現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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平和な一日の始まり

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 ――というわけで、翌日。八塚のぶっさいくな猫騒動は収束を迎え、今日も今日とて学校へと向かう。

 「八塚さんってあまり喋ったことなかったけどいい人だよね! あのスメラギ君が拾った猫だって聞いたときは驚いたよ」
 「だなあ、お嬢様なんだからペットショップとかで買いそうだけどな。あ、でもあいつ雄の三毛猫だっけ?」
 「そうそう。珍しいよねー」

 途中までは一緒の結愛が頭の後ろに手を組んだまま呼応する。あまり良く知らないけど三毛猫の雄が生まれにくいという話らしく、八塚はスメラギを抱っこしてドヤ顔で語っていた。
 そんな話をしながら呑気に歩いていると、商店街の大通りに人だかりができていることに気づく。

 「何かしら?」
 「行ってみよう……!」
 「こら、待て、結愛!? 真理愛も行くなよ!?」

 スマホを見てまだ時間があることを確認し、好奇心の塊である愚昧を追いかけて人だかりの現場へとやってくる。人だかりとはいっても満員電車のような状態ではないので、するりと人の脇を抜けるとそこには――

 「うわ、事故か……」
 「みたいだね。あ、でもドライヴァーは無事みたいだよ」
 
 何故かネイチャーな言い方をする結愛に一瞬目を向けた後、街頭にぶつかってぐしゃぐしゃになった車の前で若い男性が警察官に困惑しながら叫んでいた。

 「ひ、人が道路に立っていたんだ! だから俺は慌ててハンドルを……」
 「その人は?」
 「け、煙みたいに消えちまった……。な、なあ、信じてくれ! 別に違反切符が怖いわけじゃねえ、あの人影がなんだったのか気持ち悪くて仕方ねえんだよ!」

 と、青い顔で警察官の腕を掴んでいる姿は縁起でも違反逃れでもない切迫した様子のような気はする。

 「今度は事故か。なんか一日一回は悪いことが起こっている気がするなあ」
 「そうだね。昨日はシュークリームを買って帰ったけど、やっぱり放課後はまっすぐ帰った方がいいかも? 新しい服はまた今度かなあ」
 「あ、真理愛ちゃん服買う予定だったの?」
 「うん。今度の休みに修ちゃんと商店街か、町へ行こうと思ってたんだよ」

 承諾したっけ……? そんなことを思いながら、結愛に今日も真っすぐ帰るよう言いつけると、中学のある方向へと走っていく。すぐに友達だと思われる後ろ姿に突撃するところを見たので、俺と真理愛は苦笑しながら学校へ向かう。

 「おはよう」

 教室に入ると、いつもと変わらぬ調子で霧夜が挨拶をしてくる。昨日のことを思い出した俺は霧夜のコメカミをぐりぐりしながら口を尖らせる。

 「『おはよう』じゃねえっての! お前、真理愛を放置しただろ?」
 「そう言われても困る。俺は『用事があるから先に帰った』と言っただけだし、引き留める間もなく目の前から姿を消した。なんだ、八塚と一緒のところでも発見されたのか?」
 「ああ」
 「なっ!?」

 俺が頷くと、冷や汗をかく霧夜。
 まあ俺が真理愛以外の女の子と一緒なのがまず無いことと、真理愛の嫉妬はかなり怖いのでこの反応は仕方ない。

 「ま、とりあえずお前の思うような凄惨な事態にはならなかったし、美少女と付き合うというようなことにはならなかったよ」
 「……もし付き合っていたら……」
 「想像するな!?」
 
 ごくりと喉を鳴らす霧矢にツッコミを入れた後、俺達は苦笑し、ホームルームまで昨日あったことを話す。
 猫も見つかったし、八塚と話すことも滅多にないだろう。お嬢様と庶民では住む世界が違うしな。
 
 しかし、八塚も病気だったのは少し驚いたけどな。あいつは病院に行ったそうだけど、頭が痛くて熱がある以外は何かの病気とは診断されなかったらしい。

 「気にしても仕方ないか」
 「ん?」
 「いや、何でもないよ。さて、退屈な授業でも聞きますかね」
 「だな」

 俺のつぶやきに反応する霧夜に笑いながらやんわり返し、一限目の授業を開始する。
 放課後は真っすぐ帰らないといけないし、今日はどうするかなといつもの日々に戻る俺に、真理愛という魔物が昼休み、静寂を打ち破って来た。
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