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プリメラの秘密
逃げた冒険者達
しおりを挟む「久しぶりに大物だな……」
「そんなに凄いんですか、これ」
「ゴブリンオーガをこれ呼ばわりとは、すげぇな坊主」
「俺達が倒すところを見てたが、凄かったぞ。Cランクなんだがそれ以上だ」
町へ戻ってゴブリン達を討伐した報告を行っていると、ゴブリンオーガを解体職人という人間に引き渡してくれと言われたので持ってきた。
何故か町まで連れて帰ってくれた冒険者達も何人かついてきていたりする。解体職人さんとは知り合いらしい。
「Cランク……Bに近い強さならギリギリ倒せるかどうかって感じだから妥当といえばそうなのか?」
「いや、ほぼ一撃だ。Aランクはあるって」
「マジか……?」
「まあまあ、僕のことはいいですから。後はなにをすればいいんです?」
「ドライだな坊主……。解体して報酬の査定をするんだ、少し待っていてくれ」
「わかりました」
うーん、時間がかかりそうかな?
プリメラはリオルさんの付き添いとジェイドさんを呼びに行っているからしばらく待つことになりそうだ。
冒険者達に上げても良かったんだけどプリメラがお金はきちんと受け取れと言っていたから仕方ない。
「リオルさんはこれからどうするんだろう? 逃げた冒険者達が帰ってきたら同じことにならないかな」
「嬢ちゃんの心配か? ザイクの奴等は流石に戻って来れねえと思うぜ。今までは尻尾を掴めなかったが、あの嬢ちゃんにした仕打ちが報告されたら帰ってきて即投獄だ」
「なるほど。というか尻尾のある人間が居るんですか?」
「例えだよ!?」
なんだ、尻尾を掴むというからそういう人間が居るのかと思った。どうやら隠れて悪事を働いている人間がボロを出した時に使う言葉らしい。
町に戻って来て捕まるなら大丈夫かな?
◆ ◇ ◆
「申し訳ございませんリオルさん。彼等のパーティが怪しいのは分かっていたのですが、証拠を掴むまでに至らず危ない目に遭わせてしまいました」
「い、いえ……。あの人達はどうなりますか……?」
「犯罪手配を出しますから、少なくとも王都に戻ってくれば投獄されることになります」
「そう、ですか……」
少しだけホッとした様子を見せるリオルさんを見て、助かって良かったと私は思う。
ギルドも警戒はしていたみたいだけど追跡を出した時はそういった動きは見せなかったそう。妙な勘というか、自覚のある悪意だったってことみたいね。
ひとまずリオルさんは無事だったけど、まだ捕まっている訳ではない。だから『少しだけ』安堵しているのだ。
例えば町の外で見つかった場合、あいつらに捕まって酷い目に遭わされる可能性が残っているからね。
「それでは、お気をつけて」
「補償とかは無いのね」
「あくまでもパーティ内トラブルですから。犯罪者には対応しますが、そのパーティに加入したのはあくまでもその人が選んだことなので」
と、私とディンにゴブリン討伐の依頼をしてきた受付の女性は語る。
あの時点で私達がリオルさんを追いかけると分かっていたから近くのスポットを案内したとも話していた。
「ま、そういうことなら仕方ないか。リオルさんはそれでいい?」
「え、ええ……。唆されたわたしが悪いので……」
「はいはい、辛気臭い顔をしない!」
「ひゃん!?」
「申し訳ありません、ありがとうございました。彼等はこちらで処理させていただきます」
落ち込むリオルさんの尻を叩いて受付を後にする。ゴブリン討伐の報酬はもらったけど、銀貨六枚だと上か下しか買えない。
ゴブリンオーガの報酬に期待したいけど、私の窮屈な上着は早く替えて上げたいものね。……きつそうだし、胸。
「とりあえずジェイドを見つけて服を買いに行きましょうか」
「ジェイド? ディンさんじゃなくて?」
「私達の仲間なの。ギルドで話を聞いているはずだけど……」
どこにいるかしらと周囲を見渡してみても姿が無い。荒くれ者たちに連れて行かれたかしら? そんなことを考えていると、
「あ、プリメラじゃないか。戻って来たんだ」
「わ、びっくりした! 居たんだ」
「ちょっとトイレに行ってた。……ええっと? ディンが居なくて知らない女の子がいるんだけど……」
「説明するわね――」
「は、初めまして……」
とりあえずお金を借りる前に事情よね。とりあえずお互いを紹介しましょうか。
◆ ◇ ◆
「くそ……もう手が回った!」
「あのガキと嬢ちゃん、それとリオルだけなら帰りに潰せたのに……ツイてないわね……」
「どうする? 王都にはもう入れない」
先に馬車で戻ってきた三人はあの場を逃げた後、ディン達を始末しようと後をつけていた。
しかし集まってきた冒険者が三人を連れて町へ戻ったため襲撃のチャンスを失っていたのだ。
馬車を近くの森へ止め、変装してギルドへ行ったザイクはリオルとプリメラが受付で自分たちのことを話していることを聞いた。
ギルドも疑っていたことを知るとすぐに飛び出し、門番に手配が回る前に間一髪、王都を後にすることができた。
「今のうちに国境を越えればやり過ごせる。すぐに出るぞ」
「ったく、あの陰気眼鏡をゴブリンの慰み者にできなかったのが悔しいわねえ」
「お前の性癖にも困ったもんだぜ……」
「あら、それで夜の相手をしてあげてんじゃない」
「俺にも残しておいてくれよなあ……」
三人は急いで森を移動し始める。
幸い、食料も水も載せているので隣の国まで行けばお咎めなしで済むと急ぐ。
しかし、ゴブリンオーガと遭遇した付近まで移動してきたところで――
「ふむ……私の放ったゴブリンオーガの気配が無い? まさか倒された?」
「うお!? どけ! 死にたいのか!?」
「んー?」
馬車で人を――
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