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慟哭
しおりを挟む「瑠璃、じゃあまた明日ね!」
「うん、また」
私は鹿島瑠璃。先週から中学校へ進学した1年生。
まだ分からないことばっかで嫌になるけどそのうち楽しいこともあるだろう、まぁ期待はしないけど。
そーんな思考を展開しながら学校の階段を下っていた。
そのときに、私は足を踏み外した。
身体が倒れ、何度も頭を段にぶつける。そして、ぐしゃっ、という音が聞こえたのとほぼ同時に、私の意識は暗転した。
そうして、日本の学生「鹿島瑠璃」の人生は幕を閉じた。
次に私が目を覚ましたのは、何も無い空間だった。
「…ここは…どこ…?」
すると、1人の人間がこちらへ向かってくる。
「ようこそ、転生の間へ…」
「転生の…間?」
「はい、死んだ人間はここに来て、色々な選択をするのです…全てを忘れ、1から人生をやり直すか…天国で永遠に過ごすか。そして、一部の人達は、異世界へと転生します」
「異世界へ…転生…?いや、その前に…貴方は誰なんですか?」
「…私は神です。名乗るほどの名前はありません」
神…そんなの、いるわけないでしょ?目の前にいたとしても信じないわ。自慢じゃないけど、私は筋金入りの無心論者だよ?
「神、ねぇ…そんなの、いるわけないのに信じるとでも?」
「目の前にいるのですよ。信じたらどうですか?」
「信じるわけないでしょう、そもそも神がいるなら戦争も犯罪も起こらないはずでしょ」
「人間達の行動については私たちに責任なんてないですしどうこうする価値もないのです」
「…はぁ、そんなこと言う神なんて信じられない」
「目の前にいると言っているのです」
「ハイハイ、それで貴方の話が本当だとすると私がここに居るってことは私は死んだってこと?」
「…あなた本当に12歳?」
「そうだけど」
「…とにかく、貴方は、1からやり直すか…いや、貴女には異世界転生の資格者でしたね」
「…いやだけど、そんな訳分からないこと」
「そう言われましても、決定事項なので」
「人権は?」
「神の前では無力です」
「はぁ?」
「では、新しい人生をお楽しみくださいね」
「ちょっと!私どういうことになるか聞いてないんだけど!?」
「頑張ってくださいね」
白い光が視界を覆っていく。
「ちょっとおおおお!!!」
そしてまた私の意識は暗転した。
次に意識が戻ったのは粗末なベットの上だった。
あんの自称神…私をこんな所に送り込んで…許さないからな…
ー1ヶ月後ー
ここに来てから1ヶ月。この世界や場所について何となくわかってきた。
ここがリシエント帝国という国の辺境の田舎で、隣国レシェク公国との国境沿いに位置していること。
そして、私がいた世界とは全く違うこと。
この世界に来てから、私は日記をつけることにしている。
日本でつける習慣なんてなかったから最初のうちは何を書けばいいかわからなかった。だけど1週間も経てば慣れた。
そうそう、この世界はまだ現代レベルまで技術が進歩してないようで、携帯はおろかテレビもないみたいだ。
あってラジオで、しかもやるのは帝営のニュースやらだけ。正直つまらない。
もちろんそんなもの聞いてないから最近何があるかなんて知らない。
たまに大人が話しているのが耳に入る程度だ。
とにかくあの自称神、許さん。こんな退屈な世界に放り込まれたら、暇で死んでしまうわ!
すると、突然爆発音が聞こえた。
「急になに!?」
「ほら、嬢ちゃん!逃げろ!」
はい?
「何かあったんですか?」
「公国の奴らがこっちに攻め入ってきたんだ!さっさと逃げないと死ぬぞ!」
「…ってことは…戦争ぅ!?」
叫び声が聞こえる。何がが燃える音もする。
「いや、辞めて!いやぁぁっ!」
「……とりあえず逃げないと…生き残るのが先だ…」
私は一目散にその場から逃げた。
…逃げた先は、高台になっていて村が見渡せる。
村の国境側から、じわじわと火が広がり、断末魔も聞こえてくる。
30分ほどが経ち、逃げられた人は全員集まったようだが、この世界での両親を初めとした何人かが見当たらない。
「…許さない」
私は村の方へ歩き出していた。
あいつらは、公国の奴らは殺さないと…
「る、瑠璃ちゃん!ダメよそっちは!」
「ダメでも行かないと…私たちの村を焼いて、殺したあいつらは…殺さないと…」
「それでもダメ!あなたまで…」
私は激昴して叫んだ。
「…なら…なら!こんなことにされてるのを見なかったことにするんですか!?悔しくないんですか!?自分が生きてればそれでいいんですか!?そんなわけないですよね!?敵を取るべきです!たとえ死んでも、もう失うものなんてないじゃないですか!どこに恐怖があるんですか!?そこまでして生き残りたいですか!?」
ひとしきり叫ぶと、何人かが、
「そうだ!」「敵を取りに行くんだ!」「子供なのにいいこと言うじゃねえか!やってやろうぜ!」
と、私と一緒に行くと言い出した。
「…一緒に行ってくれるなら、着いてきてください…鏖殺の時間です」
凶暴な笑みを浮かべ、焼けていく村へ駆け出した。
道中の畑でスコップを見つけた私は拾い、武器とした。
そして、私の軍人としての運命が始まった。
村の中では、軍服を着た兵隊が生き残った人を探し回っていた。
こいつらは、いや、こいつらも皆殺しにする気だ。なら、先に私たちがしてやろう。
適当な男を見つけ、物陰から飛び出し足をスコップで思いっきり叩く。
「ぎゃぁぁっ!?」
叫んで倒れた男の延髄にスコップを振り下ろす。
「死ねぇっ!」
ぐしゃ、という音がして、身体から力が抜ける。
すると他の人の声が聞こえた。
「大丈夫か!?」
どうしてこっちに…あぁ、そうか、こいつが叫び声なんてあげるから心配したやつが助けに来たんだな…なら、お前も殺してやるよ!
サッと物陰に隠れ、助けに来た奴を待つ。
さっきの男を揺すり、声をかけている。
「おい、おい!…し、死んでる…?」
背後に気を配っていないうちに忍び寄り、同じように首に振り下ろす。
「ぐがぁ!」
面白い声を出しながら折り重なるように倒れた。
「どうした!」
また人が来る。
…これを使えば大量に殺せるんじゃないか?
同じ手を使い、同じことを繰り返し何人、いや何十人もの人を殺した。
そして、いつの間にか身の丈ほどの死体の山ができていた。
それを見て感じたのは、やってやった、という達成感だった。
すると、1人の人がきた。
公国の軍服では無い服装だ。
「…誰?」
「私はリシエント帝国三○八大隊部隊長、ダチス・フォン・ツベルン少佐だ。この死体の山はまさかお嬢ちゃんが…」
「私の服に着いた返り血を見ればわかりますよね?」
「…恐ろしい子供もいたものだ…これだけの人数を殺しておいて平然と…」
「こいつらは、私の両親を、村を壊したんです、当たり前の仕打ちだと思いますよ」
「…君は、良い士官になれる、良ければ士官学校に入学してみないか?私が責任をもって推薦しよう」
「褒められてるのかわかりませんけど、士官学校には入らせてもらいたいです。こいつらを、殺すために、私は兵士になります」
「…そうか。では、ついてきてくれたまえ…いや、その前に…村民たちを敵討ちのために戦わせたいう、瑠璃という名の少女は君のことかね?」
「…はい、私が瑠璃です」
「…本当にどこまで恐ろしい少女なのだ…人をあれだけ殺しておいて平然としている上、カリスマ性まで…本当に君は、良い士官になれる」
「褒められてるのか貶されてるのかわからないのですが」
「無論、褒めているぞ」
「…そうですか」
「では、改めて瑠璃君。ついてきてくれたまえ」
「…はい」
そう言うと、ダチスという名らしい少佐が歩き始めるのでついていく。
…私が、この戦争をおわらせる。村を壊したあいつらを、滅ぼしてやる。
ー続くー
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