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迫る脅威
しおりを挟む「修、時間だ起きてくれ」
「んあ……おお、もうそんな時間か……サンキュー霧夜。宇田川さんは?」
「報告書を取ってくるってさ」
スマホを見ると時刻は二十二時。
武道場のど真ん中に簡易寝台を設置してもらい、交代で仮眠を取っていたが俺で最後。ここからは徹夜に向けて活動をしなければならない。
今までの経緯を考えると夜、それも深夜に犯行が行われているため、寝ている間に襲撃されるのはとてもマズイ。
ただの殺人犯であれば警察署内に踏み込んでくることはないと思うけど、向こうの世界の住人や魔族なら関係ないからな……。
「神緒君、お夜食ですよー」
「サンキュー、先に飲み物を貰えるか?」
「仕方ありませんねえ」
「仕方ないって……いいです、私が渡しますから!」
フィオがペットボトルの水を俺に手渡してくれ、一気に半分くらいを飲み干して一息つく。
なんかよく分からないけどフィオが羽須に対して不機嫌な態度をとっているような? 俺は小声で霧夜に尋ねてみる。
「おい霧夜、あの二人なんかあったのか?」
「あー、そのキャバ嬢殺人の犯人が『向こう』の人間で、あいつを狙っているって話をしたら鼻で笑ったんだよ。自分がみたのは間違いなくサラリーマンだったとかで、口論になったんだ」
「なるほどな、まあ感覚的には羽須は間違っていないからなあ。おーいフィオ、あまり構うな」
「はーい……」
「あははは、わたしの勝ちですね! ……痛い!?」
「お前はもうちょっと行動について自覚したほうがいいぞ。向こう側が関係なくてもサラリーマンが狙っている可能性は高いんだからな」
俺がそういうと羽須は弁当を俺に渡しながら肩を竦めて口元に笑みを浮かべて俺に言う。
「フッ、だとしてもすでに名刺は渡して容疑者は絞られ、警察署内なら安全は確保されています。びびることはありませんよね?」
「ははは、アホだな。お前がここに居るから家族に魔の手が迫るかもしれないし、名刺の男は本当にただの興奮した酔っ払いだったら容疑者から外れるんだぞ? そうしたら正体不明の男が犯人になる……そうしたら捜査は振り出し、羽須はびくびくしながら生活を余儀なくされる……」
「いやああああああああ! なんとか……なんとかしてくださいぃぃぃぃぃ! 両親だけはどうか!」
状況を認識した羽須は崩れ落ちて俺の足を掴み泣き叫ぶ。少し脅かしすぎたが、まあ調子に乗っているのは諫めておいた方がいいからな。
通常の人間が犯人なら羽須が色々な意味で警察のお世話になっているから自宅に手は出しにくいと考えるだろう。俺達が知らないだけで保護されている可能性があるからな。
なので注意すべきは通常の人間じゃなかった場合だ、そうなると俺達が――
「……!? シュウ兄ちゃん!」
「これは……!」
「あひぃん!? 真っ暗になったぁぁぁぁ」
「うるさいですよ! シュウ兄ちゃんから離れなさい!」
「にゃぉぉぉ……」
急にフッとすべての電灯が消えて非常灯の緑色だけが残り、エリクとフィオ、そして霧夜が俺の居る場所へと集まってくる。ドラマとかでもそうだけど、なぜ非常灯は消えないのだろうか?
どうでもいいことを考えながらそれぞれ木刀を持ち、エリクは杖を握って周囲に気を張り視線を動かしていく。
「……まさかこっちに来るとはな、警察署に入るのは難しくないけどここは関係者以外立ち入れない……ということは」
「向こうの人間か魔族ってところでしょうね。エリクか私がブランダさんのフォローに行きましょうか?」
「そうだな、医療関係者も居るだろうしエリクお願い――」
「いやあああ怖いぃぃぃ!?」
「あ、馬鹿!?」
俺の足に掴まっていた羽須が立ち上がり、ベッドへ向かって駆け出し慌てる俺達。毛布でも被ってやり過ごそうとしたのか!? そう思った瞬間、闇の中で羽須に襲い掛かる影が見えたので俺は木刀を投げつけ、スリートに指示を出した。
「羽須、伏せろ! スリート、羽須を守れ! どぉぉりゃぁぁぁぁ!!」
「え!? ちょ!? ぶべら!?」
「にゃぁぁぁぁぁあ!!」
『む……!? ぐあ!?』
手ごたえあり!
俺はスリートが飛び掛かるのと同時に踏み込んでいて、乾いた音を立てて落ちた木刀を拾い、羽須を庇うように間に立つ。
「いいぞスリート! フィオ、エリク囲め! 霧夜は警察署に行って宇田川さん達に応援を頼む!」
「よ、よし!」
素早く配置についた二人と、出口へ向かう霧夜を見て俺はとりあえずこれで少し安心かと思いながら影に木刀を振りかぶる。
「せいっ!」
『チッ……子供だけになったところを襲ったつもりだが、存外やるな……』
「何者だ? 向こう側のヤツってことでいいか?」
俺の一閃を軽く避けたので追撃せず、構えたまま質問すると影はゆっくりと立ち上がって口を開く。
『なるほど、勇者というのはお前のことか? 魔王様から聞いているぞ』
「ということは魔族か、<灯>」
「あ!」
魔法で周囲を照らすとそこに立っていたのは赤い目をした……サラリーマンだった。
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