老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

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第485話 双子、王都へ到着する

 思いがけずビーククロウの雛を拾った一家はゆっくりと王都へ進んでいた。
 
「すぴー……」
「あー♪」
「あうー♪」
「うふふ、可愛いわね♪」
「かあいいねー♪」
「かあいい♪」

 そんな中、リヒトとライルは落ちてきたビーククロウの雛に興味津々で、ダルの頭で寝ている雛をじっと見て可愛いと口にしていた。

「ぴよー?」
「ぴー?」
「ぴよぴー」
『ひよこ達と仲良くなれたりするのだろうか……?』
『会わせてみたいわね。ソオン君たちは優しいからいじめたりしないでしょうし』

 雛の寝息が聞こえてきて、トコト達が荷台の縁に乗って前を歩くダルに目を向ける。ソルがその様子を見て雛同士で仲良くやれるのだろうかと疑問を言う。
 エレノアはひよこ達が優しいので合わせても良さそうだと笑っていた。

「すぴー……」
「しかし良く寝る子じゃのう」
「あう♪ ……ふあ」

 普通に話をしているので声は聞こえているはずだが、雛はまったく起きる気配が無い。ディランが呆れていると、ライルがもらいあくびをしていた。

「ライル、荷台で寝る?」
「あうー……」
「ねんね」
「やー……」
 
 トワイトがルミナスの上で抱き着くように寝そべっているライルに荷台へ行くか尋ねる。リヒトも寝るか首を傾げるも、ライルは嫌だと頭を振っていた。

「すぴー……」
「あうー……」
「おかあさん、らーるといっしょにするの」
「うふふ、分かったわ」
「わん」

 結局、ライルは寝入ってしまった。
 リヒトはそれを見て、雛とライルを一緒に寝かせてあげようと提案した。
 トワイトはすぐにライルを回収した。

「ではこれを使うのじゃ」
「ありがとうお父さん」
『お布団が鞄から……』

 そこでディランが鞄から子供用の布団を取り出して荷台に敷いた。
 エレノアが驚きを見せる。

「あうー……すぴー……」
「すぴー……」
「みんな、起こさないようにね」
「こけ」
「ぴよー♪」

 ライルの枕元に雛を置いてあげると、早速ひよこ達が集まって喜びの声を上げていた。

「こけー……」
『ジェニファー? 空を見上げてどうしたんだい』
「恐らくさっきの親が心配しているのではと思っているのじゃ。ジェニファーは雌鶏じゃし、ひよこ達を育てているから気持ちがわかるのかもしれん」
『なるほど。帰ってきますかね?』
「落ち着けば探すはずですよ。ビーククロウは魔物で頭もいいみたいですものね」
『元のところで待っていた方が良かったですかね……』
「まあ、いつになるか分からんし帰りに探してみてもいいじゃろ」
「アー」
「ぷー」

 そんな話をしながらさらに進むこと一時間ほどでディラン達一家は王都へと到着した。

「そこの馬……いや狼車……? 止まれ!」
「やはり驚かせてしまったか。裏のデランザのところへ行っておこう」
「おや、ディラン殿! この狼たちは家族ですか?」
「そうなんです。この子達の両親なんですよ」
「わほぉん」
「あい」

 門まで行くと門番がロイシュ達を見て慌ててこちらへ来ていた。
 ディランが片手を上げて挨拶を交わすと、なんだディランさんかという顔で笑って頭を下げた。

「アッシュウルフの親でしたか。あなた方なら問題ないと思いますけど、念のためあちらへ行っていただいていいですか?」
「その間に陛下へ報告してきます。結構大きな個体ですし、いきなり町へは入らない方がいいと思います」
「承知したぞい。ロイシュ、セレネこっちじゃ」
『ガウ』

 門番の言うこともももっともだと一家はデランザの発着場へ行くことにした。
 狼車を回して裏へ回ると、騎士たちが挨拶をしてくれる。

「やあディランさん! 色々あったみたいですが無事でなによりです。デランザは配達の仕事で今は不在です」
「奴はおらんのか。まあ、そのうち戻ってくるじゃろ」
「フレイヤさんは?」
「エメリさんと一緒に行ってますよ。いやあ、大きな狼ですね。また増えましたか。強そうだ」
『ダル君たちの親ですから大人しいですよ』
『わおん♪』

 騎士が敬礼をしながら状況の説明をしてくれた。フレイヤとエメリも同行しているらしく、日常に戻った感じがあった。
 ロイシュとセレネを見た騎士が大きくて強そうだと頷く。
 エレノアがダル達の両親だと告げると、騎士たちはセレネの顔を見た後、ダルを見て納得していた。

「そうなんだ。ダル君はお母さん似だな」
「あい♪」
「わほぉん♪」
「そういえばライル君は……ああ、寝ているんですね」
「しーなの」
「そうだね、ではゆっくりしていってください」

 騎士がダルを撫でた後、いつも一緒のライルが居ないと探し、荷台で発見していた。リヒトが静かにと唇に指を当てて騎士へ言う。
 彼は肩を竦めてウインクをするとその場を去っていった。

「みんな優しいわね」
「うむ。おや?」
「くあー……くあ?」

 そこで嘴を大きく開けたビーククロウの雛が目を覚ました。寝ぼけ眼で周囲を見渡していた。

「ぴよっ」
「くあ……!? ぴー!」
「ぴ、ぴよ!?」

 そんな雛にトコトが羽を上げて挨拶をすると、雛はカっと目を見開いて叫んだ。
 どうやらここが自分の巣ではないとすぐに気づいたらしい。
 けたたましく叫ぶためレイタとソオンが驚いて後ずさる。

「あーい。しー」
「ぴあー!」
「ふあ……」
『ライルが起きてしまいそうだな。どうしようか』
「こけ」
「あら、ジェニファー」

 泣き止まない雛にどうするかソルが考える。するとジェニファーがてくてくとやってきて雛の前に立った。

「こけー」
「ぴあー! ……ぴあ?」
「こけ」
「ぴあ……」
「なんだか通じたみたいじゃな」
『良かった……のかしら?』
「今はこれでええじゃろう」
「あー……」

 ジェニファーが毛づくろいをしてあげると大人しくなった。
 急に親の姿が見えなくて不安になったのだろう。
 あまりの鳴きっぷりにリヒトが少し不安そうにするのであった。
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