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この少年、変なんです!
しおりを挟む「あ、あんた……なんでここに?」
引き戸の側面を背にし、反対側に足を置いて出られないよう塞ぐその男は、まぎれもなくこの廃ビルで行方不明者を見つけ、引き渡した時に話をした刑事、若杉だった。
「なあに、誘拐された人は見つかったが犯人はいまだ行方不明。なら過去の現場に戻ってみるのは捜査の基本だ」
「放火魔がちゃんと燃えたか確認のため戻ってくるようなものか……」
「一緒にするんじゃない!? ……ま、というのは建前で君を張らせてもらっていたんだよ、神緒君」
「ど、どういうことなの……? しゅ、修ちゃん警察のお世話になるようなことをしたの!? ご、ごめんなさい、ほら修ちゃんも謝って!」
「ちが……!? 俺は何もしてないって!」
頭を掴む真理愛を俺が振り払っていると、霧夜が俺に代わって若杉刑事に尋ねていた。
「初めまして、坂家霧夜と言います。修を追いかけていたようですけど、修は後ろめたいことはないみたいです。……刑事さんがどうしてこの場に?」
「そう、それを俺も言いたかったんだよ!」
俺が叫ぶと若杉刑事はフッと笑い、タバコに火をつけながらその辺にあった事務椅子に腰かけて口を開く。
「……八塚怜ちゃん、君が廃工場に居たという話は覚えているかい?」
「はい!? え、ええ、ちょうど今その話をしていましたから」
「うん。で、神緒君の話ではたまたま工場に居て、そこの二人を逃がすのを助けた言っていたけど違う。彼はあの日病院に行き、そのあとタクシーでまっすぐ廃工場へ向かった。そこに、誘拐された人が居ると分かっているかのように」
「え……!?」
「……」
真理愛、霧夜、八塚の三人が一斉に俺の方を見て驚愕の声を上げ、俺は冷や汗をかいて若杉刑事を見る。
あの時病院からつけてきていたのか? 誰にも見られていないと思っていたけど、タクシーに乗る時は魔法を解除していたからありえない話じゃない。
「……どうかな? ドラマみたいな展開はそうそうないだろ?」
「いや、俺はこれでも人の顔は一度見たら忘れないんだ。あの時、俺は八塚さんの家で使っている村田に話を聞くため病院へ向かった。それで追ってみたら、というわけさ」
「どうして俺を……」
「そりゃあ、警察が頑張っても見つけられなかった人を偶然見つけ、聞き込みをしようとした人物に先に接触してそれを追いかけたら爆発事故から、残りの行方不明者が見つかった。これだけでも君をマークするには十分だと思わないか?」
「……」
俺はどうにかして話をはぐらかそうと考えを巡らせる。
これが一般人なら勘違いで済ませられそうだけど、警察相手には通用しないだろう。それに嘘をついたところで、フィオとエリクは言い訳が立たない。
仕方ないかと、俺は深呼吸をしてから若杉刑事に話しかける。
「……その通り、俺はあそこに八塚達が居るのを知っていた。この廃ビルに関しては偶然だけどな」
「やっぱりか。では尋ねたい、犯人は知っているか? もしくは顔を見たというだけでもいい」
「お、おい、修、どういうことなんだ……?」
焦る霧夜に目配せをした後、俺は続ける。
「犯人は分かっている。が、あんた達じゃ手に負えない。なぜなら、異世界の住人である魔族だからだ」
「は? ちょ、ちょっといきなりなにを言い出すのよ修君!?」
八塚が呆れた声を上げ、真理愛がきょとんとした顔で俺の顔を覗き込むが、構わずに続けた。
「俺はそっちの世界じゃ勇者って呼ばれていてな? 最近、記憶を取り戻したんだ。そしたら八塚の家の猫……スメラギっていうんだけどそいつが俺と相打ちになったドラゴンだった。そいつが誘拐された八塚を探すうちに、この廃ビルに辿り着き、そのまま工場の情報を掴んだってわけだな」
俺がぺらぺらと話していると、若杉刑事の顔が険しくなっていく。そりゃそうだろう、犯人が見つかるというのに、いきなりこんな話をされたんじゃ『こいつ頭大丈夫か?』となる。
しかし、この話、信じても信じなくても構わない。
もし信じてくれるなら、フィオ達の身柄を警察経由で保護してもらえるだろう。信じてもらえなかったら、俺達は補導されるかもしれないが、フィオ達が逃げる隙を作ることはできる。
ま、ここは信じてもらう方が話が早いので俺はある手段を使うことにした――
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