世界を変える女

momo

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第一章

第1話 転移の恩恵

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二〇二六年、東京とうきょう

高層ビルが立ち並ぶ金融街の一角に、東都証券とうとしょうけん本社ビルはあった。

その三十階。

トレーディングフロアの片隅で、一人の女性がモニターを睨んでいた。

望月梓もちづき あずさ、二十五歳。

大手証券会社に勤める若きアナリストである。

数字に強く、分析能力も高い。

上司からの評価も悪くない。

だが彼女には、もう一つの顔があった。

――重度の歴史オタク。

特に戦国時代。

織田信長おだ のぶなが
豊臣秀吉とよとみ ひでよし
徳川家康とくがわ いえやす

三英傑の研究は、もはや趣味を通り越していた。

休日は古文書。

夜は歴史論文。

旅行先は城跡。

同僚からは半ば呆れられている。

その日の昼休み。

会社の屋上で弁当を食べながら、あずさはぼんやりと呟いた。

「もし私が戦国時代に行けたらさ」

隣にいた同期が笑う。

「また歴史の話?」

「だってさ」

あずさは箸を動かしながら言う。

「天下統一って武力だけじゃないでしょ」

「経済よ」

「金融、物流、信用取引」

「それを握ったら、国家なんて簡単に動くと思う」

同期は笑った。

「はいはい戦国経済論ね」

あずさも笑った。

その時は。

本当に冗談のつもりだった。

――その夜までは。

仕事帰り。

神田かんだの古書店。

あずさの行きつけの店だ。

薄暗い店内。

紙の匂い。

奥から店主が一冊の本を持ってきた。

「珍しいものが入った」

古い和綴じの本。

題名は。

**『戦国経済録』**

妙に気になる。

あずさは本を開いた。

その瞬間。

光。

強烈な白い光。

視界が完全に塗りつぶされる。

「え……?」

意識が落ちた。

――――――――

目を開ける。

青空。

鳥の鳴き声。

湿った土の匂い。

「……は?」

あずさはゆっくり起き上がった。

周囲は山道。

舗装道路はない。

電柱もない。

遠くには茅葺き屋根の村が見える。

風景はまるで――

時代劇。

「え……?」

混乱していると。

頭の中に声が響いた。

【システム起動】

「え?」

半透明の画面が視界に浮かぶ。

ゲームのようなインターフェース。

【自律型AIスキル起動】

Irisアイリス

「AI……?」

【望月梓様に三つの恩恵が付与されました】

画面が切り替わる。

---

付与スキル

・自律型AI Irisアイリス
・空間魔法 無限収納アイテムボックス
・未来通販 ChronoShopクロノショップ

---

「……は?」

あずさは固まった。

【ChronoShop説明】

【2026年の商品を購入可能】

【ただし支払いは現地通貨または物品売却利益】

「え?」

【現地の金銭、金銀、物品を売却し残高へ変換】

【その残高を用いて購入可能】

つまり。

「この世界で稼がないと使えないってこと?」

【その通りです】

あずさは周囲を見回した。

完全に田舎。

現代の物は何もない。

つまり。

「……一文無し」

【所持金】

0

「厳しいなぁ」

しかし。

あずさはすぐに冷静になった。

証券会社勤務。

つまり――

**金を生む思考は得意。**

その時。

道の向こうから農民たちが歩いてきた。

着物。

草履。

鍬。

完全に戦国農民。

一人が言った。

「おい、女が倒れてるぞ」

「旅人か?」

あずさは聞いた。

「すみません……ここはどこですか?」

農民は答えた。

「ここは尾張国おわりのくにだ」

尾張。

尾張。

尾張。

あずさの頭が高速回転する。

尾張。

つまり。

織田信長おだ のぶながの国。

「今の領主は?」

農民は不思議そうに言った。

「決まってるだろ」

織田信長おだ のぶなが様よ」

確定。

戦国時代。

あずさの鼓動が早くなる。

普通なら絶望する。

だが彼女は違った。

むしろ。

**興奮していた。**

「戦国時代……」

呟く。

「本物だ……」

アイリスIrisが言う。

【提案】

【経済覇権ルート】

画面にデータが出る。

米収穫量。
鉄生産。
貨幣流通。
商人勢力。

【戦国覇権の鍵】

【経済】

あずさは笑った。

証券会社。

金融。

そして歴史オタク。

「なるほど」

「つまり」

「この時代の経済を握ればいい」

あずさは言う。

「武力じゃない」

「資本で天下を取る」

アイリスIrisが答える。

【計画】

【国家企業化プロジェクト】

あずさは空を見上げた。

戦国の空。

青い。

澄んでいる。

その下で。

彼女は宣言した。

「まず資金」

「次に産業」

「最後に軍事」

この世界には。

銀行も。

証券市場も。

株式会社もない。

ならば。

「作ればいい」

あずさは笑った。

「戦国日本に」

「株式会社国家を作る」

そして。

いずれ。

織田信長おだ のぶなが
豊臣秀吉とよとみ ひでよし
徳川家康とくがわ いえやす

三英傑さえ巻き込み。

日本は。

**世界最強国家になる。**

まだ誰も知らない。

この山道に立つ一人の女性が。

やがて。

歴史を塗り替える存在になることを。

望月梓もちづき あずさ

戦国転移。

そして。

**経済による天下統一が始まる。**

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