現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

文字の大きさ
8 / 115

迷い猫

しおりを挟む

 「ただいまーっと」
 「おかえりーっと」

 真理愛と八塚のふたりを連れて帰宅。
 俺の帰宅挨拶に、愚妹ののんびりした声が返って来て、寄り道をせずに帰ってきたことを告げると、俺の後からふたりも靴を脱いで上がってくる。 

 「お邪魔しますー♪」
 「あ、真理愛ちゃんいらっしゃ――」
 「……お邪魔します……」

 リビングに入る俺達、いや、八塚を見て目を見開く我が妹。食べていたアイスの木のへらをポロリと落とし、口を開く。

 「馬鹿な……!? お兄ちゃんが真理愛ちゃん以外の女の子を家に連れてきただって……!? 何で!? 一体どんな弱みを握られているの!?」
 「え、ええ……?」
 「人聞きの悪いことを言うな!? すまん、こいつはウチの妹で結愛ってんだ。結愛、こっちは同級生の八塚だ。お前にも聞きたいことがあってな――」

 と、肩に手を置いてソファに座らせようとしたところで、台所の方からカラン、と乾いた音がしたので振り返ると、

 「しゅ、修が真理愛ちゃん以外の女の子を……!?」
 「そのくだりはもういい!」

 そして。

 「飼い猫が居なくなったんですね? それがウチに居た、と」
 「そうなの……ごめんなさい、急に押し掛けてこんなことを言うのもなんですけど、何かご存じありませんか?」
 「コーヒーで良かったかしら?」
 「あ、お構いなく」
 「おばさんのコーヒーは美味しいんだよ?」

 母ちゃんも交えて八塚の話をふたりにもすると、結愛が顎に指を当てて口を開いた。

 「うーん、わたしは見てないかなあ。お兄ちゃんは窓の外に居るのを見たのよね?」
 「だな。ただ、一瞬見えた気がしたけど、すぐに眠ったからあんまり覚えてないんだ。だからあの運転手、村田さんだっけ? あの人よくウチに居るのを見つけたなって思ったくらいだ」
 「お母さんは?」
 「そうねえ、昨日は修が休んでいたから家の掃除を久しぶりにやったくらいかしら?」

 お盆を片付けに台所に行っていた母さんが戻ってくる。やっぱりそう簡単に見つかるもんじゃないか……

 「……って、なんだそれ?」
 「え? 猫よ?」
 「猫だねえ」
 「猫だわ」

 少し汚い三毛猫を抱いた母ちゃんが『当り前じゃない』と言わんばかりに首を傾げ、真理愛と結愛が真顔になる。

 「お仕事から帰ってきて、洗濯物を取り込もうとお庭に出たらぐったりしているこの子を見つけたの。餌を上げた後、さっきまで寝てたんだけど、今見たら起きていたから」
 「み゛ゃー」

 よーく見れば目つきの悪い三毛猫がだみ声を発しながらあくびをする。そこで八塚が指をさしながら立ちあがり、大声を上げる。

 「そ、それー!?」
 「え? そうなの? 昨日の話だからこの子は違うんじゃない?」
 「いや、この付近で目撃があって、今日庭でぶっ倒れてたなら間違いないだろ……」

 真理愛のゆるい発言に疲れながら八塚を見ると、涙ぐみながら母ちゃんから猫を受け取っていた。

 「良かった……」
 「良かったわね、ロクサブロー」
 「名前つけてた!? お母さん飼う気満々だった!?」

 ツッコミを入れる結愛はさておき、感動のあまり絞め殺さん勢いで抱き着く八塚の肩を叩いて話しかける。

 「にゃ゛ぁぁぁぁ!?」
 「おい、八塚あまりやりすぎるとそいつ死ぬぞ」
 「ああ!? ごめんなさいスメラギ!?」
 「スメラギって言うんだ? お嬢様が飼うペットって感じがするね」
 「そ、そう? ありがとう結愛さん。今日はここへ来て良かったわ! 遅くなったし、そろそろ帰りますね。このお礼はまた後程」
 「あら、もう帰るの? あ、でもこんな時間なのね」

 笑顔でそう言って立ち上がる八塚に母ちゃんが残念そうに言い、俺も話しかける。家がどこなのか知らないが、最近の物騒な事情を考えるとひとりで帰すわけにはいかない。

 「最近物騒だし送っていくぞ」
 「あ、ありがとう……でも大丈夫よ、家に電話して迎えに来てもらうから」
 「なるほど、お兄ちゃんが送るより安心ね!」
 「どういう意味だおらぁ!?」
 「あはは、修ちゃんは意気地なしだからそんなことはしないよー」
 「お前も失礼だな!?」
 「ぷっ……あはは! お、面白いのね、あなた達って」
 
 八塚は俺達の会話を聞いて本当におかしいと笑い、しばらくして家に電話した八塚は高級車に乗って帰っていった。運転手はあの村田という男ではなく、柔和な顔をした老執事だ。
 母ちゃんのファインプレイで八塚の猫が見つかったという話を夕食にみんなで話して笑いあい、その日は終了した。

 そしていつも日常に――
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...