現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

文字の大きさ
91 / 115

捜索は続くよいつまでも

しおりを挟む

 「へえ、アパートとマンション経営で生活しているんだ」
 「ああ、二年前に親父が亡くなって引き継いでからなんとかやってこれているよ。で、この島はエルフみたいな亜人が他にいるんだけど、それぞれ守護精霊がいてな、エルフ達は猫なんだ」
 「ああ、だから猫を引き取っているんだ? お、このトマト甘くて美味いな……」
 「でもワンちゃんはどうしてなんだろう?」

 お昼を頂きながら住孝さん達の事情を聞いていると、真理愛が首を傾げる。すると、どこかで話を聞いていたかのように今度は巨大な柴犬がのそりと現れた。

 <……犬はドワーフの守護精霊でな、俺がそうだ>
 「おおきい~!! あ、子供達と遊んでいるんだね」
 <勝手に乗ってくるのだ>
 「ふかふかだよ、お姉ちゃんも乗ってみる?」
 「うんうん!」
 <ふう……>

 柴犬がため息を吐くと、シュネがやってきて口を開く。

 <あら、ヤマト巡回?>
 <うむ。少しいつもと違う気配がしたので村へ入らせてもらった>
 「分かるのか?」
 <まあ、この島の結界は我等精霊が張っているからな。スミタカの友人か?>
 「今日初めて会ったからまだ友人じゃないかな」
 「わーい、修ちゃん、このまま眠れそうなくらいふかふかしているよー」
 <こら、寝るんじゃない……>

 妙に威圧感のある柴犬だけど、真理愛にかかれば形無しだ。そこで住孝さんが口を開いた。

 「ま、その猫みたいに喋る猫が居たらまた連絡するよ」
 「ですね。この世界に来ていたら本当に分からなかったし、助かりましたよ」
 <早く平和に暮らしたいよ俺は>
 <アースドラゴン猫はのんびりしているなあ。どちらにせよ、後二人まできたから意外とこの前の聖剣掲げは役に立ったのかもしれませんなあ>

 スリートが期待を込めて前足で俺の膝を叩きながらそんなことを言うが、数が減れば減るほど見つけにくくなるのは世の常であるため楽観はできない。
 
 「ふう……食った食った……お昼までごちそうになるとは申し訳ない。俺達、といっても息子の修だが、あいつは警察ともつながりがある。困ったことがあったら尋ねてみるといい」
 「ふえー、警察ですか」
 「うん、部活なんだけど部室に警察の人が常駐しててね、学校の交番って感じかな?」
 「学校の怪談みたいな言い方だな……」

 住孝さんが呆れ笑いをしながらそう言うと、親父が立ち上がって俺達に言う。

 「それじゃ目的は終わったし、他にドラゴン猫は居ないようだったら戻るか」
 「そうだな。真理愛、帰るぞ」
 「う、うーん……私ここに住むぅ……」
 「あら、真理愛ちゃんおねむですか? よっぽど動物が好きなんですね」
 「ずっと猫を抱いているものね」

 ネーラさんや真弓さんが真理愛に暖かい眼差しを向けるが、流石にここで寝られたら迎えに来るのも大変だし明日は学校だと柴犬……精霊のヤマトに伏せてもらい真理愛を降ろす。

 <ぬう、待て待て、娘は毛を掴んでいるぞ>
 「あ、悪い!? ……ちょっと抜けた」
 <ひゅーん……>
 <どうせすぐ生えるからいいわよ。また来てよね、それだけ喜んでもらえるならこっちも嬉しいし、他の亜人にも紹介したいわ>
 「ああ、そうさせてもらうよ。親父、行こうか」
 「そうだな。住孝君、世話になった。今度改めてお礼に来させてもらうよ」
 「大丈夫ですよ気を遣わないでください。それじゃ、帰りましょうか。コテツ、キサラギは真弓と一緒に待っていてくれ」
 <また来る>
 「お前ここ気に入ってるんだな……」

 というわけで俺達はまさかの異世界でアースドラゴン猫を発見し、残り二匹になった。
 母ちゃんの話では俺達の町に固まっているはずだから、放課後と休日は猫探しになりそうだ。向こう側の奴らはまだすぐには来れないはずなので出来るだけ早くことを進めるべきなのだが――


 ◆ ◇ ◆

 【魔族の反応が消えた、か。勇者は力を取り戻しつつあるな】
 【魔王様、どうされますか? 人間の国王もそれほど役に立つとは思えませんが……】
 【我々はこの世界が手に入れば特に気にすることもないし、人間と協調しても構わんと思っている】
 【は……下々の者は納得しますでしょうか?】
 【私は魔王だよ、納得してもらうに決まっている。が、問題はある】
 【女神ですな】

 魔王がゆっくりと頷き、続ける。

 【勇者がカイザードラゴンに殺された時も助けなかったようだし、なにを考えているかわからんのがな。……こちら側に勇者たちを引き込んで様子を見てみるか……?】
 【ふむ……しかし奴らがなにをしているか分かりますかね】
 【勇者の波長は分かっている。国王には知らせず、魔族だけを送るぞ。そうだな、あの二人でいいだろう】
 【ではすぐにでも……】

 即決したことにすぐ対応できる部下を見て満足気に微笑み、魔王はグラスを傾ける。

 【さて、どうでる? 聖剣の女神よ】
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...