ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!

文字の大きさ
26 / 48
3章 公爵令嬢の救い方 編

ハーレムキングは屈しない

しおりを挟む
「早朝から仕掛けてくるのは目に見えていたぞ! 次は何を仕掛けてくる気だ!」

 部屋を出たオレは威風堂々と廊下を進んだ。

 王は決して怯まない。屈しない。立ち向かう精神は揺るがない!

 使用人の姿はない。掃除や朝の支度をする様子もなく、廊下は閑散としていた。朝食を運んできた数名も雲隠れのように姿を消した。
 まるでオレが部屋の外に出るのを待っていたかのように。

 そして、その瞬間はいきなり訪れた。

 ——ぷちっ……

 廊下を進んでいくと、糸が切れるような音が聞こえた。同時に、高所から巨大な壺が落ちてきた。
 姑息な真似をしてくれるな。

「無駄だッ!」

 ガキィィンッ!

 壺はまるで鋼を砕いたかのような鈍い音を残し、オレの脳天に直撃した。
 壺は硬い鋼製だった。これではもう壺ではなく単なる鈍器だ。

 しかし、オレへのダメージはゼロ。
 それもそのはず。

「フッ……残念だったな。ハーレムキングは怪我をしない!」

 床へ壺が落ちた衝撃音はフロア全体に響いたのか、後方の戸が勢いよく開かれると、そこからサラが飛び出してきた。

「な、なんの音ですか?」

「罠だ。毒に続いて罠が仕掛けられていた」

「わ、わな!? というか、王様がさっき挑発したせいでは……?」

 正論は受け付けん!

「あの角度と構造、自然な落下ではありえん。おそらくオレがここを通ると同時に、足元の絹糸が切れる仕掛けだ。絹糸は天井付近に吊るされた壺に繋がれていたから間違いない」

 そう断言しながら、オレは足元の絹糸を手に取った。
 サラやルシアが引っかかっていたら間違いなく死んでいた。

「これで二つ目だ。毒と罠……なるほど、義兄殿よ、小賢しい真似をしてくれるじゃないか」

 オレがここまでさらに説明したところで、目の前からルシアが走ってきた。
 その顔は焦燥に満ちていて、息は荒くなっている。

「デイビッドさん! すごい音がしましたが!?」

「心配はいらん。愚者の遊びに付き合っていただけだ。王がいる限り、君に毒も傷も届かせはしない。安心しろ! 昨晩の約束はきっちり果たす!」

 その言葉に、ルシアの目がわずかに揺れた。詳細を伝えずとも何が起きたか理解したようだ。頭の回転が早くて助かる。

 サラは真剣な顔で隣に立ち、窓の外を睨む。

「……私、しっかり見張ります。毒とか罠で命を狙うなんて、絶対に許せない」

 オレはサラの肩に手を置いた。

「頼りにしているぞ。だが、背負いすぎるなよ。サラ、君が傷つくのも、オレは許さない。ハーレムキングとはそういうものだ!」

「っ……は、はい」

 サラの顔がほんのりと赤くなった。

 ルシアは少しの間、何も言わずオレたちを見ていたが、やがて、ゆっくりと口を開いた。

「どうして、そこまで……」

「ふむ、説明は簡単だ」

 オレは胸を張り、朗々と言い放つ。

「昨晩も伝えた通り、この世には守られるべき“王の女”がいてな。君がその一人なら、当然守る。それだけの話だ!」

 ルシアは一度何か言いかけて、すぐにやめた。

 その代わり、ほんの一瞬だけ笑った。

 あの仮面ではない、昨晩と同じく本物の笑みの“片鱗”だった。

「その笑顔を大切にするといい! 君の笑顔は美しい! 分厚い仮面の下にあるその笑顔こそが君の価値なのだからな! ふはははははっ!」

 オレはそれだけ言い残すと、改めて用を出しに歩みを進めたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...