老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

文字の大きさ
7 / 413

第7話 竜、楽しく生活する

しおりを挟む
「だー♪」
「ぴよっ!」
「ふむ、今日もリヒトは元気そうじゃわい」

 赤ん坊を拾ってから数日が過ぎた。
 確認したところトワイトが言った通り男の子だった。そこで彼女は輝く未来を与えたいとして、光を意味する言葉である『リヒト』と命名した。
 特に病気だということもなく、ディランが作ったベッドの上で元気にミルクを飲んで笑っている。
 夫婦が覗き込めるように少し高い位置に作っているのだが、ひよこ達から抗議があり、昇降用の階段と、帰る時に使える滑り台を増設した。
 そうしたところ、必ず数時間おきに一羽がやってきて様子を見にくるようになった。

「使命感でもあるのかのう」
「どうしたんですか?」
「いや、ひよこ達がのう。まあ、リヒトが楽しそうじゃからいいか」
「?」

 洗濯物を干し終えたトワイトが戻ってきてディランの独り言に反応していた。
 ディランはなにか言いたそうだったが話を打ち切ったのでトワイトは首を傾げる。
 まあいいかと彼女はテーブルでお茶を飲んでいた彼の正面に座る。

「おしめも嫌がらないし、ミルクも良く飲むから元気ですね。トコト達が構ってくれるから疲れて寝るし、夜泣きも少ないわ」
「確かに。トーニャの時は寝不足だった覚えがあるわい。もう百五十年も前か、懐かしいのう」

 彼等には息子と娘が居て、下の子である娘の時は苦労したなとディランは目を細めて茶をすする。

「この子は人間だから百年くらいしか生きられないですし、目いっぱい愛してあげましょうね」
「もちろんじゃ。ワシらが居れば魔物の危険もないしの」

 トワイトが少しだけ寂しそうに言い、ディランは優しく微笑んで肯定した。
 人と竜では感覚が違い、もらってきたニワトリやひよこ達はそれこそもっと早くに亡くなる。
 それが分かっているからこそ、二人は命を大事にするのだった。捨て子をあっさりと育てると決めたのはこういうところも関係していた。

「そういえばあやつらに引っ越したことを伝えておらんかったな」
「あの子達ももう立派なドラゴンですし、大丈夫でしょう。里のドラゴンが説明してくれますよ。さ、そろそろお散歩に行きますよリヒト」
「一日の楽しみじゃからの」
「あー♪」
「ぴよぴよ」

 トワイトもお茶を飲み干すと立ち上がってリヒトを抱っこする。散歩だと気づいたひよこのトコトも滑り台でスイーっと床に降りて足元に来る。

「こけ」
「ぴよ」
「ぴ」

 残りのペット達もやってきて散歩の準備が整うと、みんなで外へ行き散歩が始まる。
 ルートは適当で川に行ってみたり、木の実を取るついでに山奥へ行くこともある。

「そういえばまだ村には行っていませんね。今度、採った果物をお土産にして挨拶に行きましょうか」
「リヒトを見せたいんじゃろ……」
「ええ♪ お隣さんだし、みなさんに挨拶をしないとねリヒト」
「だーうー」

 トワイトがリヒトの手を取ってディランへ振る。そこで彼は顎に手を当てて口を開いた。

「とりあえずワシらは父ちゃんと母ちゃんでええんじゃろか」
「え、そこですかあなた? どっちでもいいと思いますけど……両親の方が将来この子が勘違いしなくていいかもしれませんね」
「じゃな。ワシにも抱っこさせてくれ」
「あうー!」
「あたた、髭を引っ張るんじゃない」

 顔を近づけると元気よくディランのあご髭を引っ張るリヒト。それを見てトワイトが朗らかに笑っていた。

「こけ!」
「ぴよぴよ!」
「あーうー」
「なんじゃい。遊びたいのか?」
「そうみたいですね。少しその辺で休憩しましょうよ」

 着いてきたペット達が自分たちも混ぜろと抗議の声を上げていた。トワイトがその辺にあった石を椅子にして休もうと提案し適当に腰かけた。

「ぴよっ」
「あー♪」
「こけー」
「だうー」

 ディランに抱っこされているリヒトにジェニファーやひよこのレイタが服や手をくちばしで軽く突いていた。
 それが楽しいのかリヒトは終始笑顔だった。

「あう……」
「む?」
「ぴよ?」

 しばらく遊ばせていると、リヒトが不機嫌そうな顔になる。訝しんだディランとひよこのソオンをよそに、トワイトがリヒトを抱き上げてあまり汚れていない岩の上に寝かせた。

「おむつか」
「ええ。この子、泣かないけど顔に出るのよね」
「なるほどのう。覚えておこう」

 そんなやり取りをしながらトワイトが持っていたカバンからおむつを取り出し、おしりを拭いてから取り替えてやった。
 その間はリヒトの顔の横で三羽がキレイに並んで見守っており、そっちに気を取られているせいか大人しかった。

「はい、終わり。きれいになったわねえ」
「きゃっきゃ♪」
「ぴーよ♪」

 おむつを取り替えられたリヒトは再び笑顔でひよこのトコトを撫でていた。
 
「ではもう少し歩いて帰るとするかのう?」
「そうですね。でも今日はお天気が良くて気持ちいいですよ」
「なら今日は山頂にまで行ってみるか。ほら、お前達はそこまで歩けんじゃろ、連れていくから乗るのじゃ」
「こけー」

 ディランが手を出すとペット達は手の中に納まっていく。
 そして山頂までいき、優雅な景色を見ながら『あそこが村だ』とか『人間の王が居るのはあそこか』といった話をリヒトに聞かせていた。

 やがてお昼になると下山し、家でのんびり過ごすのだった。
 特に稼ぐための仕事もしないため、こんなゆったりとして楽しく過ごすことができるのだった。
しおりを挟む
感想 739

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...