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号外、ざまあ
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翌朝。
「ごうがーい! 号外号外号外! ギルドマスターから緊急ニュースだよー!」
王都は事件の騒動に包まれていた。
道行く人々は熱心にその話題に耳を傾け、驚きと怒りの声が市場や広場に響き渡っていった。
庶民から貴族まで、あらゆる階層の人々が多くの暴露に興奮し、議論を交わしている。街の至る所で、ヘンダーソン公爵とその一人息子であるチャーリー名前が囁かれている。
そんな光景を俺は適当な建物の軒下から眺めていた。
想像以上の広まり方だ。
全ての依頼を遂行し終えてから、今に至るまでものの数時間しかなかったはずだが、アレンはギルマスとして早すぎるくらいの対応をしてくれた。
【ヘンダーソン公爵家、没落か? 数多の奴隷を幽閉し、合成獣作成実験を実施していた模様! 本人は関与を否定し、失踪した賢者に罪をなすりつけ!? 今後の展開に期待が高まる!】
紙の大部分を使う大きな見出しだ。
その下には俺が捏造した公爵の直筆の言葉が記載されている。
内容を簡単にまとめると……”私がやりました、ごめんなさい。時には冒険者ギルドの受付嬢や冒険者とも結託し、奴隷オークションを利用して多数の奴隷を貶めました。奴隷たちを使って合成獣作成に着手し、残忍かつ非道な実験に取り組んでました。
公爵として、貴族として、市民のために何かをすることはもうできないので、猛省の意味を込めてヘンダーソン公爵家は我が代を持って家名断絶とさせていただきます”と、いった具合だ。
更にその下にはアレンのサインとコメントが添えられており、外部の諜報員に情報収集を依頼し今回の騒動が発覚した件、その結果非道な悪事が露呈した件、ギルマスという立場でありながら悪事を見抜けなかった件、他にも色々な理由から釈明している。
そんな中、実行犯である俺についての話も記されていた。
曰く、男は闇に溶け込み、ものの数時間で悪を断罪した。
曰く、男は漆黒の装いに身を包み、有無を言わせない覇気をその身に纏っていた。
曰く、男は確かな実力と冷静さを兼ね備えており、高等な魔法を容易に操る魔法使いだった。
曰く、男は失踪した賢者であるとの噂もあるが、気が狂った公爵の世迷言の可能性も否定できない。
しかし、ギルドマスターである私は、名も知顔も知らぬ男のことを、こう呼ぶことにした。
「……闇を纏いし漆黒の断罪者」
俺はどことない恥ずかしさを覚えながらそう口にした。
確かに、俺は名乗ってないし顔も見せてないし、素性もはっきりさせてないから仕方ないが、それにしても過剰に表現しすぎじゃないか?
「賢者ってことがバレなければなんでもいいか。これで平穏が戻りそうだしな」
俺は新聞を魔法収納へしまいこんだ。
多分、朝が弱いシエルはまだぐっすり眠っているだろう。
数時間前の俺は俺であって俺じゃないので、適当に話を合わせて日常に溶け込むとしよう。
「さて、戻るか」
俺はローブを翻して踵を返した。
シエルには”旧友に会いに行く”と伝えて二日間の休みを言い渡していたし、今日と明日くらいはのんびり過ごすとしよう。
「ごうがーい! 号外号外号外! ギルドマスターから緊急ニュースだよー!」
王都は事件の騒動に包まれていた。
道行く人々は熱心にその話題に耳を傾け、驚きと怒りの声が市場や広場に響き渡っていった。
庶民から貴族まで、あらゆる階層の人々が多くの暴露に興奮し、議論を交わしている。街の至る所で、ヘンダーソン公爵とその一人息子であるチャーリー名前が囁かれている。
そんな光景を俺は適当な建物の軒下から眺めていた。
想像以上の広まり方だ。
全ての依頼を遂行し終えてから、今に至るまでものの数時間しかなかったはずだが、アレンはギルマスとして早すぎるくらいの対応をしてくれた。
【ヘンダーソン公爵家、没落か? 数多の奴隷を幽閉し、合成獣作成実験を実施していた模様! 本人は関与を否定し、失踪した賢者に罪をなすりつけ!? 今後の展開に期待が高まる!】
紙の大部分を使う大きな見出しだ。
その下には俺が捏造した公爵の直筆の言葉が記載されている。
内容を簡単にまとめると……”私がやりました、ごめんなさい。時には冒険者ギルドの受付嬢や冒険者とも結託し、奴隷オークションを利用して多数の奴隷を貶めました。奴隷たちを使って合成獣作成に着手し、残忍かつ非道な実験に取り組んでました。
公爵として、貴族として、市民のために何かをすることはもうできないので、猛省の意味を込めてヘンダーソン公爵家は我が代を持って家名断絶とさせていただきます”と、いった具合だ。
更にその下にはアレンのサインとコメントが添えられており、外部の諜報員に情報収集を依頼し今回の騒動が発覚した件、その結果非道な悪事が露呈した件、ギルマスという立場でありながら悪事を見抜けなかった件、他にも色々な理由から釈明している。
そんな中、実行犯である俺についての話も記されていた。
曰く、男は闇に溶け込み、ものの数時間で悪を断罪した。
曰く、男は漆黒の装いに身を包み、有無を言わせない覇気をその身に纏っていた。
曰く、男は確かな実力と冷静さを兼ね備えており、高等な魔法を容易に操る魔法使いだった。
曰く、男は失踪した賢者であるとの噂もあるが、気が狂った公爵の世迷言の可能性も否定できない。
しかし、ギルドマスターである私は、名も知顔も知らぬ男のことを、こう呼ぶことにした。
「……闇を纏いし漆黒の断罪者」
俺はどことない恥ずかしさを覚えながらそう口にした。
確かに、俺は名乗ってないし顔も見せてないし、素性もはっきりさせてないから仕方ないが、それにしても過剰に表現しすぎじゃないか?
「賢者ってことがバレなければなんでもいいか。これで平穏が戻りそうだしな」
俺は新聞を魔法収納へしまいこんだ。
多分、朝が弱いシエルはまだぐっすり眠っているだろう。
数時間前の俺は俺であって俺じゃないので、適当に話を合わせて日常に溶け込むとしよう。
「さて、戻るか」
俺はローブを翻して踵を返した。
シエルには”旧友に会いに行く”と伝えて二日間の休みを言い渡していたし、今日と明日くらいはのんびり過ごすとしよう。
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