世界を変える女

momo

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第一章

第2話 戦国資本

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尾張国おわりのくにの小さな村。

山と田畑に囲まれたその場所で、望月梓もちづき あずさは一人、ゆっくりと歩いていた。

空は高く澄んでいる。
遠くでは牛の鳴き声が聞こえ、田では農民たちが腰を曲げて作業をしている。

現代の東京とうきょうとはまるで違う光景だ。

「……本当に戦国時代なんだ」

思わず呟く。

だがあずさの頭の中は、すでに現状分析でいっぱいだった。

証券会社で鍛えられた思考回路が自然と働いている。

「問題は資金」

未来の商品を買えるスキル、ChronoShopクロノショップ

だが。

【現在残高】

0円

「完全な一文無し」

あずさは苦笑した。

アイリスIris

【はい】

「この時代の貨幣は?」

画面が浮かび上がる。

---

主流貨幣
永楽銭えいらくせん

銅銭
戦国時代の主要通貨

---

「なるほど」

つまり。

**現地通貨を稼ぐか、物品を売却するか。**

そのどちらかでしか資金は得られない。

【補足】

【物品売却は重量・価値で算定】

「つまり、この世界の物でも売れる」

あずさは頷いた。

証券会社での経験から言っても、最初の資本形成は極めて重要だ。

「まずは現地資源を使う」

そう結論付けた。

その時。

近くの田んぼから声が聞こえた。

「おい!」

「水路が詰まっとるぞ!」

振り向くと、数人の農民が慌ただしく動いている。

彼らは水田の管理に苦労しているようだった。

あずさは近づいた。

田んぼを見る。

そしてすぐに理解した。

「……これは」

水の流れが悪い。

排水も雑。

土の状態も良くない。

さらに苗の間隔が狭すぎる。

つまり。

**栽培効率が非常に悪い。**

あずさは声をかけた。

「すみません」

農民たちが振り向く。

「旅人か?」

年配の農民が言った。

「少し水を頂けますか?」

「おう」

竹の筒に水を入れて渡してくれる。

あずさは礼を言った。

「ありがとうございます」

水を飲みながら田んぼを観察する。

そして言った。

「この田んぼ」

「収穫少なくないですか?」

農民たちは顔を見合わせた。

老人がため息をつく。

「仕方あるまい」

「土地が痩せておる」

別の農民も言う。

「米も年々減っておる」

あずさは確信した。

**完全に肥料不足。**

戦国時代の農業では、肥料は主に草や糞などだ。

栄養が足りない。

あずさは言った。

「もし」

「収穫を倍にする方法があると言ったら?」

農民たちは一斉に笑った。

「そんな話あるか!」

「神でも呼ぶのか!」

だがあずさは真顔だった。

「あります」

空気が少し変わる。

老人がじっと彼女を見る。

「……どういう意味だ」

あずさは田んぼを指差した。

「肥料と植え方を変えればいい」

「水の流れも直す」

「それだけで収穫は倍以上になります」

農民たちは半信半疑だった。

当然だ。

突然現れた女がそんなことを言っているのだから。

老人は腕を組む。

「もし本当なら……」

「米の三割やる」

あずさは言った。

「契約成立ですね」

農民たちは驚いた。

「本気か?」

あずさは頷いた。

そして静かに呟く。

アイテムボックス無限収納

光が走る。

彼女の手に袋が現れた。

農民たちが息を呑む。

「な……!」

「術だ!」

袋の中身。

それは。

**発酵肥料。**

もちろん購入したものではない。

ChronoShopにある。

**農業サンプル資材。**

無料の試供品。

未来の農業企業が宣伝用に配布しているデータ商品。

それを取り出したのだ。

あずさは説明した。

「これを田んぼに混ぜてください」

「それと苗の間隔を広げる」

「水路も直す」

農民たちは戸惑った。

だが。

試す価値はある。

老人は言った。

「やってみよう」

――それから二ヶ月。

村は騒然としていた。

田んぼ一面。

青々とした稲。

穂は重く垂れ下がっている。

農民が叫ぶ。

「すごい……!」

「こんな実りは見たことがない!」

老人も震えていた。

「倍どころではない」

「三倍はある……」

収穫の日。

大量の米俵が積み上がる。

村人たちはあずさを神のように見ていた。

「約束だ」

老人が言う。

「米の三割、差し出す」

米俵が彼女の前に並ぶ。

あずさは静かに呟く。

アイテムボックス無限収納

米俵が光と共に消える。

村人たちはどよめいた。

その瞬間。

視界に画面が現れる。

---

物品売却

白米
重量:260kg

売却価格
18,000円

残高
18,000円

---

あずさは小さく笑った。

「資本、完成」

戦国時代での最初の資金。

**一万八千円。**

だがこれは始まりにすぎない。

彼女の頭の中では、すでに次の計画が動いていた。

農業改革。

物流整備。

商人資本。

金融制度。

そして――軍需産業。

あずさは空を見上げた。

戦国の空。

その下で彼女は静かに言う。

「まずは商人」

「市場を押さえる」

やがて。

織田信長おだ のぶなが
豊臣秀吉とよとみ ひでよし
徳川家康とくがわ いえやす

三英傑すら巻き込み。

日本は変わる。

戦国日本に。

**資本主義国家が誕生する。**

その第一歩が。

今、踏み出された。

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