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「あんなの、か。そうだよな。あの魔術をできる方がおかしいよな」
自分に言い聞かせるように呟く瞬の丸まった背中を凛は優しくさする。なんとなく熱すぎるような温度を感じた。
「まあ、とにかく努力するのが一番なんじゃないかしら。先生もなにも習得できるなんて思っちゃいないわよ。それをするためにどれだけ努力したのかが、重要なのよ」
諭すように背中をさすり続ける。背骨が浮き出たその背中を見て、瞬はまた痩せたのかもしれないと心配になった。いくら感情を捨てろと言われても、捨てきれないのが事実。瞬もそれをわかっているようだった。実際、これでもかなり感情を捨てたのだ。兄や校長以外の人物には笑顔も見せない。心の内を悟られないよう常に指先まで神経を尖らせ会話をする。それもまた、校長手ずからの教育の賜物だろうと凛は考えている。
「凛、だいぶ落ち着いた。ありがとな」
ようやく瞬が顔をあげる。その動作に凛も微笑んだ。
「お前はもう寝ろ。寮の部屋、寝ぼけて間違えるなよ」
その冗談は睨んで黙らせ、凛は今度こそ瞬の元を離れた。
最近顔を合わせていなかった兄と話せた凜は、軽快な足取りだったが、彼女には着実に魔の手が忍び寄っていた。
自分に言い聞かせるように呟く瞬の丸まった背中を凛は優しくさする。なんとなく熱すぎるような温度を感じた。
「まあ、とにかく努力するのが一番なんじゃないかしら。先生もなにも習得できるなんて思っちゃいないわよ。それをするためにどれだけ努力したのかが、重要なのよ」
諭すように背中をさすり続ける。背骨が浮き出たその背中を見て、瞬はまた痩せたのかもしれないと心配になった。いくら感情を捨てろと言われても、捨てきれないのが事実。瞬もそれをわかっているようだった。実際、これでもかなり感情を捨てたのだ。兄や校長以外の人物には笑顔も見せない。心の内を悟られないよう常に指先まで神経を尖らせ会話をする。それもまた、校長手ずからの教育の賜物だろうと凛は考えている。
「凛、だいぶ落ち着いた。ありがとな」
ようやく瞬が顔をあげる。その動作に凛も微笑んだ。
「お前はもう寝ろ。寮の部屋、寝ぼけて間違えるなよ」
その冗談は睨んで黙らせ、凛は今度こそ瞬の元を離れた。
最近顔を合わせていなかった兄と話せた凜は、軽快な足取りだったが、彼女には着実に魔の手が忍び寄っていた。
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