71 / 115
現場と協力者
しおりを挟む修達が警察署に到着する少し前――
「大家さんが来られました」
「これはどうも、若杉と申します」
「はあ、ご丁寧に……それにしても長谷川さんが殺人犯ですか、人当たりのいい方なんですけどねえ」
「どんな人かお伺いしても?」
若杉は昨日、犯人と思われる長谷川の家へ彼の上司と共に自宅へ向かったところ在宅しておらず、大家に開けてもらおうと尋ねたが留守だったため本日に改めて来訪したというわけだ。
容疑者:長谷川 吉雄(29)
大家に話を聞いてもやはり長谷川の上司と同じく『人当たり』が良く、『真面目』で『正義感』がある青年だとのこと。
これだけを聞くと殺人事件の容疑者に成り得るのか、という疑問が沸いてくるが、むしろ『そういう人間』こそ一度壊れてしまうと取り返しのつかない行動を起こすようになるのだと、若杉は笑顔で話を聞きながら胸中で考える。
そこで同席している長谷川の上司が口を開く。
「無断欠勤もしたことが無かったんですがね……それが急に会社に来なくなって容疑者とは、私は未だに信じられません」
「しかし、行方が分からないのは事実で、現場付近で目撃した人がこの名刺を拾った。まずは長谷川さんの身柄を確保しない限り疑いは晴れないでしょう」
「では、部屋を開けましょう。引きこもっているだけかもしれませんし……」
重い腰を上げる大家を見ながら、若杉は小さくため息を吐く。
「(ここまで状況が揃っていて、期待をするのは発覚した後に辛いものなんだけどな。それにしても、真面目でキャバクラには通っていた素振りも無いらしいのにどうして狙うんだ……?)」
若杉は大家と上司の後をついていきながら考察をするが、やはり当事者から話を聞く以外に確かなことは分からないかとマンションへ向かう。
「では……」
「お願いします」
大家はまだ躊躇していたが、若杉が見据えると鍵を差し込んでドアノブを回すとゆっくり扉が開き、若杉を先頭に中へと入っていく。
電気はついておらず、昼にも拘わらず真っ暗ななのはカーテンが閉め切られているからかと部屋の奥へ進む。
間取りは平均的なワンルームで、玄関すぐ右にキッチン、左に水回りというもので三歩程度の通路先の扉を開くとそこには――
「……これは!」
「なにかありま……う!?」
中に入った若杉が息を飲んで呟くと、すぐ後ろに居た上司が肩越しに覗き込み腰を抜かす。
それもそのはずで、部屋の壁にびっしりと女性の写真が貼られていて、床の絨毯には血が乾いた後のようなドス黒い染みがあった。
「……まさか!?」
ベッドはもぬけの殻で、若杉は即座に手袋をしてクローゼットを開けると折りたたまれた女性の遺体があった。
「う……」
大家が口を抑え慌てて外に出る中、若杉はすぐに携帯を取り出すと、話をする。
「僕だ、例の容疑者のところで大変なものを見つけた。ああ、構わない繁華街の店に写真と名前を回してくれ、それと長谷川のマンションに鑑識を頼む。神緒君達はどうだ? ……そうか、羽須さんもだな? とりあえず気を付けてくれ、ヤツの標的らしき写真に彼女のものがあった、僕達と一緒だったから運が良かったな――」
若杉は宇田川に連絡しながら壁に貼られている写真に険しい目を向けて指示を出す。
「(さて、問題は長谷川本人がどこに居るか、だ。写真は全て女性でしかも派手な服装ばかり。やはり水商売の女性をターゲットに? 羽須さんは顔を見られたから、というのは理解できるけど。……ん?)」
そこで若杉は一枚だけ派手な格好をしていない女性の写真が落ちていることに気づく。
「これは……」
「そりゃ長谷川の彼女ですな、社のバーベキューの集まりで連れて来ていましたよ」
「彼女か」
なにか不自然な感じがする、と思いつつ若杉は警察関係者が集まるのを待っていると、やがて外が騒がしくなり若杉は上司を連れて部屋を出る。
「さて、寝床は抑えたし、写真である程度動きは封じれるか?」
そう呟いて同僚たちと合流するのだった。
◆ ◇ ◆
――一方そのころ
「すみませんご足労いただいて」
「いえいえ、構いませんよ! 怜ちゃんからお誘いがあればいつでも来ます♪」
「おい、美月なんで俺はここに居るんだ?」
「え、そりゃあ私の旦那様だからですよ? それに、電話をもらった時の話、私達なら理解できると思いますよ敦司さん」
「ま、そりゃそうだが……」
「にゃーご」
「おう、慰めてくれんのか猫?」
怜の部屋に人を招き入れ話をしていた。
招かれているのは五条商事の親会社、二階堂グループの社長の一条 敦司と美月という夫妻で、八塚コーポレーションとは仲の良い企業である。
「それで話ってなに怜ちゃん?」
「その、お恥ずかしいのですが以前お二人は勇者と魔王と名乗る人達と会ったことがあると聞いて」
怜がそう言うと、夫妻は顔を見合わせた後正面に向きなおる。
「そうね、別に隠していないから知っている人は多いと思うけど、だいたい冗談だと言われるんです。どうしてその話を今?」
「……それが、実は同級生の男の子が前世が勇者だって言うことが分かり、今起こっている事件にその前世の世界からの侵入者が来ているんです。人が誘拐されたり死んだり……だから、協力者は多い方がいいと思って……」
そして夫妻に話をする怜。
彼らの反応はというと――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる