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プリメラの秘密

場を乱す者

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 裸の女性の服を返してもらえるように要求しながら一歩前へ出る僕に対して、男女に動揺が見られる。大男は悶絶しているのでしばらくは動けないだろう。

「さ、早くしてくれるかい?」
「ふ、ふざけるな……! 俺達はパーティだ、勝手なことを――」
「解消、します……! パーティ、辞めますから……!」
「あんた、生意気なことを!」
「いいから早く返しなさいよ!」
「うるさ……。あ!?」

 気が強いという話であればプリメラに勝てる人間はなかなか居ないだろう。そして裸の女性もパーティを抜けると宣言したので、まだ返さないというのであれば力づくしかないか。

「ん? この気配は――」

 そう思っていると、女性が尻もちを搗くのが見え、背後で嫌な気配がした。
 僕は即座に振り返りプリメラ達の居る場所へ駆け出すと彼女達の背後にひときわ大きなゴブリンが居て手を伸ばしていた。

「なんだこい――」
「グガァァァァァオ!!」

 大きなゴブリンの前に立ちはだかってプリメラ達を守る。
 つもりだったんだけどバランスが悪い状態で着地したところを巨大ゴブリンの腕で振り払われた僕は大きく吹き飛ばされた。

「ディン!?」
「あああああ……!? え、は、弾いた!?」
「グガ……?」
「っと。なんだいこのでっかいのは」

 僕は空中で回転してぶつかりそうになった木を足場にして前を見据えると、巨大ゴブリンがプリメラ達に手を伸ばしているところだった。
 だけど殴られた瞬間に二人へ防御魔法をかけておいたので、手は鈍い音と共に弾かれていた。

「こいつはゴブリンオーガ!? な、なんでこんなやつが!?」
「ごほ……ま、マジかよ……」

 どうやらゴブリンだけど別の種類の魔物らしい。腹を殴った男がよろめきながら立ち上がりながら二人と合流する。

「ゴガァァァァ!!」
「きゃああ!? ちょ、ディンなんとかならない!?」

 防御魔法にかかる負荷を見るにプリメラの魔法じゃ倒せないと判断した僕は地上に降りるとそのままゴブリンオーガとかいう魔物に殴りかかる。

「それ」
「なにやってんだあの馬鹿ガキ、死んだぜ……!?」

 男が僕の行動を見て驚愕の声を上げる。あの人間達の感じだと、この魔物はかなり強力な個体のようだ。
 だけどさっき殴られた時にだいたいの強さを把握していて、僕であれば特に脅威となるような敵じゃない。

「グゲォエ!?」
「やったわ! でもどうして魔法じゃないの?」
「僕が本気で撃ったら防御魔法があってもプリメラ達が死んじゃうからね」
「そ、そう……」
「あなた達、何者なんですか……?」
「まあまあ、もうちょっと待っていてよ」

 手ごたえがあったけどゴブリンオーガの戦意は失われていない。それでも僕が拳を叩きつけた右腕はすでに折れているようで持ち上がることはなかった。

「い、一撃で腕を……!?馬鹿な!?」
「グルゥ……!」
「どっから出したんだいそれ」

 ゴブリンオーガが残った左腕で巨大な棘付き棍棒を取りだして威嚇してくる。腰巻の中に入れていたのだろうか?

「残念だけどこの距離なら魔法でいいからね? <大火の渦フレイムファング>」
「……!? 上級、魔法」
「ガァァァァ!?」

 裸の女性が息を飲む声が聞こえ、こちらへ突っ込んできていたゴブリンオーガの右半分が大火の渦フレイムファングで消えてしまい倒れこむ。

「な、んだ……あのガキ……」
「強すぎる……」

「なんだ今の爆発音は!?」
「お、おい、ありゃあゴブリンオーガだ!?」

 今の一撃で大きな爆発音が起こり、近くに居たらしい人間達が集まってきた。
 そこで先の三人が後ずさりをしながらこの場を立ち去ろうとする。

「チッ……ずらかるぞ」
「しばらく身を隠さないとダメかしらね」
「く、くそ……あの小僧に痛い目を、と言いたいところだが俺じゃ勝てそうにねえ……」
「あ、待ちなさいあんた達! この子の服を返しなさい!!」

 プリメラが防御魔法から外に出て追いかけようとするが、慌てた三人組が駆け出す。

「知るか! クソガキどもが、覚えていろよ」
「ディン、追うわよ! <フレイム――>」
「だ、だめです! 冒険者に魔法を撃ったと分かったらギルドからペナルティがありますよ……!?」
「くっ……」
「それにまだゴブリンオーガが生きているから、無理だよ」
「しつこいわね……!」
「グ、ウウウウ……」

 よろけながらもこちらへ近づいてくるゴブリンオーガ。視線は攻撃した僕ではなくプリメラ。狙いは女の子というところだろうか?

「おい、坊主手伝うぞ!」
「いえ、大丈夫ですよ。悪いけど死んでもらう」
「ガゴオオオ!」

 遠巻きに見ていた冒険者に手で問題ないことを告げ、僕はトドメを刺すため背負っていた杖を手にして踏み込んでいく。
 対するゴブリンオーガも標的が近づいてきたと血を吐きながら棍棒を振り上げた。 
 まだそんな力があるとは驚いた。けど、動きは鈍い。
 棍棒をすり抜けて僕は杖をゴブリンオーガの首へ横から叩きつけた。

「ギェ……」
「う、うわ……!? 首が変な方向に曲がった……」
「なんて力だ……」

 一撃。
 とんでもなく硬い鉱石でできているというじいちゃんの杖で殴ったところ、ゴブリンオーガの首が折れて絶命。事なきを得た。

「ふう、ちょっとタフだったかな」
「ゴブリンオーガを杖で……」
「まあディンならやるわね」
「あなた達は一体……」

 裸の女性にプリメラがローブを着せながら肩を竦めていた。
 それから集まってきた冒険者達に説明をすることになり、ひとまずゴブリン討伐は終了となった。
 逃がした三人組はどうせ町に戻っているし、ギルドに話をすればいいだろう。証人は裸の女性であるリオルさんがいるからね。

「あいつらに痛い目を合わせられなかったのが悔しいわね」
「機会はあるさ。とりあえず戻ろう」
「ぶ、物騒なカップル……」

 僕達のやりとりを聞いてリオルさんが呆れた声を出していた。
 これでギルドへ戻ってからプリメラの両親の話を聞ける、と思っていたんだけど――
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