげて、現場を見てみることにした。
一ヶ月も賢者の森で過ごしてきたが、外界から人間が接触してきたのは初めてだな。
できれば、いっときの出来事ではなく、今後に繋がる’何か’を得たいところだ。
新鮮な空気と晴れ渡る空の下に構えるそれら全ては、見る者全てを圧倒するに違いない。
しかし、かくいう俺はそんな景色に既に飽きがきており、無駄に長く果てしない暇な時間に悩まされていた。
「……スローライフってこんなもんなのか?」
俺は草原の上で仰向けになりながら、青く澄み渡る空を眺めて呟いた。
そして、今日に至るまでの一ヶ月間の出来事を振り返る。
まずは、スローライフ生活初日。
俺はわくわくした思いを胸に、土を操る魔法と木々を操る魔法、その他諸々たくさんの魔法を使って、巨大な屋敷を建造した。ついでに周囲に木々や花々を植え、自然を意識した立派な外観に仕上げると、大外周りを魔法で掘削して大量の水を流し込んだ。
その水を生み出したのももちろん魔法だ。それらはいわゆる水堀というやつで、出入り口を絞り込むことで外敵への対応が容易くなり、中央の屋敷から一方的に攻撃することもできる造りである。
これで初日が終了。
ここから先は割愛する。
スローライフ生活二日目から今日まで。
初日に住居を造り、食料を見つけ、完全に生活に適応してしまった俺は、二日目から今日に至るまでほとんどやることがなかった。
そもそも賢者の森にいても娯楽がないのが一番の問題だ。
魔法に関する本、通称魔法書なんて手元に持ってないし、この世界の本があっても役に立たないだろうし、じゃあ一人で魔法の鍛錬を積むかと言われたらそれはしなかった。切磋琢磨できる相手もおらず、魔王討伐という大きな目標もなく、そんな状態でただ一人で黙々と鍛錬を積むなど苦行でしかない。
つまり何が言いたいかというと、スローライフなんて一人じゃ何も楽しくないということだ。
「……散歩するのもいい加減飽きてきたな」
寝て起きて飯を食い、時間潰しに水堀をプール代わりに泳いでみたり、リフレッシュがてら森の中を散歩してみたり、他にも木登りをしてみたり、日光浴をしてみたり……色々と試してみたが、やはり俺の心は空虚なままだった。
何か面白いことでも起きないかな……。
俺は森の中を歩きながら息を吐いた。その時。
バトロードタウンがある方角に無数の気配を感じ取った。数にして五か六くらいか。それらの気配は賢者の森に残り数歩で侵入しようかという位置で立ち止まっている。
「行くか」
何やら興味の湧いた俺は歩く速度をあげて、現場を見てみることにした。
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できれば、いっときの出来事ではなく、今後に繋がる’何か’を得たいところだ。
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皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
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