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第230話 リヒト、気に入る
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「アー!」
「あーう?」
リヒトに向かって砂浜を歩いて来るペンギンを見て、手を繋いだまま様子を伺う。
そこでディランが作ってくつろいでいた砂のベッドから降り、ディランとモルゲンロートがトワイト達のところへやってきた。
「なんじゃ? む、あれは?」
「……見たこともない生き物ですな。魔物、か?」
「あなた、ペンギンですよ」
「そのようじゃが、なぜこんなところに? あれはイルカか?」
「うぉふ」
「ぴよ」
人が増えたが特に驚く様子もなく、ペンギンはどんどん近づいて来る。しかし何かしてくるかもしれないのでヤクトやトコトは警戒のまなざしを向けていた。
ディランもここにペンギンが居ることを不思議に思い、首を傾げる。
そしてようやくみんなの前へやってきた。
「アー」
「む、カイザーペンギンじゃな。魔物の一種じゃ」
「魔物なのですか。よく見たら首にディランさんのような風呂敷を背負っている……?」
リヒトと同じくらいの大きさの直立したペンギンは立ち止まると丁寧にお辞儀をした。そこでディランが思い出したようで、魔物だと告げる。
「あい!」
「アー」
リヒトも真似をしてお辞儀をすると、カイザーペンギンは満足げに鳴きながら羽か腕らしきものをパタパタさせる。
「あー♪」
「アー♪」
そのしぐさが気に入ったのかリヒトも真似をすると、カイザーペンギンも嬉しそうに振り回す。
「それにしてもこやつの生息地は遥か北の方……極氷海と呼ばれる地域じゃ。今みたいな薄着ではとても過ごせない過酷な場所だ」
「聞いたことくらいしかありませんが、とても遠い場所だとか? 本当にどうしてこんなところに……」
「ふんふん……」
「アー?」
ディランが生態を口にし、モルゲンロートは手を打ってから生息域のことくらいは知っていると話していた。
もちろん見たことがないアッシュウルフ達は近づいてふんふんと鼻を鳴らしていた。カイザーペンギンは驚くことも逃げることもなく、首を傾げている。
「少し様子を見ましょうか。それよりリヒト、お父さんに見せるものがあるのよね」
「あい! あうー」
「おお、イトマキヒトデか。わざわざ持ってきてくれたのじゃな、ありがたいわい。怖がらずに持って偉いのう」
「あーい♪」
リヒトが手に持っていたヒトデを掲げてディランへ見せると、頭を撫でてほほ笑んだ。褒められたことが嬉しいリヒトはディランの足に抱き着く。
「アー」
「む、なぜお前も抱き着くのか……」
「あい♪」
そこで何故かペンギンも抱き着き、鳴く。リヒトが背中を撫でるとカイザーペンギンもリヒトの背中を撫でた。
「あら、仲良しさんになったわね」
「あい!」
「わほぉん?」
「アー? アーウ」
「わん」
「なんか話しているな……」
アッシュウルフ達となにやら会話を始めたので、モルゲンロートが訝しんでいた。
「おーい、戻ったぞい」
「砂のベッドがあるぞ?」
そこで話し合いに行っていたコウとサロス達が戻って来た。サロスはディランが作った砂のベッドを見て良さそうだと口にする。
それはともかくと、コウが経緯を話し出した。
「ひとまずこの町に住むことにしたわい。町の貴族が請け負ってくれたぞ」
「ははは、陛下とドラゴンに頼まれて断れる者はあまりいませんからな。初めまして、この付近の町を統括している伯爵でカッツと申します。杖で失礼、足が悪いもので」
「ディランじゃ」
「トワイトです。この子はリヒト」
「あーい!」
「わほぉん」
「こけー」
カッツという杖をついた初老の男性がにこりと微笑みながら挨拶をし、ディラン達一家も挨拶をする。
人の好い雰囲気があり、リヒトがむずがったりしないので良い人間のようだった。
「家は好きなところに立ててもらうことにしています。ただ、砂浜は景観が悪くなるのと、漁師が嫌がると思うので、土地が決まったら教えてください」
「ありがとうカッツ殿。ディランよ、そういうわけじゃから後はこっちでなんとかするわい」
「そうか。他の老ドラゴン達の先遣じゃ。フラウやボルカノ共々しっかりやっていこう」
「うむ」
「では帰るか」
目的は済んだとディランが頷き、帰ろうかと言う。しかしそこでカッツが口を開く。
「折角ですし、食事でもいかがですか? ここで海の幸を焼いて食べましょう」
「ふむ」
「そうですねえ」
「うぉふ♪」
「わんわん!」
「わほぉん!」
ペット達は食事と聞いて色めき立つ。
帰ろうと思ったが、彼等が期待しているので一家はお誘いに乗ることにした。
「モルゲンロート殿は大丈夫かのう」
「まあヴァールもローザもいるし問題ないと思う。私も食事をさせてもらおうか」
「浜焼きか、久しぶりだ。酒も貰おう」
「お前というやつは……」
サロスはくっくと笑いながら酒を所望していた。モルゲンロートは呆れながらも悪くないなと話にのる。
「アー?」
「今からお食事なの。あなたはどこかへ行くんじゃないの?」
「アー」
トワイトの質問に首を振るカイザーペンギン。たまたま上陸しただけのようだ。
「もしかして家出かしら……」
「アー」
「あーう?」
そこで風呂敷を降ろしたカイザーペンギンが中から魚を取り出し、リヒトに差し出した。食べろと言っているらしい。
「リヒトはまだ食べられないから、あなたが食べていいわよ♪」
「アー……」
「おー」
残念そうに頭を垂れた後、カイザーペンギンは魚を丸のみにする。リヒトはその様子を見てパチパチと拍手をした。
「アー」
「あう」
そのままカイザーペンギンはまだ海沿いに居るイルカの下へ戻っていった。
「なんだったのだろう……」
「まあ、ええわい。魔物じゃが魚が主食なので人間は襲わん。放っておいてもよかろう」
「なるほど」
「あーい」
ディランの言葉に一同が納得する。
そしてリヒトは手を振って見送った。
しかし――
「あーう?」
リヒトに向かって砂浜を歩いて来るペンギンを見て、手を繋いだまま様子を伺う。
そこでディランが作ってくつろいでいた砂のベッドから降り、ディランとモルゲンロートがトワイト達のところへやってきた。
「なんじゃ? む、あれは?」
「……見たこともない生き物ですな。魔物、か?」
「あなた、ペンギンですよ」
「そのようじゃが、なぜこんなところに? あれはイルカか?」
「うぉふ」
「ぴよ」
人が増えたが特に驚く様子もなく、ペンギンはどんどん近づいて来る。しかし何かしてくるかもしれないのでヤクトやトコトは警戒のまなざしを向けていた。
ディランもここにペンギンが居ることを不思議に思い、首を傾げる。
そしてようやくみんなの前へやってきた。
「アー」
「む、カイザーペンギンじゃな。魔物の一種じゃ」
「魔物なのですか。よく見たら首にディランさんのような風呂敷を背負っている……?」
リヒトと同じくらいの大きさの直立したペンギンは立ち止まると丁寧にお辞儀をした。そこでディランが思い出したようで、魔物だと告げる。
「あい!」
「アー」
リヒトも真似をしてお辞儀をすると、カイザーペンギンは満足げに鳴きながら羽か腕らしきものをパタパタさせる。
「あー♪」
「アー♪」
そのしぐさが気に入ったのかリヒトも真似をすると、カイザーペンギンも嬉しそうに振り回す。
「それにしてもこやつの生息地は遥か北の方……極氷海と呼ばれる地域じゃ。今みたいな薄着ではとても過ごせない過酷な場所だ」
「聞いたことくらいしかありませんが、とても遠い場所だとか? 本当にどうしてこんなところに……」
「ふんふん……」
「アー?」
ディランが生態を口にし、モルゲンロートは手を打ってから生息域のことくらいは知っていると話していた。
もちろん見たことがないアッシュウルフ達は近づいてふんふんと鼻を鳴らしていた。カイザーペンギンは驚くことも逃げることもなく、首を傾げている。
「少し様子を見ましょうか。それよりリヒト、お父さんに見せるものがあるのよね」
「あい! あうー」
「おお、イトマキヒトデか。わざわざ持ってきてくれたのじゃな、ありがたいわい。怖がらずに持って偉いのう」
「あーい♪」
リヒトが手に持っていたヒトデを掲げてディランへ見せると、頭を撫でてほほ笑んだ。褒められたことが嬉しいリヒトはディランの足に抱き着く。
「アー」
「む、なぜお前も抱き着くのか……」
「あい♪」
そこで何故かペンギンも抱き着き、鳴く。リヒトが背中を撫でるとカイザーペンギンもリヒトの背中を撫でた。
「あら、仲良しさんになったわね」
「あい!」
「わほぉん?」
「アー? アーウ」
「わん」
「なんか話しているな……」
アッシュウルフ達となにやら会話を始めたので、モルゲンロートが訝しんでいた。
「おーい、戻ったぞい」
「砂のベッドがあるぞ?」
そこで話し合いに行っていたコウとサロス達が戻って来た。サロスはディランが作った砂のベッドを見て良さそうだと口にする。
それはともかくと、コウが経緯を話し出した。
「ひとまずこの町に住むことにしたわい。町の貴族が請け負ってくれたぞ」
「ははは、陛下とドラゴンに頼まれて断れる者はあまりいませんからな。初めまして、この付近の町を統括している伯爵でカッツと申します。杖で失礼、足が悪いもので」
「ディランじゃ」
「トワイトです。この子はリヒト」
「あーい!」
「わほぉん」
「こけー」
カッツという杖をついた初老の男性がにこりと微笑みながら挨拶をし、ディラン達一家も挨拶をする。
人の好い雰囲気があり、リヒトがむずがったりしないので良い人間のようだった。
「家は好きなところに立ててもらうことにしています。ただ、砂浜は景観が悪くなるのと、漁師が嫌がると思うので、土地が決まったら教えてください」
「ありがとうカッツ殿。ディランよ、そういうわけじゃから後はこっちでなんとかするわい」
「そうか。他の老ドラゴン達の先遣じゃ。フラウやボルカノ共々しっかりやっていこう」
「うむ」
「では帰るか」
目的は済んだとディランが頷き、帰ろうかと言う。しかしそこでカッツが口を開く。
「折角ですし、食事でもいかがですか? ここで海の幸を焼いて食べましょう」
「ふむ」
「そうですねえ」
「うぉふ♪」
「わんわん!」
「わほぉん!」
ペット達は食事と聞いて色めき立つ。
帰ろうと思ったが、彼等が期待しているので一家はお誘いに乗ることにした。
「モルゲンロート殿は大丈夫かのう」
「まあヴァールもローザもいるし問題ないと思う。私も食事をさせてもらおうか」
「浜焼きか、久しぶりだ。酒も貰おう」
「お前というやつは……」
サロスはくっくと笑いながら酒を所望していた。モルゲンロートは呆れながらも悪くないなと話にのる。
「アー?」
「今からお食事なの。あなたはどこかへ行くんじゃないの?」
「アー」
トワイトの質問に首を振るカイザーペンギン。たまたま上陸しただけのようだ。
「もしかして家出かしら……」
「アー」
「あーう?」
そこで風呂敷を降ろしたカイザーペンギンが中から魚を取り出し、リヒトに差し出した。食べろと言っているらしい。
「リヒトはまだ食べられないから、あなたが食べていいわよ♪」
「アー……」
「おー」
残念そうに頭を垂れた後、カイザーペンギンは魚を丸のみにする。リヒトはその様子を見てパチパチと拍手をした。
「アー」
「あう」
そのままカイザーペンギンはまだ海沿いに居るイルカの下へ戻っていった。
「なんだったのだろう……」
「まあ、ええわい。魔物じゃが魚が主食なので人間は襲わん。放っておいてもよかろう」
「なるほど」
「あーい」
ディランの言葉に一同が納得する。
そしてリヒトは手を振って見送った。
しかし――
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