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真理愛さまが見てた
しおりを挟む「ま、真理愛……! 先に帰ったんじゃなかったのか!?」
校舎裏での会話時間を考えると、真理愛は俺にクラスに来た後に霧夜に話を聞いて帰ったなら今頃は自宅付近のはずだ。
「坂家君が修ちゃんは用事で先に帰ったって言ってたから急いで追いかけてきたの。修ちゃんが用事の時はだいたい商店街だと思って探してたんだよ」
「そ、そうか……」
そこで商店街を見まわしていた八塚が俺がついて来ていないことに気づき、俺の下へ戻って来た。
「どうしたの神緒君早く家に行きましょう? あら、興津さん」
「!? 八塚さん……! ねえ、修ちゃん、どうして八塚さんと一緒なの? これが用事?」
「お、おう、そうだぞ」
「まさかデート……?」
真理愛が鋭い目を俺に向けて尋ねてくる。背筋に冷たいものが走るがそこで八塚が援護をしてくれ、俺はホッとする。
「デートじゃないわ。私は神緒君のことを良く知らないし、神尾君も私のことを良く知らないもの」
「あ、そ、そうだよね! でもそれならどうして修ちゃんと?」
「今から彼の家へお邪魔するつもりだからよ」
「な……!?」
間違っていない。
間違っていないが、直球過ぎる。真理愛がギギギ……と首を俺に向けて、笑顔で言う。
「ふうん、おうちに……あたし、修ちゃんとおうちが隣なの一緒に帰っていいよね?」
「もちろんよ。ねえ?」
「問題ない! 別にやましいことをしているわけじゃないし!」
俺は自分に言い聞かせるように真理愛の肩に両手を置いてそう言うと、真理愛は一瞬きょとんとした顔をした後、笑顔で頷いた。
「でも、どうして八塚さんが修ちゃんの家に行くの?」
「ああ、昨日俺の家にペットの猫が居たみたいなんだよ。で、まだ帰って来ていないらしくて手がかりを探しに来るってさ」
「そうなの。それなのに神緒君がこ――」
「わああああああ!? み、見つかるといいな! 母ちゃんや結愛が何か知っているかもしれないし!」
「もがっ!?」
俺は慌てて八塚の口を塞ぎながら耳元で小さく呟く。
「(頼む、さっきのことを真理愛に知られたら殺されてしまう……それは口にしないでくれっ)」
「(わ、わかったわ……)」
「ぶー、仲良しさん?」
「ち、違うわ。神緒君のことなんかこれっぽっちも良く知らないし好きでもないし!」
そこまで言われるともの悲しいものがあるが、とりあえず難は逃れた。そのまま真理愛を交えて帰路についていると、真理愛が八塚に話しかける。
「猫さん、家出しちゃったのかな?」
「そんなことは無いと思うんだけど……ちょうど居なくなった日の次の日に探しに行こうと思ったんだけど、夜、急激な頭痛に襲われてそのまま学校を休んだの」
「あ、そういや霧夜が言ってたな。実は俺も猫を見た時、頭痛で学校を休んだ日なんだよ」
「え、そうなの? 奇遇ね。あれは死ぬかと思ったわ……」
「修ちゃんもあんまり病気しないからあたしびっくりしちゃったの! おばさんが心配してたんだよ。修ちゃんはあたしとおばさんと結愛ちゃんにシュークリームを買うこと!」
真理愛がケーキ屋のショーウィンドウを見ながらそんなことを言う。俺もそちらに目を向けながら別のことを考えていた。俺と同じ頭痛だと言い、翌日……つまり今日、平然と登校してきている点が同じだなと。
それに八塚のペットである猫……もし、俺が見たのがそうであればどうして俺のところに? 頭痛と何か関係が……あるわけないか……そんなオカルトチックな話がこの現代日本にあるわけが無い。
そう胸中でため息をついていると、不意に八塚が笑う。
「ふふ。同級生と一緒に帰るなんてこと初めてだからちょっと新鮮ね。じゃあ口止め料にシュークリーム、私も買ってもらおうかな?」
「おいおい、長期休みしかバイトが出来ないんだから勘弁してくれよ……小遣いはお前の方が多いんじゃないか?」
「まあ、そうだけどね」
「?」
不意に翳りのある顔で困ったように笑う。何となくその顔を見て胸がチクリと痛むのを感じ、俺はケーキ屋へと入っていく。
「よし、さっさと帰っておやつにするぞ! 母ちゃんはもう帰っているはずだ! 遅れたやつはシュークリーム無し!」
「あ!? ちょっと待ってよ修ちゃん! 八塚さん、追うよ!」
「え? あ!? 引っ張らないで!? ……ふふ……」
振り返えると、真理愛に腕を引かれながら追いかけてくる八塚が微笑んでいるのを見て少し、気持ちが軽くなった。
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