43 / 115
納得させるために
しおりを挟む「な、なんだって?」
「だから、俺は勇者の生まれ変わりで、誘拐犯はその世界の魔王と魔族なんだよ。これは嘘じゃない。その二人もそっちの世界から来た来訪者でね。向こうに帰れなくなった」
「しゅ、修ちゃん……?」
「修、お前……」
さて、キョトンとした顔で俺を見る若杉刑事は明らかに信じていない様子。まあこんな話をいきなりされて信じろと言う方が無理な話だろう。
しかし、逆に警察を味方につけておけば今後、何かあった時に力になってくれるような気もするので、バレた以上は信用してもらう方向で話を進める。
「そういうわけで、配下の魔族を倒して誘拐事件は落ち着いたってわけなんだ。しばらく向こうからそういう輩が来ることはないかな? この二人が帰れないわけだし」
「……漫画の読みすぎだよ、神緒君。勇者だの魔王だの……本当の犯人のことを話してくれないか?」
苦笑いで若杉刑事が言うと、フィオとエリクが俺の横に立ち、口をへの字にしてからエリクが口を開いた。
「兄貴は嘘なんて言ってないぞ? 俺達は間違いなく向こう側の人間だ。そっちの姉ちゃん達を守ったのは兄貴だぜ」
「そうです! どなたか分かりませんが、失礼ですよ?」
「まあ落ち着けエリク、フィオ。信じてもらうのに一番早い方法がある。ごにょごにょ……」
「あ、修ちゃんエッチだよ!」
「耳打ちくらいいいだろ!? というわけで若杉刑事、これならどうです? <火の息吹>
「……!?」
俺は一番わかりやすい方法として魔法を使うことにした。見れば後ろで真理愛や八塚、霧夜も目を丸くしていた。
「へ、へえ、手品得意なん――」
「<禍つ水竜>」
「火の息吹!」
手品だと思われるかもしれいとは思っていたので、魔法使いのエリクに大技を使ってもらい、フィオにも魔法を使ってもらう。
禍つ水竜で窓ガラスを破壊したのはやりすぎかもしれないけど、廃ビルだし信じてもらうにはこれがいい。
「……というわけで、嘘じゃない。というかこんなことをして嘘をつくメリットはないと思わないか? 俺達が誘拐犯ってことなら嘘をつく必要はあるけど、若杉刑事は俺達が犯人だって思うかい?」
「いや……」
俺達と窓を見て目を泳がせる。
「信じるも信じないも若杉さんの勝手だけど、俺を追って来て真相を聞きたいと言ったのはそっちだ。もし信じれないならこのまま帰って貰いたいかな」
俺が目を真っすぐ見て告げると、若杉さんはため息を吐いた後、深呼吸をして首を振る。ダメか? それならと思ったところで――
「ふう……分かったよ。非科学的だけど信じるしかなさそうだ。火をちょっと出すくらいなら手品で片づけられるが、さっきの水流? は、流石に手品で片づけるには難しい。先に仕掛けをした、とも考えたけど、僕がここに来たことを知らない様子だったし、仕込む必要性も感じられないからね」
「話が早くて助かるよ。というわけで本気で別世界ってやつは存在する。俺も最近記憶が戻ったばかりだから最初は信じられなかったけどな」
「しかし……異世界、か……」
冷や汗をかいているあたり、どうやら若杉さんは信じてくれたようだ。
「魔族を見て貰ったら早いと思うんだけど、倒しちゃったからなあ」
「しゅ、修ちゃん……ほ、本当に勇者の生まれ変わり、なの?」
俺の袖を引っ張って真理愛が恐る恐る聞いてきたので、手をポンと打ってから真理愛の肩に両手を置いて言っておくことにする。
「父ちゃんと母ちゃんには言わないでくれ。八塚と霧夜も頼む」
「え、ええ、構わないけど……」
「だ、大丈夫なのか……?」
うーん、困惑しているなあ。八塚……カリンは記憶が戻っているわけじゃなさそうだし、いきなり異世界からのって言われてもそうなるのは仕方ないか。
まあ告げ口されても痛手にはならないから軽くでいいだろう。学校に言いふらされると精神的にきついけども。そんなことを考えていると、若杉さんが顎に手を当てて口を開いた。
「しかしどうしたものかな……上に説明するのが大変だぞ……」
「そこはこの二人を使ってなんとかならないか? 外国人が主犯で逃亡した、みたいなシナリオで」
「ちょっと考えさせてくれ。少なくとも、今は誘拐の危険性は無いんだな?」
「それは間違いない」
俺が確信を持って言うと、若杉さんは少し苦い顔をした後、
「……とりあえず今日のところはこれで失礼させてもらおう。その二人の処遇については保留。ただ、廃ビルに置いておくわけにはいかないから……明日、放課後またここに来てくれるか」
「うん。できればいい返事を待っているよ」
「分かった。八塚さん、また親御さんにお話を聞くこともあると思うので、その時はよろしく頼むよ」
「は、はい!」
――若杉さんは片手を上げて廃ビルを去っていく。とりあえず今日のところは廃ビルに住む二人を見逃してくれると言ってくれたのは助かった。
強制退去してもこの時間だと行くところが無いというのもありそうだけど、若杉さんの好意だと思うようにしておこう。
「それじゃ俺達も一旦帰るか。すまない八塚、手間を取らせた」
「う、ううん。大丈夫よ。それより、この二人も私の救出に尽力してくれたんでしょ? ありがとう」
「シュウ兄ちゃんの知り合いなら当然ですよ。私はフィオ」
「一応言ったけど、俺はエリクだ。ちゃんとした家に住めればいいけど……」
エリクの言葉に俺達は笑い、程なくして帰宅する。
明日か……嫌な予感はしないけど、どうなるかな……?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる