『リスタート1980 ― 四十歳OL、昭和で未来を書き換える ―』

momo

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第15話 崩れ始める泡

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 1988年、冬。

 昭和63年。

 株価はなおも高値圏を維持しているが、私は“天井の匂い”を感じていた。

 証券会社のフロアは相変わらず喧騒に包まれている。

「まだ上がる! 史上最高値だぞ!」

 歓声に近い声。

 だが私は、モニターの数字よりも“熱量”を見ていた。

 

 過剰な自信。

 根拠なき楽観。

 

 ――頂点は近い。

 

 

 昼休み、屋上。

 冷たい空気の中で鑑定スキルを発動する。

【バブル頂点到達予測:1年以内】

 

 胸が締めつけられる。

 

 

 その夜、セーフティ・シード本社。

 社員は十名に増えていた。

「来年以降、景気が変わる可能性があります」

 私は会議で告げる。

「備蓄需要はむしろ増えます。企業は不安になるからです」

 

 全員が真剣な顔で頷く。

 もう私は一人ではない。

 

 

 投資の最終調整に入る。

 過熱銘柄はさらに縮小。

 不動産の含み益は半分以上を確定。

 

 中核は維持。

 トヨタ自動車。

 NTT。

 ソニー。

 

 そして未来産業の種。

 東京エレクトロン。

 

 

 田辺との会話。

「お前の言う通り、一部現金化した」

「正解です」

「だがな……本当に終わるのか?」

「終わります」

 

 静かな断言。

 

 

 1989年、春。

 新元号、平成。

 空気が一変する。

 

 株価は頂点へ。

 そして、揺らぎ始める。

 

 

 最初は小さな下落。

 誰も気にしない。

 

 だが私は知っている。

 これは序章。

 

 

 鑑定スキル。

【崩壊進行:開始】

 

 

 数か月後。

 下落は止まらない。

 証券会社の空気が変わる。

 

「おかしい……」

「押し目だろ?」

 否定と不安が入り混じる。

 

 

 だが暴落は、未来の記憶ほど急激ではない。

 じわじわと、確実に。

 

 

 夜、夢を見る。

 1991年。

 倒産企業の数が、未来より少ない。

 失業率は上がるが、爆発的ではない。

 

「衝撃は抑えられている」

 

 だが別の影。

 景気低迷が長引く兆候。

 

 

 私は目を覚ます。

「なら、次は回復を早める」

 

 

 セーフティ・シードは新事業を立ち上げる。

 “起業支援基金”

 不況期に安くなるオフィスを活用し、技術者を集める。

 

 

 社員が問う。

「今、拡大するんですか?」

「今だからです」

 

 

 街では、不安が広がり始めている。

 高級店の客足が鈍る。

 土地の取引が止まる。

 

 

 私は倉庫に立つ。

 静かな空間。

 積み上がった段ボール。

 

「守るだけじゃない。再生する」

 

 

 アイテムボックスを開く。

 中の耐震補助金具。

 防火布。

 通信石。

 

 まだ出せない。

 だが、未来は近づいている。

 

 

 鑑定スキル。

【未来改変進行度:79%】

 

 八割目前。

 

 

 平成元年の夜空。

 バブルは崩れ始めた。

 

 だが今回は、違う。

 狂乱ではなく、制御された崩落。

 

 

 私は静かに誓う。

「この不況を、未来より短くする」

 

 泡は弾けた。

 だが、その先に何を築くかは、まだ変えられる。
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