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7 契約
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「強大すぎる……」
彼の言葉が信じられなくて、呆然として復唱する。そんな私の様子を察してか、オロヴァセーレが私の手から落ちた魔導書を拾い上げながら口を開いた。
「その魔導書を使うことができたのが何よりの証拠だ。ノヴァーリスの学園長でさえもこの魔力には耐えられまい。禁術に手を出して魔力を増幅でもしない限りはな」
「そういえば私のルームメイトは、この魔導書には何も書いてないって……」
「当然。魔力の少ない者が間違って使おうものなら命に関わる。……この魔導書を使える者こそが、俺の主として相応しいと考えた。」
魔導書の表紙を大事そうに撫でて埃を払いながら、私の方には一瞥もくれずにさらりと述べている。
俺の主。その言葉に体が強張った。
「じゃあ、……契約を結んでくれるの?」
彼を召喚したときとは正反対の態度で、おずおずと聞いた。
「そのために寮で自習をしているところをわざわざ呼び出されてやったんだ。……拒否権なんてあるはずもない。一体も使い魔がいないとしても、契約の手順くらいはわかるだろうな?」
「でも私は……」
「名を述べよ」
細めた双眸に覇気が宿り、室内の空気が張り詰める。
一瞬ひるむが、私が一つ溜息をついて呼吸を整えてから向かい合うと、彼の方も魔法陣の上で跪いた。
「……モナ。我が名はモナ・フェスタ―。貴方を使役するにたる者。我が魔力を以ってして身を縛り、心を縛り、貴方の内なる魔を高ぶらせ得る」
「我が名はオロヴァセーレ。貴殿を主と認め、服従することをここに誓い申し上げる」
彼が言い終わった途端、オロヴァセーレの魔力が私の体の中に流れ込んでくる。同時に床に描かれた魔法陣が塵となって消え始め、ゆっくりと彼が顔を上げた。
「……これで契約は結ばれた。お前が俺の主だ、モナ」
薄い唇の端を僅かに上げて笑みを浮かべた悪魔は、アルトゥールの表情にそっくりだった。
彼の言葉が信じられなくて、呆然として復唱する。そんな私の様子を察してか、オロヴァセーレが私の手から落ちた魔導書を拾い上げながら口を開いた。
「その魔導書を使うことができたのが何よりの証拠だ。ノヴァーリスの学園長でさえもこの魔力には耐えられまい。禁術に手を出して魔力を増幅でもしない限りはな」
「そういえば私のルームメイトは、この魔導書には何も書いてないって……」
「当然。魔力の少ない者が間違って使おうものなら命に関わる。……この魔導書を使える者こそが、俺の主として相応しいと考えた。」
魔導書の表紙を大事そうに撫でて埃を払いながら、私の方には一瞥もくれずにさらりと述べている。
俺の主。その言葉に体が強張った。
「じゃあ、……契約を結んでくれるの?」
彼を召喚したときとは正反対の態度で、おずおずと聞いた。
「そのために寮で自習をしているところをわざわざ呼び出されてやったんだ。……拒否権なんてあるはずもない。一体も使い魔がいないとしても、契約の手順くらいはわかるだろうな?」
「でも私は……」
「名を述べよ」
細めた双眸に覇気が宿り、室内の空気が張り詰める。
一瞬ひるむが、私が一つ溜息をついて呼吸を整えてから向かい合うと、彼の方も魔法陣の上で跪いた。
「……モナ。我が名はモナ・フェスタ―。貴方を使役するにたる者。我が魔力を以ってして身を縛り、心を縛り、貴方の内なる魔を高ぶらせ得る」
「我が名はオロヴァセーレ。貴殿を主と認め、服従することをここに誓い申し上げる」
彼が言い終わった途端、オロヴァセーレの魔力が私の体の中に流れ込んでくる。同時に床に描かれた魔法陣が塵となって消え始め、ゆっくりと彼が顔を上げた。
「……これで契約は結ばれた。お前が俺の主だ、モナ」
薄い唇の端を僅かに上げて笑みを浮かべた悪魔は、アルトゥールの表情にそっくりだった。
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