世界を変える女

momo

文字の大きさ
3 / 26
第一章

第3話 清洲の商人

しおりを挟む
尾張国おわりのくにの朝。

村を出た望月梓もちづき あずさは、街道をゆっくりと歩いていた。

行き先はただ一つ。

清洲城きよすじょう

現在の尾張国おわりのくにの中心地であり、織田信長おだ のぶながが拠点としている城下町である。

そしてもう一つ。

「商人が集まる場所」

あずさは小さく笑った。

彼女の頭の中ではすでに次の計画が組み上がっていた。

資本はある。

【所持金】

18,000円

だが、それだけでは足りない。

未来の商品を本格的に購入するには、桁違いの資金が必要になる。

「資本を増やす」

「そのためには――市場」

戦国時代でも、商人は重要な存在だった。

特に城下町。

そこには米、塩、鉄、布、様々な物資が集まる。

つまり。

**経済の中心。**

しばらく歩くと、人の流れが増えてきた。

荷を担ぐ男。

牛を引く農民。

旅人。

やがて、城下町の入り口が見えてくる。

木柵に囲まれた町。

門の前では足軽たちが見張りをしている。

「通れ」

軽く調べられただけで、あずさは町に入ることができた。

その瞬間。

彼女は目を見開いた。

「……すごい」

城下町。

市場。

露店が並び、人が溢れている。

米屋。

魚屋。

鍛冶屋。

布商人。

まるで巨大なマーケットだ。

あずさは冷静に観察する。

商品の価格。

取引の様子。

商人たちの交渉。

数分も見れば理解できた。

「非効率」

価格は不安定。

品質管理も甘い。

そして何より。

**信用取引がない。**

現代なら当たり前の制度。

だがこの時代では、ほとんど存在しない。

つまり。

「ビジネスチャンス」

あずさは市場を歩く。

すると、米屋の前で言い争いが起きていた。

「そんな値段で売れるか!」

「去年より米が少ないんだ!」

「ふざけるな!」

米の値段を巡る争い。

典型的な供給不足。

あずさは近づいた。

商人の一人が彼女を見る。

「なんだ女」

「客か?」

あずさは微笑んだ。

「米を売りたいんです」

商人は鼻で笑った。

「農民か?」

「違います」

「でも大量にあります」

商人は興味を持った。

「どれくらいだ」

あずさは言った。

「二百キロくらい」

周囲の商人がざわついた。

「そんな量どこにある」

あずさは静かに呟く。

アイテムボックス無限収納

光。

次の瞬間。

米俵が地面に並んだ。

十俵。

二十俵。

次々と出現する。

市場が凍り付いた。

「な……」

「術か!?」

「陰陽師か!?」

商人たちは完全に驚いていた。

あずさは冷静だった。

「買いますか?」

商人の一人が慌てて近づく。

「いくらだ!」

あずさは少し考えた。

市場価格はすでに見ている。

「永楽銭三百枚」

商人は驚く。

「安い!」

周囲の商人が一斉に動いた。

「俺が買う!」

「いや俺だ!」

「全部買う!」

完全な競争状態。

あずさは言った。

「落ち着いてください」

「順番に売ります」

その日。

彼女は市場で米を売り切った。

結果。

永楽銭
六百枚。

あずさは静かに計算する。

【売却】



【残高換算】

38,000円

「倍になった」

資金が一気に増える。

だがその時。

後ろから声がした。

「面白い女だ」

振り向く。

そこに立っていたのは、一人の男。

立派な着物。

鋭い目。

商人というより――

**武士。**

男は言った。

「その術」

「どこで覚えた」

あずさは少し笑う。

「秘密です」

男はさらに興味を持ったようだった。

「名を聞こう」

望月梓もちづき あずさです」

男は頷く。

「私は木下藤吉郎きのした とうきちろう

その名前。

あずさの脳が一瞬止まる。

木下藤吉郎。

後の。

**豊臣秀吉とよとみ ひでよし**

戦国最強の出世男。

まだ若い。

だが目は鋭い。

完全に歴史の人物だ。

藤吉郎とうきちろうは笑った。

「おぬし」

「殿に会ってみぬか」

「殿?」

藤吉郎とうきちろうは言う。

織田信長おだ のぶなが様よ」

空気が変わる。

あずさの鼓動が早くなる。

ついに。

歴史の中心人物。

戦国最大の革命家。

織田信長おだ のぶなが

藤吉郎とうきちろうは続けた。

「殿は変わり者でな」

「面白い人間が好きだ」

そして笑う。

「おぬしは間違いなく気に入られる」

あずさは空を見上げた。

戦国の空。

そして小さく呟く。

「歴史が動く」

彼女の目的。

それは。

天下統一。

武力ではない。

**経済による覇権。**

そして今。

運命の扉が開こうとしていた。

織田信長おだ のぶながとの邂逅が。

もうすぐそこまで迫っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...