206 / 385
第206話 竜、女子会をする
しおりを挟む
「気を使わせてしまいましたね」
「たまにはこういうのもいいものですよ♪ はい、お茶」
「ありがとうございます!」
ディランが買い出しをしているそのこと、トワイトはお茶を入れてレイカ達にふるまっていた。
「まさか竜神様のお茶が飲める日がくるとは……」
「大げさじゃない?」
「罰当たりですよユリ! ドラゴンといえば我々ウィズエルフはおろか他の種族でも崇高な存在なのです」
「まあ強いのは間違いないけど、畑仕事とかしているし鶏を飼ってたりするからわたし達とあんまり変わらない感じがするのよねー」
「もっと崇めるべきです!」
「まあまあ。エメリさんもそんなに畏まらなくていいわよ。お茶のおかわりは?」
「いただきますっ!!」
エメリは相変わらずドラゴン夫妻を崇めていた。ユリやレイカは人型で接している時間が長いため、あまり脅威には感じていないらしい。
「あんまり権威……いえ、強さかしら。それを誇示しても、誰もついてこないものよ。だからユリちゃんやレイカちゃん達が遊びに来てくれるのは嬉しいの。ねえ、ルミナス、ジェニファー、トコト♪」
「わん♪」
「こけー♪」
「ぴよー♪」
「あはは、みんな可愛いなあ」
トワイトが声をかけるとペット達は一斉に返事をした。ルミナスのブラッシングをしながらお茶とお菓子を食べているフレイヤはにっこりとほほ笑んでいた。
「だからエメリさんもその服みたいに慣れてもらえると嬉しいわ♪ よく似合っているわよ」
「勿体ないお言葉……! っと、この服は理由がありまして……元の服だと町を歩くときに人間がこちらに注目するので合わせた服にしようとフレイヤが……」
「私のせいみたいじゃない。ウィズエルフさん達に『これが時代の最先端ですよ!』とか言ってたのに」
「うわあ!?」
「わん!?」
トワイトがエメリの着ている服を褒めると、顔を赤くして注目されるのが嫌だったと語る。
しかし次の瞬間、フレイヤにどや顔を決めて仲間に見せびらかしていたことを暴露された。
顔を青くしたエメリはフレイヤに襲い掛かり、ブラッシングをしてもらっていたルミナスが慌てて飛びのいた。
それと同時にフレイヤとエメリは派手に転んで床に倒れた。
「あらあら」
「いたた……もー、エメリ危ないよ?」
「す、すみません……」
「ルミナス、こっちにおいでー」
「わふ」
もみくちゃになった二人を見かねてユリがルミナスを呼ぶと、ブラシを咥えてからユリの下へ避難した。
「賑やかでいいわね。お菓子もありがとうございます」
「いえいえ、デランザさんの移動で怖がらずに護衛をしてくれるのはこの屋敷の方々だけですからね。そのお礼ですよ!」
「ぴよー」
トコトはレイカのお腹の上に乗りクッキーのかけらを貰っていた。
「じゃあ結構お金は稼げているのかしら?」
「そうですね。フレイヤさんの移動護衛は決まった額が支払われるのでそれは貯金に回しています。ヒューシとユリ、それとリーナが主に行く感じですよ」
「竜神様と一緒に居たというもあり、初めて集落に入った人間の方が安心するというわけです」
「なに言ってるのよ。村長さんはあんまり気にしていなかったと思うけど」
「伝統がー!」
「はいはい、エメリさん、お茶のおかわりよ」
「いただきます……!」
こんな調子で女子会は進んでいた。
基本的にフレイヤとエメリが良くしゃべると言った感じだが、このひと月半でエメリが王都に馴染めたのはひとえにレイカ達と仲が良くなったためである。
それでも人間側のフレイヤやユリは『人間は恐ろしい』という先入観は頭に置いておけと注意していた。いい人間ばかりではないという話である。
「デランザも大人しく仕事をしているみたいで良かったわ」
「そうですね。デランザさんは報酬代わりに団長たちから美味しいものをもらっているんですけど、それが楽しみらしいです。たまになにもないんですけど」
デランザも上手くやっている……というより仕事だからと割り切っているそうだ。
どうせ山で寝るしかないからと当初の予定通り付き合ってくれているらしい。
「食っちゃ寝ばかりで戦いの勘が衰えなければいいですがね」
「平和だったらそれでもいいと思うけどねー? ヴェノムキマイラだっけ? 結構強いし」
「……わん?」
「ありゃ、来客だ」
「ご、ごめんねユリ」
「全然大丈夫よ! ルミナス、ジェニファー、一緒に行こうか♪」
そこで再び来客を告げる音が鳴り、ルミナスとジェニファーを連れて部屋を出ていくユリ。
「大きいお屋敷にして良かったわね」
「ホントに……お二人にはなんてお礼を言っていいか。こうしてゆっくりできるのもディランさんとトワイトさんのおかげですからね」
「トーニャも住んでいるからお互い様よ」
「いやあ、トーニャも依頼でかなり世話になっています……」
「ドラゴンだけあって強いもんね」
トーニャと屋敷が手に入った時点でかなり生活が安定して楽になったとレイカは言う。屋敷は広いので子供が出来ても安心して育てられると頷いていた。
「トーニャちゃん経由で頼ってくれていいからね?」
「こけー」
「はい! 生まれる時に一緒に居て欲しいですね。そういえばジェニファーもひよこちゃんと生んだのかしら……?」
「卵は毎日生むわね」
トワイトがジェニファーを撫でながらそういうとレイカは笑顔で出産のときに居て欲しいと返していた。できれば両親を連れてきたいとのこと。
「あー、いいなあ。私も彼氏が欲しいー」
「フレイヤはがさつですし無理……あ、痛い!?」
「ザミールさん狙いのくせに……!」
「そ、そんなわけありませんよ!? このわたしが人間ごときに……!」
「どうして悪の種族みたいな言い方をするのよ」
またフレイヤとエメリがじゃれあい、レイカがため息をついていた。
そこで来客を連れたユリたちが戻ってくる。
「まさかの来客だったわ」
「やほー」
「あら、シスさん」
「こけー!」
それはディランに促されてやってきたシスだった。口にキャンディーを咥えたまま片手を上げて挨拶をする。
「ドラゴンのおじさんと途中で会ってさ、女子会をしているっていうから来たのよ……って、なに? 戦闘訓練でもしてるの……?」
「うふふ、お茶を持ってきましょうね♪」
「あ、すみません」
トワイトがまた人が増えたことを喜び、お茶を取りに立ち上がった。お構いなくと言いつつシスはソファに腰かけた
「結構集まったわね……ダルとか居たら庭で遊ぶんだけど、なんか話してた?」
「エメリさんがザミールさんを好きだって」
「違いますってぇぇぇ!」
「あ、ウィズエルフ! 初めましてよね」
「おう!? 気づけば新しい人間が……!? コンニチハ……」
「ちょっと気になる話じゃない。聞かせてよ! シスもなんであの二人と居るのかとか」
「まあいいけど面白くないわよ?」
そして女子会らしく恋バナに移行するのだった。
「たまにはこういうのもいいものですよ♪ はい、お茶」
「ありがとうございます!」
ディランが買い出しをしているそのこと、トワイトはお茶を入れてレイカ達にふるまっていた。
「まさか竜神様のお茶が飲める日がくるとは……」
「大げさじゃない?」
「罰当たりですよユリ! ドラゴンといえば我々ウィズエルフはおろか他の種族でも崇高な存在なのです」
「まあ強いのは間違いないけど、畑仕事とかしているし鶏を飼ってたりするからわたし達とあんまり変わらない感じがするのよねー」
「もっと崇めるべきです!」
「まあまあ。エメリさんもそんなに畏まらなくていいわよ。お茶のおかわりは?」
「いただきますっ!!」
エメリは相変わらずドラゴン夫妻を崇めていた。ユリやレイカは人型で接している時間が長いため、あまり脅威には感じていないらしい。
「あんまり権威……いえ、強さかしら。それを誇示しても、誰もついてこないものよ。だからユリちゃんやレイカちゃん達が遊びに来てくれるのは嬉しいの。ねえ、ルミナス、ジェニファー、トコト♪」
「わん♪」
「こけー♪」
「ぴよー♪」
「あはは、みんな可愛いなあ」
トワイトが声をかけるとペット達は一斉に返事をした。ルミナスのブラッシングをしながらお茶とお菓子を食べているフレイヤはにっこりとほほ笑んでいた。
「だからエメリさんもその服みたいに慣れてもらえると嬉しいわ♪ よく似合っているわよ」
「勿体ないお言葉……! っと、この服は理由がありまして……元の服だと町を歩くときに人間がこちらに注目するので合わせた服にしようとフレイヤが……」
「私のせいみたいじゃない。ウィズエルフさん達に『これが時代の最先端ですよ!』とか言ってたのに」
「うわあ!?」
「わん!?」
トワイトがエメリの着ている服を褒めると、顔を赤くして注目されるのが嫌だったと語る。
しかし次の瞬間、フレイヤにどや顔を決めて仲間に見せびらかしていたことを暴露された。
顔を青くしたエメリはフレイヤに襲い掛かり、ブラッシングをしてもらっていたルミナスが慌てて飛びのいた。
それと同時にフレイヤとエメリは派手に転んで床に倒れた。
「あらあら」
「いたた……もー、エメリ危ないよ?」
「す、すみません……」
「ルミナス、こっちにおいでー」
「わふ」
もみくちゃになった二人を見かねてユリがルミナスを呼ぶと、ブラシを咥えてからユリの下へ避難した。
「賑やかでいいわね。お菓子もありがとうございます」
「いえいえ、デランザさんの移動で怖がらずに護衛をしてくれるのはこの屋敷の方々だけですからね。そのお礼ですよ!」
「ぴよー」
トコトはレイカのお腹の上に乗りクッキーのかけらを貰っていた。
「じゃあ結構お金は稼げているのかしら?」
「そうですね。フレイヤさんの移動護衛は決まった額が支払われるのでそれは貯金に回しています。ヒューシとユリ、それとリーナが主に行く感じですよ」
「竜神様と一緒に居たというもあり、初めて集落に入った人間の方が安心するというわけです」
「なに言ってるのよ。村長さんはあんまり気にしていなかったと思うけど」
「伝統がー!」
「はいはい、エメリさん、お茶のおかわりよ」
「いただきます……!」
こんな調子で女子会は進んでいた。
基本的にフレイヤとエメリが良くしゃべると言った感じだが、このひと月半でエメリが王都に馴染めたのはひとえにレイカ達と仲が良くなったためである。
それでも人間側のフレイヤやユリは『人間は恐ろしい』という先入観は頭に置いておけと注意していた。いい人間ばかりではないという話である。
「デランザも大人しく仕事をしているみたいで良かったわ」
「そうですね。デランザさんは報酬代わりに団長たちから美味しいものをもらっているんですけど、それが楽しみらしいです。たまになにもないんですけど」
デランザも上手くやっている……というより仕事だからと割り切っているそうだ。
どうせ山で寝るしかないからと当初の予定通り付き合ってくれているらしい。
「食っちゃ寝ばかりで戦いの勘が衰えなければいいですがね」
「平和だったらそれでもいいと思うけどねー? ヴェノムキマイラだっけ? 結構強いし」
「……わん?」
「ありゃ、来客だ」
「ご、ごめんねユリ」
「全然大丈夫よ! ルミナス、ジェニファー、一緒に行こうか♪」
そこで再び来客を告げる音が鳴り、ルミナスとジェニファーを連れて部屋を出ていくユリ。
「大きいお屋敷にして良かったわね」
「ホントに……お二人にはなんてお礼を言っていいか。こうしてゆっくりできるのもディランさんとトワイトさんのおかげですからね」
「トーニャも住んでいるからお互い様よ」
「いやあ、トーニャも依頼でかなり世話になっています……」
「ドラゴンだけあって強いもんね」
トーニャと屋敷が手に入った時点でかなり生活が安定して楽になったとレイカは言う。屋敷は広いので子供が出来ても安心して育てられると頷いていた。
「トーニャちゃん経由で頼ってくれていいからね?」
「こけー」
「はい! 生まれる時に一緒に居て欲しいですね。そういえばジェニファーもひよこちゃんと生んだのかしら……?」
「卵は毎日生むわね」
トワイトがジェニファーを撫でながらそういうとレイカは笑顔で出産のときに居て欲しいと返していた。できれば両親を連れてきたいとのこと。
「あー、いいなあ。私も彼氏が欲しいー」
「フレイヤはがさつですし無理……あ、痛い!?」
「ザミールさん狙いのくせに……!」
「そ、そんなわけありませんよ!? このわたしが人間ごときに……!」
「どうして悪の種族みたいな言い方をするのよ」
またフレイヤとエメリがじゃれあい、レイカがため息をついていた。
そこで来客を連れたユリたちが戻ってくる。
「まさかの来客だったわ」
「やほー」
「あら、シスさん」
「こけー!」
それはディランに促されてやってきたシスだった。口にキャンディーを咥えたまま片手を上げて挨拶をする。
「ドラゴンのおじさんと途中で会ってさ、女子会をしているっていうから来たのよ……って、なに? 戦闘訓練でもしてるの……?」
「うふふ、お茶を持ってきましょうね♪」
「あ、すみません」
トワイトがまた人が増えたことを喜び、お茶を取りに立ち上がった。お構いなくと言いつつシスはソファに腰かけた
「結構集まったわね……ダルとか居たら庭で遊ぶんだけど、なんか話してた?」
「エメリさんがザミールさんを好きだって」
「違いますってぇぇぇ!」
「あ、ウィズエルフ! 初めましてよね」
「おう!? 気づけば新しい人間が……!? コンニチハ……」
「ちょっと気になる話じゃない。聞かせてよ! シスもなんであの二人と居るのかとか」
「まあいいけど面白くないわよ?」
そして女子会らしく恋バナに移行するのだった。
148
あなたにおすすめの小説
ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました
もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。
【完結】「かわいそう」な公女のプライド
干野ワニ
恋愛
馬車事故で片脚の自由を奪われたフロレットは、それを理由に婚約者までをも失い、過保護な姉から「かわいそう」と口癖のように言われながら日々を過ごしていた。
だが自分は、本当に「かわいそう」なのだろうか?
前を向き続けた令嬢が、真の理解者を得て幸せになる話。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
不確定要素は壊れました。
ひづき
恋愛
「───わたくしは、シェノローラよ。シェラでいいわ」
「承知しました、シェノローラ第一王女殿下」
何も承知していないどころか、敬称まで長々とついて愛称から遠ざかっている。
───こいつ、嫌い。
シェノローラは、生まれて初めて明確に「嫌い」と認識する相手に巡り会った。
そんなシェノローラも15歳になり、王族として身の振り方を考える時期に来ており───
※舞台装置は壊れました。の、主人公セイレーンの娘が今回は主人公です。舞台装置~を読まなくても、この話単体で読めます。
※2020/11/24 後日談「その後の彼ら。」を追加
【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
2025.10〜連載版構想書き溜め中
レイブン領の面倒姫
庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。
初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。
私はまだ婚約などしていないのですが、ね。
あなた方、いったい何なんですか?
初投稿です。
ヨロシクお願い致します~。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる