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第151話 竜、いい案を出す
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「いい水田じゃのう」
「じゃろ? 朝食った米もここで作ったものじゃ」
「トワイトが居るからお主はええのう」
「わふあ……」
ハバラ一家とロクローが泊った翌日は快晴だった。
ディランは結果報告が来るまでのんびりしろと言い、今はロクローと散歩をしているところだった。
足元には昨晩、リヒトとリコットが中々寝ず、遊んでいたヤクトとルミナスがまだクタクタの様子であくびをしていた。
「ほれ、トマトじゃ」
「お、すまんな……うむ、美味いわい。それにしても静かでいい山じゃな」
「たまたま降り立ったのじゃが運が良かった。モルゲンロート殿もいい人間じゃし、麓の村もいいぞい」
「ふむ。やはりできるならこういう場所で暮らしたいもんじゃ。向こうにも山があるし、別々に住めばよかろうて」
「「わふ♪」」
「こけー」
トマトをもいでロクローとルミナス、ヤクトに渡す。そのまま川辺へ行き、座り込んで洗うとみんなでかぶりついた。
ジェニファーはディランがトウモロコシの粒を手のひらに乗せて食べさせる。
「まあな。しかし、それを決めるのはこの国の王じゃ。本来なら住むくらい気兼ねなくできるものなんじゃがな」
「……ま、わしらは仕方ない。少し力を振るえば『大災厄』。本気を出せば『天変地異』崇められるか、討伐か……ドラゴンというのはそういうものじゃ」
共存できるならしたい。
ロクローはくっくと笑いながら過去のことを思い返すような言葉を口にする。
ディランは特に表情を変えずに無言でトマトをかじる。
「うぉふ?」
「む、なんじゃヤクト。お主が甘えてくるのは珍しいのう……お、ルミナスもか」
「ふっふっふ、あのディランがアッシュウルフに懐かれているとは面白いわい」
あぐらをかいているディランの両ひざにそれぞれ顎を載せて目を閉じる。ディランは口をへの字にして撫でてやった。するとそこへジェニファーも真ん中に鎮座する。
「こけー♪」
「まったく、なんじゃい急に。トワイトとリヒトにしてやればええじゃろうに」
「「わふ♪」」
ディランはよく分からないといった感じで渋い顔をしてペット達を撫でまわした。
ロクローも笑いながらヤクトの背中を撫でて言う。
「ま、竜の里はその内に年寄りは追い出されるじゃろう。いうて二、三百はおるからいずれだろうがな。残念じゃがこれも時代かのう」
「竜の里を作ったのも色々あったからな。さて、今後のことはひとまず置いといて、ゆっくり畑でもいじりながらのんびりしようぞ」
「じゃな。水もいいし、酒造りが捗りそうじゃ」
「水は嫁さんのがいいんじゃないか? 帰ってきておらんのか」
「……ゥリンか。もう百年は帰っておらんからのう、どこかで死んでいてもおかしくはない」
「くぅん」
ロクローの嫁についてディランが尋ねると空を見上げてどこかで死んでいるかもしれんと口を開く。そこへルミナスが寄って行って一声鳴いた。
「なに、ドラゴンとはそういうものじゃ。ディランとトワイトがずっと一緒というのが珍しいだけじゃからな」
「ウチのハバラもそうなるじゃろ」
「確かに」
ドラゴン同士の夫婦は片方が自由な性格だと家を出て行ってしばらく帰ってこないことが多い。
特に子育てが終わった後はその傾向が強く、そのためどこかで死んでいる可能性が高いのであった。
「居場所が決まったら一旦、里に帰ってどこにいるか伝言だけ残しておくのが良かろう。トーニャとハバラの時に困ったからな」
「じゃな! まあ、生きておらんよ! うわっはっはっは!」
「ふん。強がりおって……ふむ、もう少し経てば考えられるか?」
ロクローはそう言って笑うが、ディランは彼が虚勢を張っているのが分かっていた。探すのは難しいが今なら手段はあるかもしれないと顎に手を当てて考える。
「あなたー」
「ん?」
そこで背後から声をかけられた。
振り返るとトワイトが手を振りながら歩いてくるのが見えた。ヤクトとジェニファーを抱っこして立ち上がり彼女の前へと行く。
「どうした? リヒトがおらんようじゃが」
「リヒトはハバラとソレイユさんが見てくれているわ。少し村へ行こうと思うのだけどいいかしら?」
「一人でか?」
「ええ♪ ロクローさんもいらっしゃるし、たまには一人でお出かけしてくるわ」
「むう」
ディランはそこで渋い顔になる。
一人で出かけた後、帰ってこないという話をしたばかりなので当然といえば当然である。
「……ワシも行くぞ」
「え? でもお家にいないと……」
「ああ、わしのことは気にせんでいいぞ。ハバラもおるし大丈夫じゃろ」
「そうですか? なら行きましょうか♪」
「うむ。リヒトも連れていくぞい」
「くあ……」
「ジェニファーはお留守番をお願いね?」
「こけ!」
ロクローは腰に手を当てて行ってこいと言っていた。トワイトは首を傾げたが、それならとディランの手を取った。
もちろんアッシュウルフ達は一緒に行くが、お客さんが居るからジェニファーはお留守番とした。
「では、一緒に散歩でもするか」
「こけ」
ロクローはジェニファーを抱えて川沿いを歩き始めたのでディラン達は自宅へ戻った。
「きゃーい♪」
「あうー♪」
「わほぉん……」
「ぴよぴよー♪」
遊戯室ではソレイユの膝に座っているリコットにリヒトがでんでん太鼓を鳴らして遊んであげていた。ひよこ達もリヒトの近くやリコットの肩に乗って合唱をする。
ちなみにリコットは首がすわっているものの、まだ、はいはいもつかまり立ちも出来ないのでリヒトが目の前で構う形だ。
近くにはダルがおり、今はダルを背にして太鼓をポコポコと鳴らしていた。たまに立つ際にダルの毛を掴んで立ち上がるのだ。
「あ、母さん。父さんを呼んで来たのかい? 出かけるって言ってたけど」
「ええ。お父さんも行くって言うからリヒトを連れに来たのよ」
「なら俺達も……」
「ううん、二人はゆっくりしていていいわ。麓の村までだからすぐ帰るし」
「そうですか? 申し訳ありません」
「あー♪」
「わ、わほぉん」
ハバラがトワイトとディランに気づき、一緒に出かけるというがそれを断る。
リヒトがディランの姿を見つけてそちらへ歩き出し、ダルが慌てて追従した。
「おー、上手じゃの」
「あい!」
よてよてと歩いてきたリヒトをディランが抱っこすると、リヒトは両手を掲げて元気よく声を出していた。
「うー?」
「お出かけするんですって。リコットちゃんはお昼寝をしましょうね」
「きゃーい」
「ぴよー」
リヒトが離れていくのと同時にソレイユが抱き直して背中を軽く叩く。
肩に乗ったソオンが耳元で鳴くと、段々とリコットは目を閉じた。
「今日も早起きでしたから寝ると思いました。こちらは大丈夫なので行って来てください」
「ありがとうねソレイユさん。それじゃ行きましょうか」
「あー♪」
「しーするのじゃリヒト」
ポコポコと太鼓を鳴らしていたのでリコットを起こさないよう、ディランが唇に指を当てていた。
そのまま静かに外へ出て村へと向かう。
「なにを買うのじゃ?」
「羊の毛と色のついた布とかあるといいですね。その内に泣かなくなると思いますけど、離れてもいいようにリヒトのぬいぐるみを作ってあげようと思いまして」
「ほう、ぬいぐるみか。確かに赤子ならそれでいいかもしれんな」
「あーう?」
トワイトの案とはリヒトのぬいぐるみを作ることだった。
手先が器用で絨毯を作れるなら問題は無いとディランは納得しながらリヒトを肩車してトワイトに並んでいた。
「じゃろ? 朝食った米もここで作ったものじゃ」
「トワイトが居るからお主はええのう」
「わふあ……」
ハバラ一家とロクローが泊った翌日は快晴だった。
ディランは結果報告が来るまでのんびりしろと言い、今はロクローと散歩をしているところだった。
足元には昨晩、リヒトとリコットが中々寝ず、遊んでいたヤクトとルミナスがまだクタクタの様子であくびをしていた。
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「ふむ。やはりできるならこういう場所で暮らしたいもんじゃ。向こうにも山があるし、別々に住めばよかろうて」
「「わふ♪」」
「こけー」
トマトをもいでロクローとルミナス、ヤクトに渡す。そのまま川辺へ行き、座り込んで洗うとみんなでかぶりついた。
ジェニファーはディランがトウモロコシの粒を手のひらに乗せて食べさせる。
「まあな。しかし、それを決めるのはこの国の王じゃ。本来なら住むくらい気兼ねなくできるものなんじゃがな」
「……ま、わしらは仕方ない。少し力を振るえば『大災厄』。本気を出せば『天変地異』崇められるか、討伐か……ドラゴンというのはそういうものじゃ」
共存できるならしたい。
ロクローはくっくと笑いながら過去のことを思い返すような言葉を口にする。
ディランは特に表情を変えずに無言でトマトをかじる。
「うぉふ?」
「む、なんじゃヤクト。お主が甘えてくるのは珍しいのう……お、ルミナスもか」
「ふっふっふ、あのディランがアッシュウルフに懐かれているとは面白いわい」
あぐらをかいているディランの両ひざにそれぞれ顎を載せて目を閉じる。ディランは口をへの字にして撫でてやった。するとそこへジェニファーも真ん中に鎮座する。
「こけー♪」
「まったく、なんじゃい急に。トワイトとリヒトにしてやればええじゃろうに」
「「わふ♪」」
ディランはよく分からないといった感じで渋い顔をしてペット達を撫でまわした。
ロクローも笑いながらヤクトの背中を撫でて言う。
「ま、竜の里はその内に年寄りは追い出されるじゃろう。いうて二、三百はおるからいずれだろうがな。残念じゃがこれも時代かのう」
「竜の里を作ったのも色々あったからな。さて、今後のことはひとまず置いといて、ゆっくり畑でもいじりながらのんびりしようぞ」
「じゃな。水もいいし、酒造りが捗りそうじゃ」
「水は嫁さんのがいいんじゃないか? 帰ってきておらんのか」
「……ゥリンか。もう百年は帰っておらんからのう、どこかで死んでいてもおかしくはない」
「くぅん」
ロクローの嫁についてディランが尋ねると空を見上げてどこかで死んでいるかもしれんと口を開く。そこへルミナスが寄って行って一声鳴いた。
「なに、ドラゴンとはそういうものじゃ。ディランとトワイトがずっと一緒というのが珍しいだけじゃからな」
「ウチのハバラもそうなるじゃろ」
「確かに」
ドラゴン同士の夫婦は片方が自由な性格だと家を出て行ってしばらく帰ってこないことが多い。
特に子育てが終わった後はその傾向が強く、そのためどこかで死んでいる可能性が高いのであった。
「居場所が決まったら一旦、里に帰ってどこにいるか伝言だけ残しておくのが良かろう。トーニャとハバラの時に困ったからな」
「じゃな! まあ、生きておらんよ! うわっはっはっは!」
「ふん。強がりおって……ふむ、もう少し経てば考えられるか?」
ロクローはそう言って笑うが、ディランは彼が虚勢を張っているのが分かっていた。探すのは難しいが今なら手段はあるかもしれないと顎に手を当てて考える。
「あなたー」
「ん?」
そこで背後から声をかけられた。
振り返るとトワイトが手を振りながら歩いてくるのが見えた。ヤクトとジェニファーを抱っこして立ち上がり彼女の前へと行く。
「どうした? リヒトがおらんようじゃが」
「リヒトはハバラとソレイユさんが見てくれているわ。少し村へ行こうと思うのだけどいいかしら?」
「一人でか?」
「ええ♪ ロクローさんもいらっしゃるし、たまには一人でお出かけしてくるわ」
「むう」
ディランはそこで渋い顔になる。
一人で出かけた後、帰ってこないという話をしたばかりなので当然といえば当然である。
「……ワシも行くぞ」
「え? でもお家にいないと……」
「ああ、わしのことは気にせんでいいぞ。ハバラもおるし大丈夫じゃろ」
「そうですか? なら行きましょうか♪」
「うむ。リヒトも連れていくぞい」
「くあ……」
「ジェニファーはお留守番をお願いね?」
「こけ!」
ロクローは腰に手を当てて行ってこいと言っていた。トワイトは首を傾げたが、それならとディランの手を取った。
もちろんアッシュウルフ達は一緒に行くが、お客さんが居るからジェニファーはお留守番とした。
「では、一緒に散歩でもするか」
「こけ」
ロクローはジェニファーを抱えて川沿いを歩き始めたのでディラン達は自宅へ戻った。
「きゃーい♪」
「あうー♪」
「わほぉん……」
「ぴよぴよー♪」
遊戯室ではソレイユの膝に座っているリコットにリヒトがでんでん太鼓を鳴らして遊んであげていた。ひよこ達もリヒトの近くやリコットの肩に乗って合唱をする。
ちなみにリコットは首がすわっているものの、まだ、はいはいもつかまり立ちも出来ないのでリヒトが目の前で構う形だ。
近くにはダルがおり、今はダルを背にして太鼓をポコポコと鳴らしていた。たまに立つ際にダルの毛を掴んで立ち上がるのだ。
「あ、母さん。父さんを呼んで来たのかい? 出かけるって言ってたけど」
「ええ。お父さんも行くって言うからリヒトを連れに来たのよ」
「なら俺達も……」
「ううん、二人はゆっくりしていていいわ。麓の村までだからすぐ帰るし」
「そうですか? 申し訳ありません」
「あー♪」
「わ、わほぉん」
ハバラがトワイトとディランに気づき、一緒に出かけるというがそれを断る。
リヒトがディランの姿を見つけてそちらへ歩き出し、ダルが慌てて追従した。
「おー、上手じゃの」
「あい!」
よてよてと歩いてきたリヒトをディランが抱っこすると、リヒトは両手を掲げて元気よく声を出していた。
「うー?」
「お出かけするんですって。リコットちゃんはお昼寝をしましょうね」
「きゃーい」
「ぴよー」
リヒトが離れていくのと同時にソレイユが抱き直して背中を軽く叩く。
肩に乗ったソオンが耳元で鳴くと、段々とリコットは目を閉じた。
「今日も早起きでしたから寝ると思いました。こちらは大丈夫なので行って来てください」
「ありがとうねソレイユさん。それじゃ行きましょうか」
「あー♪」
「しーするのじゃリヒト」
ポコポコと太鼓を鳴らしていたのでリコットを起こさないよう、ディランが唇に指を当てていた。
そのまま静かに外へ出て村へと向かう。
「なにを買うのじゃ?」
「羊の毛と色のついた布とかあるといいですね。その内に泣かなくなると思いますけど、離れてもいいようにリヒトのぬいぐるみを作ってあげようと思いまして」
「ほう、ぬいぐるみか。確かに赤子ならそれでいいかもしれんな」
「あーう?」
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