ささやかな祝福を

甘味料

文字の大きさ
2 / 6

2/少女は無邪気に笑った

しおりを挟む
ひとつ訂正をしなければいけない。

『君』は『僕以外』に属するために、『僕』ではない。

と、さっき言ったのだが、もし『君』が『僕』だった場合、『僕』は『君』になってしまうんだね。
まぁ、単純に考えれば、
『僕』にとって『君』は『君』であり『僕以外』だ。
『君』にとって『僕』は『僕以外』であり『君』だ。
ここで語るのは『僕』だから、『君』は『君』と呼ばせてもらおう。

ところで、僕の目の前には『空の小瓶』があるわけなんだが、君はこれがなぜあるのかわかるかい?

「あ、それ、探してたの。私のよ。」

白い指で『空の小瓶』を指差す。
突然驚いたな。誰だい?
白い袖のないワンピースを着ている。

「私よ。見えないの?」

いや、見えるさ。君にも見えてるだろう?
肩につくかつかないかの長さの黒髪をさらさらとゆらしている。

「私、これがないと困るの。」

それはあなたのものだったのか。
白く長い脚を音無く『空の小瓶』に歩み寄せる。

「どうして『空の小瓶』がここに存在しているか知ってる?」

それを知っているのか?
こちらを見上げている黒い瞳は白い肌を一層際立たせる。

「それはね、私がこの『空の小瓶』を必要としているからよ。」

赤色の唇がキュっと横に広がる。
少女は無邪気に笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

処理中です...