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雨が降っている。
凛は、先ほど倒したばかりの怨霊を見下ろす。ぐずぐずと崩れていく怨霊の形から目線を外して、地面に置いた麻袋をだるそうに背負った。
「弱かったなあ……」
旅を始めて、凜が倒した怨霊はこれで5体目だった。今回は特に弱かった。ブラッディストにはまだ遭遇していないけれど、それも時間の問題だと、凛は思っている。
「うっわ、本格的に降ってきたかも」
雨脚は強くなりつつある。麻袋の中から適当な布を出して頭にかぶった凛に、雨は容赦なく降りかかる。
今は冬。最近は気候が穏やかで、野宿でも凍え死ぬことはなかったが、今日はそうはいかないだろう。凜は周囲を見渡すが、あたりに宿らしい宿は見当たらなかった。
「さむ……」
凛は両手で二の腕をさする。雨で体温が奪われつつあった。
しかたがないから、凛は崩れかけている怨霊にマッチで火をつける。
「うう……ぐぁ……」
怨霊が瀕死の声をあげる。
「あ、ごめん。さむくって……」
「さむいからって……俺を焚火代わりにするな……!」
抵抗する怨霊も、やがてその声は聞こえなくなった。悪いことしたかもとは思ったが、その火もすぐに雨で消えてしまった。
「あーあ、学校からテントもらってくればよかったなあ」
凛は空を仰いで呟く。確か、副校長はキャンプ好きだったはずだ。
でもそんなことはもうできなくて、しょうがないからまた凜は歩き始めた。
凛は、先ほど倒したばかりの怨霊を見下ろす。ぐずぐずと崩れていく怨霊の形から目線を外して、地面に置いた麻袋をだるそうに背負った。
「弱かったなあ……」
旅を始めて、凜が倒した怨霊はこれで5体目だった。今回は特に弱かった。ブラッディストにはまだ遭遇していないけれど、それも時間の問題だと、凛は思っている。
「うっわ、本格的に降ってきたかも」
雨脚は強くなりつつある。麻袋の中から適当な布を出して頭にかぶった凛に、雨は容赦なく降りかかる。
今は冬。最近は気候が穏やかで、野宿でも凍え死ぬことはなかったが、今日はそうはいかないだろう。凜は周囲を見渡すが、あたりに宿らしい宿は見当たらなかった。
「さむ……」
凛は両手で二の腕をさする。雨で体温が奪われつつあった。
しかたがないから、凛は崩れかけている怨霊にマッチで火をつける。
「うう……ぐぁ……」
怨霊が瀕死の声をあげる。
「あ、ごめん。さむくって……」
「さむいからって……俺を焚火代わりにするな……!」
抵抗する怨霊も、やがてその声は聞こえなくなった。悪いことしたかもとは思ったが、その火もすぐに雨で消えてしまった。
「あーあ、学校からテントもらってくればよかったなあ」
凛は空を仰いで呟く。確か、副校長はキャンプ好きだったはずだ。
でもそんなことはもうできなくて、しょうがないからまた凜は歩き始めた。
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