時を裂く

彩葉 ちよ

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「校長!」
 広間にジョゼ校長が立ちすくんでいた。凜の姿を見ると、思わずというように破顔する。
「凛! ああ、よく来てくれました。さあ中へ」
「中?」
 見ると、広間の入り口に教師たちがひしめいていて、必死に術を連発している。
「もしかして、中に怨霊がいるんですか!?」
「怨霊ではありません。ブラッディストです。まだブラッディストになりたての状態ですが、やはり強い」
 やはり? と凛は首を傾げる。
「立花! 早く来い! お前がやれ!」
 緑樹の魔術を出しながら、入り口で副校長が凜に叫んだ。
「いや無理ですって! 実戦経験ないんですよ、私!」
「お前にしか無理だ! 自分自身でケジメをつけろ!」
 ケジメをつける? 凛はまた首を傾げる。なんのことを言っているのかわからなかった。
「行きなさい!」
 校長に背中を押される。
「うわっ」
 よろけて、嫌でも足が広間の中へ入る。
「……!」
 その広間の中は散乱し、豪華だったシャンデリアは床に落ちて、絨毯は破れていた。本能のように術を出す体制に入る。それを合図にしたように、ブラッディストを取り囲んでいた教師たちが一斉に端に避けた。すべては凛に任せるということか。
術を出していた教師たちの真ん中で暴れ、その術を食らっていたブラッディストの姿が露わになる。
「嘘……!」
 凛が思わず口をふさぐ。声にならないような声をあげ、目を見開いた。 







前に、凜が兄に向けてプレゼントしたブレスレットが、そのブラッディストの腕で光っていた。


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