ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!

文字の大きさ
17 / 48
2章 セイクリールの歩き方 編

ハーレムキングは騎士系ヒロインを堕としかける

しおりを挟む
 セイクリール神殿の外縁、石造りの回廊には、西の空から差し込む橙の光が、静かに影を落としていた。

 事件が決着してから数時間後。
 オレは一人、回廊に腰を下ろして夕焼けを眺めていた。

「——やっと、終わったな」

 誰にともなく、そう呟いたときだった。

「勝手に一人でかっこつけないでくれる?」

 背後から声がした。

 振り返ると、銀の軽鎧を脱いで簡素な外套を羽織ったアレッタが、腕を組んでこちらを見下ろしていた。

 普段より幾分、表情が柔らかい。

「ふはははっ! 来たか、騎士系、もとい幼馴染系ヒロインよ! 事件も解決したし、そろそろ王に堕ちる頃合いか?」

「はぁ? 誰が堕ちるかっての。気持ち悪っ」

「おやおや、言葉とは裏腹に、表情が妙に優しいぞ? まるでオレに惚れてるかのような——」

「そ・れ・は・ない!」

 ぴしゃりと否定される。だが、オレの目はごまかせない。

 アレッタの耳は、ほんのり赤い。
 そのまま彼女は、オレの隣に腰を下ろした。自然すぎる動作だった。

「……ほんとに、ありがとね。サラのこと、助けてくれて」

 素直な言葉だった。

 騎士としての誇りに生きる彼女は、滅多にそういう言葉を口にしない。どこかのタイミングで、サラがそう言っていた気がする。

「ふっ。王であるオレが動いたのは、義のためだ。サラが正しいと思ったから。そして——」

 オレは夕日を見つめたまま、言葉を続ける。

「……君が、本当にサラのことを大切に思っていたからな」

 沈黙。

 アレッタは目を見開いて、オレをじっと見た。
 しばらくの間、何も言わなかった。

 オレは沈黙の空気などまるで感じていないかのように、ゆっくりとアレッタへと歩み寄った。

「さて……アレッタ」

 彼女の名を呼びながら、その金の瞳を真正面から見据える。

「君は実に素晴らしい」

「は、はぁ?」

 警戒心むき出しの反応もお構いなしだ。むしろ良い反応である。

「勇気、決断力、誇り高さ。そしてなにより、その凛々しい眼差し。どれを取っても、王の側に並ぶに相応しい資質を備えている」

「な、なに言ってんのよ急に……」

「今の立場を手に入れたにもかかわらず、周囲から距離を置かれるサラのために行動を起こすその姿を見た時、思ったのだ。“ああ、これはもう堕ちるな”と。オレが、ではなく、君が、だ」

「……へっ!? ちょ、ちょっと!?」

 アレッタの顔が見る間に赤くなる。

 オレは怯まず、さらに一歩近づいた。
 彼女の手を取って目を見つめる。

「断っておくが、これは口説きではない。これは“宣言”だ。いつの日か君は、必ずオレに堕ちる。それが運命だ」

「お、お、おち……堕ちたりなんかしないからっ!」

「ならばなおのこと、燃えるではないか! 挑むに値する鉄壁の防御こそ王が突破すべき道なのだ!」

「こ、こっちを見つめてくるなぁああ! 手を離せえええっ!」

 アレッタが顔を背けたが、その耳まで真っ赤になっている。
 その背中を、オレは優雅に眺めた。

「ふははははっ! よい、実によい! これぞまさにハーレム建国の第一歩! 運命の鐘は、すでに鳴った!」

 オレが高らかに笑うと、また沈黙が訪れた
 しかし、今度は彼女が小さく笑った。

「……ほんっと、変な王様。どこまで本気で言ってるのかわからない」

「全部本気だ。何度も言う、ハーレムキングは嘘をつかない! 愛と正義に生きているからな!」

「……そう」

 ぽつりと、それだけ言って。

 アレッタは立ち上がり、夕陽に背を向ける。

「じゃあ……これからも、その調子でいなよ。あたしのことも、サラのことも、他の誰かのことも、全部、見ててあげなさいよ」

「命じられるまでもない! だが、オレは君のことも見ている! 困り事があったらすぐに王の名を呼べ!」

 オレが堂々と答えると、アレッタはふっと笑った。

 それは、これまで見た中でいちばん穏やかな表情だった。

 美しい

 オレはそう思った。彼女の氷の盾が、ほんの少しだけ外れたような気がした。






 サラの汚名が晴れてから数日後。
 セイクリールの空は、どこまでも澄んでいた。

「……ふふ。まさかあたしたち三人が本当に事件を解決するなんてね。正直、半信半疑だったけど……本当に、やってのけたわね」

 街外れの草原の上で、アレッタは安心しきったように頬を緩めていた。その視線の先にはオレがいる。

「ふははははっ! 王に不可能などない! それがハーレムキング・デイビッドという男よ!」

 空へ向けて堂々と腕を掲げるオレに、アレッタは半眼になりつつ、ほんの少しだけ——口元を綻ばせた。

「でも、ここから先は、あたしは一緒には行けない」

「任務か」

「うん。セイクリール第三部隊隊長としての責務があるから。だから……」

 そう言いかけたアレッタは、ふと目を逸らす。垂れた髪を耳にかける仕草が大人びていてセクシーだ。
 耳元が、ほんのりと赤く染まっていた。

「……また、そのうち、遊びに来てよね。迷惑じゃなかったら」

 ぴしっ、と空気が割れるような音がした。
 横でそれを聞いていたサラが硬直していた。

「えっ……えっ!? アレッタが……そんな、女の子っぽいことを……!? えっ、今なんて言ったんですか!? 遊びに、来て……? 嘘!」

「あんた、なんでそんなに驚いてんのよ」

「だってっ……! 王様を見てあんなに呆れてたのに……!」

 驚愕と混乱を顔中に貼りつけたサラの姿を見て、オレは愉快そうに笑った。

「ふははははっ! よかろう、アレッタ! 君の笑顔は、この王の胸に刻まれた! 約束しよう! また必ず、王は君の街に帰ってくる! その時まで、麗しくあれ!」

「……もう、ほんと調子いいんだから。勝手に誓ってんじゃないわよ……でも、ま、楽しみにしてるわ」

 アレッタはそう呟くと、ひらひらと手を振った。

 その姿に背を向けて、オレたちは旅路へと足を踏み出す。

 もちろんサラも一緒だ、最初は彼女もセイクリールに残るのかと思っていたが、さすがに今回の一件が尾を引いて気まずさがあるらしい。俺としてはハーレムパートナーが増えて喜ばしいことだ。

「……さて、時間だな」

 風が吹き抜ける。
 まだ見ぬ新たな地へ。新たな出会いへ。

 そして、新たなるハーレムの扉へ!

「さあ、サラ! 次なる土地で、次なるヒロインを探しに行こうではないか!」

「勝手に決めないでくださいってば!!」

 サラのツッコミとともに、朗らかな笑い声が空へと響いた。

 

──王の旅は、まだ始まったばかりである!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...