現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

文字の大きさ
104 / 115

悪女ハーテュリア

しおりを挟む

 <ぐぬ、吸い込まれる――>
 「だ、大丈夫なの兄ちゃん!?」
 「知るか、しっかり掴まってろ! ……霧夜、無事で居ろよ」

 『向こう側』へ行く扉を潜った瞬間、真っ暗な空間を突き進む。背後で結愛が不安げな声で叫ぶ。だが、今は背に乗るみんなより霧夜だ。
 スメラギが飛んでいるようで、実は吸い込まれているという状況に不安はあるが、霧夜も『向こう側』へ出ることが確定しているなら少しはマシかと目を細める。

 「……まさか聖剣の女神が暗躍していたとはね」
 「俺達の出会いがあったのは嬉しいが、仕組まれていたのは納得いかないな」
 <向こうへ着いたらどうするのだ?>
 「まずは国王ゴーデンに会う。女神の目的はあの国みたいだからな」
 <出るぞ――>

 スメラギがそう言った瞬間、俺達の前に光のトンネルが現れ『向こう側へ』着いた。


 ◆ ◇ ◆

 「怜ちゃん、どうして……」
 『八塚怜は仮の姿、私は聖剣の女神ハーテュリアよ。ふふ、記憶を取り戻すことなく利用できて助かったわ真理愛』
 「てめぇ、ずっと俺達を騙していたんだな!」
 『チッ、うるさい人間ね。離しなさい!』
 「う、うお……!?」
 「坂家君!? 止めて怜ちゃん! も、もし彼を落とすなら、わ、わたしも落ちちゃうから!!」

 真理愛はハーテュリアの腕を振りほどこうとして暴れ出す。
 
 『こら、止めなさい……! 一先ず降りるとしましょうか』
 「ホッ……」

 埒があかないと近くの森に降り立ち霧夜と真理愛は地に足をつける。
 
 「た、助かった……」
 「なんでこんなことをするの? 修ちゃんに酷いことをして!」
 『うるさいわね……現地でやろうと思ったけど、もういいかしら……』
 「え? ……う」
 「おい、興津になにをしたんだ!?」
 
 ハーテュリアが目を合わせると、真理愛は糸が切れた操り人形のように崩れ落ち、それを霧夜が支える。
 
 『うるさいから眠ってもらっただけよ。後は、このまま聖女の力を使うための操り人形にするだけね。……いいことしちゃう? あなたの好きなおっぱい、大きいわよ?』
 「ふざけんな! 俺は本庄先生一択だ!」
 『もう取られたじゃない』
 「うるさいな……!? というか八塚、お前そんなやつだったんだな……騙されていたぜ……」
 『ふん、騙したとは人聞きの悪いことを言うわね。最初からこういう性格だと思ったけどね? まあ聖女の生まれ変わりっての嘘だけど。さ、真理愛を渡しなさい』
 「馬鹿言うな、こいつが必要なんだろ? このまま逃げて――」
 『馬鹿は救えないわよ?』
 「がっ……!?」

 真理愛を抱え、踵を返して逃げようとした霧夜の脇腹に鋭い痛みが走り、膝をつく。振り返ると、ハーテュリアが面白く無さそうに目を細めて口を開いた。

 『女神の私から逃れられるとでも? ……同級生のよしみで連れて行こうかと思ったけど気が変わった。真理愛は連れて行くけど、あなたはここに捨てていくわ』
 「ま、待て……! 興津を置いて、いけ……!」
 『運が良ければまた会いましょうね、坂家君♪』
 「う、まずい……しゅ、修……すまねえ……」

 飛び去ったハーテュリアを追い、しばらく張っていたがやがて力尽き意識を閉じる霧夜。
 そこへ――

 「グルルル……」
 「グァァァ……」

 血の匂いに引き寄せられた魔物が姿を現す。
 獲物を品定めするように匂いを嗅ぎ、これはいけると思った魔物が大きく口を開けると――

 「たぁ!」
 「えい!! あっちいきなさい!」
 「ギャン!?」
 「ヒューン……!」

 あわや、というところで男女の剣士に霧夜が助けられた。

 「ふう、たまたま通りかかったけどあわやってところだったわね。……兄さん、この人ケガを」
 「ああ、あわやというところだったな。とりあえずポーションを使って、後は村へ連れて行こう」
 「そうね、私達がお世話になっている村へ連れて行きましょう! あら、結構……」
 「どうしたリズ、行くぞ」
 「う、うん!」

 異世界で捨てられ、そして異世界人に拾われた霧夜の運命や、如何に――
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...