『愚者の王、未来の学園で学力ゼロでも戦闘最強』

SKです

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第1話 : 愚者の王、未来へ

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 若々しい青年、愚者の王、アノセウスは今日も。シワが深い老人、魔法の王と戦っていた。

 その戦いは、どこかおかしかった。アノセウスだけが本気で戦っていた。しかし、誰が見ても一方的な戦いだった。

  戦いと呼ぶにはあまりにも愚かで一方的すぎた。

 魔法の王は魔法の力で、アノセウスの肉体を容易に引き裂き、破壊していった。だが、アノセウスはその痛みさえも無視し、ひたすらに立ち上がり続ける。

 魔法の王の魔法が、火が、水が、風が、土が、雷が愚者の王の体を破壊する。

 その力は計り知れず、だがアノセウスの体はすぐに再生し立ち向かい続けた。肉体の限界すらも感じさせぬほどに、彼は戦いの中に身を投じていた。

 「……もうつかれた」
 
 魔法の王はアノセウスの体を粉々に爆破した後心からの本音を漏らした

  アノセウスの体はすぐに再生されていた。
 その驚異的な再生能力により、魔法の王の魔法がどれだけ彼を傷つけても、アノセウスは何度でも立ち上がった。

 「死ねえええ!!!!」
 
 その言葉を吐くたびに、アノセウスは何度も魔法の王を攻撃し続けた。そして魔法の王の防御魔法を超えることは無い。最近は魔法の王が無意味な攻防に飽き、疲れ果てていくのが見て取れた。

  何千、何万、何億回と同じセリフを吐くアノセウスに、魔法の王は飽き飽きしていた。

 その顔には、どこか諦めの色が浮かび始めていた。

 (こんなヤツに殺されるのか…もういいか…俺は十分生き─)
 
 魔法の王の心は、もう死を受け入れつつあった。だが、何かしらの最後の力が残っていた。

  アノセウスの拳が魔法の王に届いた。

 その一撃が、魔法の王の顔面に強烈に打ち込まれ、彼の体を揺さぶった。もう何度目か分からない殴打が続き、魔法の王は崩れ落ちる寸前まで叩きつけられた。

  体中ズタボロ、魔法の王は死ぬ寸前まで殴られる。

 だが、その痛みが、どうでもよく感じられるほど精神が疲れてしまっていた。

  (すごいな、こんなに痛いのにもうどうでもいい…けど………お前に俺の子供たちは、孫たちは殺させない!)
 
 魔法の王の消えかけた心に再び灯火が宿る。家族を守りたかった。そして、アノセウスに、子供たちを殺させないという強い意志がこもっていた。

 魔法の王は薄れゆく精神を振り絞り、賢者の王に言われた通りの台詞を読み上げた。

「お前も消えろ……はるか未来へ」

  アノセウスが馬乗りになり顔面に無限に拳を打ち続ける中、魔法の王は死んだ。

 その死を確認するまでがアノセウスにとっての戦い。死後もアノセウスはすぐにその場から離れることなく魔法の王の死体を殴り続けた。

  魔法が発動した。巨大な魔方陣が現れる。

 その魔方陣が次第に光を放ち、アノセウスの周囲を包み込んでいった。

  「死ね!死ね!死ね!……なぁ?死んだか?……死んでるな」
 
 その言葉を最後にアノセウスは光に包まれた。

   ◇◆◇◆◇◆◇

  アノセウスが次に目覚めると、そこは、アノセウスが生きていた時代のはるか先の未来の手入れがされた大きな貴族の庭園だった。

 その場所には、どこか懐かしさを感じる雰囲気が漂っていた。だが、アノセウスの記憶は混乱していた。

  「どこだ?ここ…そうだ、家に帰らないと」

 アノセウスは呟き、周囲を見回す。しかし、家の記憶はもう曖昧で、何もかもが変わり果てているように感じられた。

 うちに帰ろうとすると…
 突然、背後から声がかかった。

  「お久しぶりでございます。1億年ぶりでございますね」

 振り返ると、空から一人の美しい少女が降り立ってきた。

  「……デウス・エクスマキナだっけ?たしかアルキメデスさんの娘さんだよね?」

 アノセウスは少女の顔を見て、記憶を辿りながら言葉を発した。

  アルキメデス、愚者の王アノセウスと対をなす王『賢者の王』だ。

 その名前がアノセウスの脳裏に浮かぶ。

「はい、覚えていてくださり光栄です」
 少女は微笑みながら答える。

  「…『コウエイ』ってなんだ?」

 アノセウスの問いかけに、少女は少し困った表情を浮かべる。

  「この場合は、『ありがとう』という意味になります。……アノセウス様、父との約束は覚えていらっしゃいますか?」

 その言葉に、アノセウスはふと思い出す。

  アノセウスは魔法の王と戦うためにアルキメデスの力を借りた。その際、条件を出されたのだ、その条件は──

  「ああ、たしか『テイコクガクエン』の『ハカセゴウ』を取ればいいんだろ?」

 アノセウスはその条件をよく覚えていたが、具体的にどうすればよいのか理解していなかった。

  帝国学園も博士号もアノセウスはよくわかっていない。

 だが、アルキメデスの娘の言葉を信じるしかなかった。

  「物理てk──掴み取る訳ではないですよ」

 エクスマキナは言葉を選びながら確認を取った。

  「らしいな、よくわかんね~けど、教えてくれるんだろ?」

 アノセウスは軽い口調で答える。

 (約束は守んなきゃな……約束を果たしてさっさと家に帰ろう)

  「ええ、それでは一週間後、帝国学園に入学していただきます」

 その言葉が、アノセウスに新たな冒険の始まりを告げることになる。

  こうしてアノセウスは帝国学園に入学することになった。
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