現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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猫、二匹

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 「アイスドラゴン……確かに戦ったことがある。ブリザードブレスには手を焼いたのを覚えているぞ」
 <へっへ、死闘と呼ぶに値するいい勝負でした>

 二本足で立ち、腕……いや前足を組んで鼻息を荒くするアイスドラゴンを名乗る猫。スメラギのことを知っていて喋るあたり嘘ではなさそうだが、どうしてこのタイミングで現れたのかが気になる。

 「お前はいつからこの世界にいるんだ?」
 <俺が俺だと認識したのはいつだったかな……気づけば公園の段ボールで目が覚めたんだ>
 <ふむ、我と同じか。やはり食事は……?>
 <ああ、飲食店のごみ箱ですよ……>
 <そうか……>

 遠い目をするアイスドラゴン猫の肩に前足を置いて首を振るスメラギ。俺達には分からないなにかがあるのだろうと気が済むまで放置しようと決めたところで、フィオが口を開く。

 「それにしても向こうの世界のドラゴンの二匹目が現れるなんて……。一体どうなっているのかしら? 国王様がこの世界に私達を送り込んで門を開こうとしているけど、来たところでどうするつもりなのかも分からないし……」
 「だなあ。魔族も国に入り込んでいるし、俺達の世界はどうなっちまうんだろうな……」
 「そもそも俺がドラゴン退治によこされたのも、謀略だったからな。何を考えているのか気になるのは間違いない。もういい年だろうし」

 全ての発端は国王、という点が一番気になるのだがふたりはまだ向こうの世界に戻ることもあると思うので今は黙っておく。とりあえず今は来訪者のアイスドラゴン猫だと、二匹に目を向ける。

 <ほら、これも食え>
 <すみませんね、カイザードラゴン様>
 <我はスメラギという名を与えられていてな、これからはそう呼んでくれ>
 <へえ、いいですね!>

 ……なんか和んでいた。

 「なあ元アイスドラゴン、俺達のことは分かっていたみたいだけど、どうやって分かったんだ?」
 <ちょうど餌を求めて商店街へ向かっている途中だったんですが、ここを通りかかった時に髭が震えだしましてね。それで中に入ったら、って感じです>
 「なるほど、スメラギと同じってことか。この調子だと他にもドラゴン猫が居そうだな……」
 <かもしれないな。まあ、猫のままではどうしようもないのだが……>

 戻れたことを思い出したのか、遠い目をして天井を仰ぐスメラギ。よく見れば空が薄暗くなってきていることに気づく。

 「おっと、そろそろ帰らないと母ちゃんに怒られるな」
 「あ、もう暗くなってきたわね。寂しいけど、また来てね」
 「……ああ」
 「スメラギも帰るんだろ?」
 <うむ。お嬢のところへ戻らねばな>

 フィオが笑いながらアイスドラゴン猫とスメラギを撫でるのを見て胸が痛む。
 どうにかこちらの世界に溶け込めるような措置ができれば……やはり八塚しか頼れないかと思いながらビルを出ようとすると、アイスドラゴン猫がついてくる。

 「お前もどこかへ帰るのか?」
 <せっかく出会えたので、スメラギ様と一緒に行こうかと>
 <む? お嬢の家は我だけしか入れんぞ? お前のいるところを教えてくれれば、明日はそっちへ行くが>
 
 スメラギが首をかしげて無情にも告げると、アイスドラゴン猫は目を丸くして口をぽかーんと開けた。

 <そ、そりゃないですよ! せっかく同族に出会えたのに、俺も家猫にしてくださいぃぃぃ>
 <フィオとエリクがいるではないか>
 <そんな!? あの二人も難民みたいなもんじゃないですか……>

 アテが外れたと言わんばかりにスメラギに飛び掛かるが、さっと回避して塀の上へ移動する。

 <許せ……我だけでも結構家に入れてもらうのは大変だったのだ……これでお前を連れて行ったらまた放逐されるかもしれん。……さらばだ!>
 <あ、あ、あ……薄情者ー!!>

 多分八塚はそんなことしないと思うけどな……と去っていったスメラギをジト目で見ながら見送ると、前足をばたばたさせていたアイスドラゴン猫と目があう。

 <勇者の旦那……>
 「……まあ、ウチは母ちゃんと結愛が可愛がってくれるはずだ。だが」
 <だが……?>
 「名前は期待するな。そして、家では大人しくすることを守れるか?」
 <お安い御用ですよ!>

 アイスドラゴン猫は俺の足にまとわりつき首をこすり付けてくる。
 スメラギといい、不憫なドラゴン達だ……

 「とりあえず帰ったら風呂だな」
 <熱いのは苦手なんですがねえ……でも家で寝られるなら……>
 「ははは、ダンボールは快適じゃなかったか」
 <そりゃもう……>

 と、アイスドラゴン猫と他愛ない話をしながら帰路につく。
 目下の問題はフィオとエリクのふたりをどうにかすることだな。向こうの世界からの刺客はしばらく来れないだろうし。

 ――そう思っていた俺だが……
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