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全ての決着へ
しおりを挟む「ふええ、登山なんてか弱い私にはできないよー」
「ロープウェイの窓に張り付いてなにを言っているんだ結愛は……」
「えへへー。お父さん、荷物はそれだけ?」
山へと向かう俺達家族は今、ロープウェイで山頂を目指している。
動きやすい服装で食料やサバイバルグッズなどを各々カバンに詰めて持ってきたが、母ちゃんは杖を背負っている。
車で来たので人の目は気にならなかったが。
「ああ、剣はあるんだが、念のため若杉さんに持って行ってもらっているんだ。銃刀法的にあまりよろしくないって言われちゃったからな」
「あー」
結愛が納得した顔で手を打つと、今度は足もとの猫達が口を開く。
<世知辛いよな人間の世界は>
<まあこれで一応向こうに戻れるし……>
<私は結愛の家で暮らしても良かったわよ? できればこっちに帰りたいんだけど>
<それは選択でいいのではないか?>
<すまない、ちゃんとキャットフードは持ってきてくれたか?」
<結愛様、わたくしめを膝に置いていただけないでしょうか!?>
うるさいことこの上ない。
しかし、こいつらも重要なファクターの一つなので、前日は丁寧にブラッシングをしてやった。
<それにしても向こうに帰れるの?>
「どうかしら? そういうのが得意な人を呼んでいるみたいだけど……」
<ぐぬ……>
ウォータードラゴンのフレーメンがウィンドドラゴンのブリーズの妨害のため結愛の膝に乗ってそんなことを言う。
「まあ、仁さんが期待してくれと言っていたんだ着いてからわかるさ」
「そうね、おトイレは先に済ますのよ」
「まあ、うん……そうだな……真理愛、そろそろ着くぞ」
「あ、うん」
母ちゃんの緊張感がない言葉を聞きながら、ロープウェイは山頂へと到着する。
ただ、一緒に着いて来た真理愛の顔色はよくないのが心配だ。
帰ってくる予定ではあるが、帰りは若杉さんと本庄先生に真理愛をお願いしたいところである。
「シュウ兄ちゃん先に降りるぜ」
「真理愛さん、大丈夫ですか……?」
「うん、ありがとうフィオちゃん。……ちゃんと帰って来てね」
「ああ」
「ひゅう、兄ちゃんラブコメの主人公みたい!」
「勇者だしそうなんじゃない?」
「ひゅう、母ちゃん無責任! っと、ちょっと寒いわね」
変なテンションの結愛が先に降り、俺は真理愛の手を取って最後に降りる。心配で元気が無いだけならいいんだけどな。
「来たか」
「仁さん、久しぶり。若杉さんに宇田川さんも」
「ああ、いよいよだね。なんだかんだとこの一か月弱、色々あったから感慨深いよ」
「うう……お、俺も一緒に行ったらダメですかね、若杉さん!?」
「うん、ダメだね」
「史樹、ごめんなさい……私は戻らなくては……」
「うう……」
史樹は宇田川さんの名前である。
というかガチで好きなのが伝わってくるよ宇田川さん……うーん、ブランダ次第だけど、こっちに戻ってもいい気がするな。猫達と同じく選択制でさ。本庄先生は……いないようだ。
そこへ霧夜と八塚も姿を現す。
「よう、来たか修」
「おう、霧夜か。見送りご苦労」
「なんで尊大な態度なんだよ!? ……ま、気を付けてな」
「俺は勇者だからな、いけるって。な、スメラギ」
八塚に抱っこされているスメラギに声をかけると頷きながら得意気に言う。
<うむ。元の姿に戻れば聖剣とドラゴンが手に入るからな。む、真理愛は体調が悪いのか?>
「え? ううん、そんなことないよ?」
<そうか?>
「さ、それじゃ『扉』の開く場所に行くわよ! アサギさんはすでに準備できているから」
「アサギさん?」
「……俺の嫁だ」
仁さんが照れくさそうにしながら前に出て先導してくれる。
寡黙で真面目そうな仁さんなら優しそうな女性を奥さんにしてそうだな……
そう思っていた三分ほど前の俺を引っぱたいてやりたい。
「あー来た来た! 仁ー! こっちよ! うわ、いっぱい来たわねー。猫まみれじゃない」
めちゃくちゃ明るい『角』の生えた女性が手を振って大声で叫んでいた。
「初めまして、神緒水守と言います」
「刃鋼だ」
「はーい、盾神アサギです! 魔王をやってました! 勇者の嫁でーす!」
「はあ?」
「お、おい、余計なことを言わなくていい……優麻、尻を叩いてやれ」
「オッケー」
「痛い!? もうなにするのよ娘ちゃんは……とりあえずこれで全員? 君が別世界の勇者の修君ね?」
捲し立てるようにペラペラと喋る存在は羽須を思い出す。
「今日はよろしくお願いします。行くのは俺達家族とこの三人。それと猫ですね」
「オッケーよ。……ぐるっと回った感じ確かにここは魔力が濃いわね。そっちの世界とわたし達の世界が同じ魔力とは限らないけど、期待できる感じだわ」
「それは良かったわ。それじゃ時間が惜しいし、早速始めて貰えますか?」
俺は真理愛を放してフィオとエリクを引き寄せる。
「修ちゃん……」
「大丈夫だ、帰ってくるまで元気でいろよ! 霧夜、任せる」
「おう!」
「……」
霧夜と拳を合わせて鼓舞していると、八塚が大人しいことに気づき目を向けると――
「八塚?」
「ん? どうしたの?」
「いや、今笑ってなかったか?」
「気のせいじゃない?」
どうだったか、なんとなく薄ら笑いを浮かべていたような気がするんだが……
だが、俺の心配をよそに準備は進んでいく。
「それじゃ媒介になる猫ちゃんは修君達を囲んで」
<合点承知!>
「凄い光景ね……ふふ、でも可愛い」
ブランダが儚げな笑みを浮かべて囲む猫達を見てそんなことを言い、仁さんと娘さんがそれぞれ左右に位置する。
「それじゃ、優麻、仁も手伝って」
「ああ」
「はーい!」
「行くわよ……はあああ……」
「お……!」
アサギさんが片手を俺達に、もう片方を社に向ける。
どういう原理か分からないけど、魔力が集中し社側の空間が歪むのが見え、それはだんだんと広がっていく。
「ひ……」
「開いた……!」
<この空気、確かに我等の世界に通じているな……!>
「急いで、この穴はそんなに持たないわ。こうしている間にもあなた達の魔力は減っているの」
「向こうがわは大丈夫だと思いますか?」
「……分からないわ、いきなり海の上ってことはないと思うけど」
アサギさんはさっきまでのノリと違い真剣な顔でハッキリという。
自分の世界と違うのでそこまでは分からないのだとか。
「ま、最悪空を飛べるし、入ったらすぐ聖剣を抜くぞ」
<承知した>
「行くぞ――」
と、俺達が前に足を踏み出した瞬間、俺達の目の前に人影が立ちふさがった!
「修ちゃん!? ど、どうしたの怜ちゃん、危ないよ!」
『く……くく……あはは、ようやくここまで来れたわね』
「なにをしているんだ八塚!?」
『なにを、とはご挨拶ね修君? 大丈夫、向こうへ戻るだけだから』
「お前……記憶が? カレン、なのか?」
「怜さんどうしちゃったの……?」
喉が渇く。
カレンだと言ったが、あいつはあんな顔をする奴じゃない。もっと柔らかな……そう、真理愛のような性格をしていた。
すると八塚は笑顔で後ずさりをしながら『扉』へ向かう。
「よせ……!」
『聖女は手に入れたし、後は聖剣のみ。スメラギ、おいで』
<……お前は何者だ? お嬢はそんな顔をする女ではないぞ>
『あら、ご挨拶ね。私は八塚怜……聖女の生まれ変わり……じゃあないけどね? 私の名は『ハーテュリア』……元の世界では聖剣の女神って呼ばれていたわね』
「な!?」
薄く笑って挑発するように口を開く八塚は……まさかの言葉を口にする。
ど、どういうことなんだ……!?」
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