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4章 論理と感情を合わせる方法 編
ハーレムキングは理論武装系ヒロインに出会う
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翌日。適当な宿屋に泊まり朝を迎えた。
特に決まった予定はなかったのだが、神聖魔法の研究に興味を持ったサラに連れられ、オレたちはとある研究施設へと足を運んでいた。
静かで荘厳な回廊を抜けた先、そこは、古代建築を模した神殿風の造りでありながら、内部には近代魔法装置がずらりと並ぶ奇妙な空間だった。
「ほう……ここが神聖魔法の再編体系を学べる研究所か」
「はい。神聖魔法と他の要素の魔法の組み合わせについて研究されています」
「学と信仰の融合……ロマンがあるな!」
オレが感心していたそのとき、奥の一角で端末に何かを入力していた一人の少女がふとこちらを見た。
淡いブルーの長い髪を無造作に垂らし、白衣の下に簡素な制服。その瞳は氷のように澄んだ水色で、視線は冷ややかだった。
そして、彼女はぽつりと呟くように言った。
「騒がしい」
「……っ!」
サラが思わず足を止める。
だが、オレはその冷淡な視線にひるむどころか、逆に興味を引かれた。
「ふはははっ! なんと美しき対話の始まり! 君の名を聞かせてくれ、麗しき知の乙女よ!」
「名乗る必要、ある?」
「む、手厳しい……だがそれもよし!」
オレは微笑みながら一歩踏み出す。
「オレはハーレムキング・デイビッドだ! 王として生まれ、王として生き、旅をしながらハーレムを築く者。女と出会えば口説き、心を震わせる、それが使命だ! 宿命だ! 王である所以だ!」
オレはマントを翻して高らかに名乗りをあげた。
しかし、少女は眉一つ動かさずに返した。
「くだらない。感情論に意味はない。目的は?」
「目的だと? 君を口説く——いや、正確には“知りたい”と思っただけだ。魔法を学ぶ知の国にいる君が、どんな魔法を扱うのか、どんな思想で動くのか。それを知りたい。王として、男としてな!」
「それは感情と欲求の混同。非合理。答える価値、ない」
「む……」
完敗だった。
あまりの徹底した拒絶に、さすがのオレも絶句しかけた。
だが、その冷たさすら魅力に変わるのが、ハーレムキングたるオレの宿命!
「だがそれでも、口説く価値がある!」
「その発言、理解不能。消えて?」
「ふはははははっ! 王は消えない! ならば解き明かしてみせよう。君の“理解不能”を、オレの“理解”に変えてみせる!」
王の情熱と、君の理性。
相容れぬ二つが、交差した瞬間だった。
サラは隣でやれやれと肩をすくめていたが、どこか呆れたような、それでいて少しだけ楽しげな笑みを浮かべていた。
「ちなみに、君の名前は?」
「……セレナ。セレナ・アル=リュグナス」
名は素直に教えてくれるとは、冷たさとの塩梅がわからなくなる。
「覚えたぞ! セレナ! 今日より君は、王の目標の一つとなった! その名を一生忘れることはないだろう!」
「勝手に私を目標にしないで、迷惑」
「ふふふ、それもまた良し!」
——難攻不落。
この少女に心を開かせるには、並大抵の努力では済まないだろう。
だが、それこそが王の戦場!
こうして、ハーレムキングの新たな挑戦が静かに幕を開けた……かに見えた、そのときだった。
「あの、セレナさんってもしかして、“リュグナス式拡張術式”の開発者の……セレナ・アル=リュグナスさんですか!?」
サラが、驚愕と興奮を隠しきれない様子で声を上げた。
その名前を聞いたセレナは、ちらりと視線を向ける。
「そう、わたし。何か問題?」
「すごい……! 私、論文を読んだことがあります。構築魔法の中でも特に再現性が高くて、でも、必要な魔力操作が難しいって言われてた……! あれを十五歳で!? 本当に、ご本人なんですね!」
「うるさい。研究室では静かに」
「……す、すみませんっ!」
サラが思わず背筋を正す。まるで教師に怒られた生徒のようだった。
「ほう、有名人なのか?」
オレが何気なく尋ねると、サラが小声でオレに囁いた。
「王様……魔法使いの世界じゃ知らない人はいないってくらいのレベルの天才です……! 世間では探究心の鬼と呼ばれてます」
「鬼!? まさか君が鬼系ヒロインだったとは! 見た目とは裏腹にギャップがあるのだな!」
「違います! セレナさんは人間です!」
「ふはははははっ! だがそれもまたよし! 構築魔法のスペシャリストは探究心の鬼! そして難攻不落の鉄壁要塞! 燃える、燃えるぞ! 燃えてきたぞー!!!」
とまあ、相変わらず軽口を叩いていると、セレナが再び視線を戻してきた。
「この人は何? 理解できない」
「王様は常日頃からこんな感じなので気にしないでください」
「王様……?」
「オレは王だ! 嘘偽りではなく、正真正銘の王! 今後、君が困窮したときは手を差し伸べると約束しよう!」
オレは握手を願い出たが、セレナはオレの右手を一瞥するだけで何も言わなかった。
「……」
「あの、神聖魔法について色々と教えてほしくて、今日はここにきたんですけど……」
「構築魔法に関する話なら、少しだけ。でも、神聖魔法についてなら、聞くだけ無駄。あなたに話すことはない」
「え?」
サラがきょとんとした顔になる。
「神聖魔法は、理論性が低い。感情と信仰と曖昧な加護に支配されていて、制御不能。個体差も大きい。正確な再現不可。再現できない魔法は、研究する価値がない」
切り捨てるように、セレナは言い放った。
「……やっぱり、そうなんですね……」
サラが少し残念そうに俯く。
だが、それ以上は何も言わない。
それが真実であると、すでに理解していたからだろう。
だが、セレナはそのまま話を終わらせなかった。
サラの問いが引き金になったのか、突然彼女の瞳がわずかに色を変えた。
その目が、ほんの一瞬だけ輝いたように見えた——
「でも、構築魔法は違う。再現性がある。入力と出力、条件と結果、それらを論理式で結び、精密な陣式で制御する。変数を設定すれば、式は無限に広がる。魔力密度と干渉率、詠唱時間、媒体、発動係数、全てが計算可能。そこに偶然はない。だから、扱える。信じられる。支配できる」
早口でもないのに、言葉が雪崩のように流れ出す。
ドドドドドドと音が聞こえる気がする。
「術式を組み替えるたび、可能性が変わる。使い手の知識、理解、組み立ての巧妙さによって、同じ魔法でも完成度が変わる。構築とは、創造。論理で組まれた知性の芸術。知識と数式の集合体。それが魔法になる。……これほど純粋で、これほど美しい魔術体系はない」
サラが呆気に取られている隣で、オレはただ、頷くことしかできなかった。なぜなら何を言っているのかまるで理解できなかったからな!
——というか、セレナって、スイッチが入るととんでもないな!
「セレナ……君は構築魔法の話なると、よく喋るんだな」
「話す価値があるから。論理は、語る意味がある」
ふいに、また無表情に戻る。
あまりの落差に、もはや感心を通り越して、少し怖くなるレベルだった。
「ふははは……なるほど、実に面白い。君はまさに、探究心の鬼にして、知の怪物というやつだな!」
「鬼? 怪物? それは侮辱?」
「違う、褒めている!」
「……なら、よし」
わずかに頷いたセレナは、そのまま再び端末に視線を戻し、無言で何かを入力し始めた。
どうやら、これ以上はもうオレと話すつもりはなさそうだ。
あの異様な熱量。理性に支配されているように見えて、その奥に何かとてつもない“衝動”が潜んでいる気がした。王の直感は外れない!
ふむ……面白い! 実に面白い!
彼女もまたまた、“攻略対象”としてふさわしい!
特に決まった予定はなかったのだが、神聖魔法の研究に興味を持ったサラに連れられ、オレたちはとある研究施設へと足を運んでいた。
静かで荘厳な回廊を抜けた先、そこは、古代建築を模した神殿風の造りでありながら、内部には近代魔法装置がずらりと並ぶ奇妙な空間だった。
「ほう……ここが神聖魔法の再編体系を学べる研究所か」
「はい。神聖魔法と他の要素の魔法の組み合わせについて研究されています」
「学と信仰の融合……ロマンがあるな!」
オレが感心していたそのとき、奥の一角で端末に何かを入力していた一人の少女がふとこちらを見た。
淡いブルーの長い髪を無造作に垂らし、白衣の下に簡素な制服。その瞳は氷のように澄んだ水色で、視線は冷ややかだった。
そして、彼女はぽつりと呟くように言った。
「騒がしい」
「……っ!」
サラが思わず足を止める。
だが、オレはその冷淡な視線にひるむどころか、逆に興味を引かれた。
「ふはははっ! なんと美しき対話の始まり! 君の名を聞かせてくれ、麗しき知の乙女よ!」
「名乗る必要、ある?」
「む、手厳しい……だがそれもよし!」
オレは微笑みながら一歩踏み出す。
「オレはハーレムキング・デイビッドだ! 王として生まれ、王として生き、旅をしながらハーレムを築く者。女と出会えば口説き、心を震わせる、それが使命だ! 宿命だ! 王である所以だ!」
オレはマントを翻して高らかに名乗りをあげた。
しかし、少女は眉一つ動かさずに返した。
「くだらない。感情論に意味はない。目的は?」
「目的だと? 君を口説く——いや、正確には“知りたい”と思っただけだ。魔法を学ぶ知の国にいる君が、どんな魔法を扱うのか、どんな思想で動くのか。それを知りたい。王として、男としてな!」
「それは感情と欲求の混同。非合理。答える価値、ない」
「む……」
完敗だった。
あまりの徹底した拒絶に、さすがのオレも絶句しかけた。
だが、その冷たさすら魅力に変わるのが、ハーレムキングたるオレの宿命!
「だがそれでも、口説く価値がある!」
「その発言、理解不能。消えて?」
「ふはははははっ! 王は消えない! ならば解き明かしてみせよう。君の“理解不能”を、オレの“理解”に変えてみせる!」
王の情熱と、君の理性。
相容れぬ二つが、交差した瞬間だった。
サラは隣でやれやれと肩をすくめていたが、どこか呆れたような、それでいて少しだけ楽しげな笑みを浮かべていた。
「ちなみに、君の名前は?」
「……セレナ。セレナ・アル=リュグナス」
名は素直に教えてくれるとは、冷たさとの塩梅がわからなくなる。
「覚えたぞ! セレナ! 今日より君は、王の目標の一つとなった! その名を一生忘れることはないだろう!」
「勝手に私を目標にしないで、迷惑」
「ふふふ、それもまた良し!」
——難攻不落。
この少女に心を開かせるには、並大抵の努力では済まないだろう。
だが、それこそが王の戦場!
こうして、ハーレムキングの新たな挑戦が静かに幕を開けた……かに見えた、そのときだった。
「あの、セレナさんってもしかして、“リュグナス式拡張術式”の開発者の……セレナ・アル=リュグナスさんですか!?」
サラが、驚愕と興奮を隠しきれない様子で声を上げた。
その名前を聞いたセレナは、ちらりと視線を向ける。
「そう、わたし。何か問題?」
「すごい……! 私、論文を読んだことがあります。構築魔法の中でも特に再現性が高くて、でも、必要な魔力操作が難しいって言われてた……! あれを十五歳で!? 本当に、ご本人なんですね!」
「うるさい。研究室では静かに」
「……す、すみませんっ!」
サラが思わず背筋を正す。まるで教師に怒られた生徒のようだった。
「ほう、有名人なのか?」
オレが何気なく尋ねると、サラが小声でオレに囁いた。
「王様……魔法使いの世界じゃ知らない人はいないってくらいのレベルの天才です……! 世間では探究心の鬼と呼ばれてます」
「鬼!? まさか君が鬼系ヒロインだったとは! 見た目とは裏腹にギャップがあるのだな!」
「違います! セレナさんは人間です!」
「ふはははははっ! だがそれもまたよし! 構築魔法のスペシャリストは探究心の鬼! そして難攻不落の鉄壁要塞! 燃える、燃えるぞ! 燃えてきたぞー!!!」
とまあ、相変わらず軽口を叩いていると、セレナが再び視線を戻してきた。
「この人は何? 理解できない」
「王様は常日頃からこんな感じなので気にしないでください」
「王様……?」
「オレは王だ! 嘘偽りではなく、正真正銘の王! 今後、君が困窮したときは手を差し伸べると約束しよう!」
オレは握手を願い出たが、セレナはオレの右手を一瞥するだけで何も言わなかった。
「……」
「あの、神聖魔法について色々と教えてほしくて、今日はここにきたんですけど……」
「構築魔法に関する話なら、少しだけ。でも、神聖魔法についてなら、聞くだけ無駄。あなたに話すことはない」
「え?」
サラがきょとんとした顔になる。
「神聖魔法は、理論性が低い。感情と信仰と曖昧な加護に支配されていて、制御不能。個体差も大きい。正確な再現不可。再現できない魔法は、研究する価値がない」
切り捨てるように、セレナは言い放った。
「……やっぱり、そうなんですね……」
サラが少し残念そうに俯く。
だが、それ以上は何も言わない。
それが真実であると、すでに理解していたからだろう。
だが、セレナはそのまま話を終わらせなかった。
サラの問いが引き金になったのか、突然彼女の瞳がわずかに色を変えた。
その目が、ほんの一瞬だけ輝いたように見えた——
「でも、構築魔法は違う。再現性がある。入力と出力、条件と結果、それらを論理式で結び、精密な陣式で制御する。変数を設定すれば、式は無限に広がる。魔力密度と干渉率、詠唱時間、媒体、発動係数、全てが計算可能。そこに偶然はない。だから、扱える。信じられる。支配できる」
早口でもないのに、言葉が雪崩のように流れ出す。
ドドドドドドと音が聞こえる気がする。
「術式を組み替えるたび、可能性が変わる。使い手の知識、理解、組み立ての巧妙さによって、同じ魔法でも完成度が変わる。構築とは、創造。論理で組まれた知性の芸術。知識と数式の集合体。それが魔法になる。……これほど純粋で、これほど美しい魔術体系はない」
サラが呆気に取られている隣で、オレはただ、頷くことしかできなかった。なぜなら何を言っているのかまるで理解できなかったからな!
——というか、セレナって、スイッチが入るととんでもないな!
「セレナ……君は構築魔法の話なると、よく喋るんだな」
「話す価値があるから。論理は、語る意味がある」
ふいに、また無表情に戻る。
あまりの落差に、もはや感心を通り越して、少し怖くなるレベルだった。
「ふははは……なるほど、実に面白い。君はまさに、探究心の鬼にして、知の怪物というやつだな!」
「鬼? 怪物? それは侮辱?」
「違う、褒めている!」
「……なら、よし」
わずかに頷いたセレナは、そのまま再び端末に視線を戻し、無言で何かを入力し始めた。
どうやら、これ以上はもうオレと話すつもりはなさそうだ。
あの異様な熱量。理性に支配されているように見えて、その奥に何かとてつもない“衝動”が潜んでいる気がした。王の直感は外れない!
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