異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪

文字の大きさ
160 / 183
十章:夏那

257.火山は魔物も噴火も怖いわね

しおりを挟む
「よし、準備出来たわね!」
【オッケーでーす】

 二人で野営道具を片付けてからあたしはレスバに声をかける。彼女はソアラの首を撫でながら親指を立てて応えてくれた。
 そのままあたしと一緒に御者台へ乗り込むと、忘れ物が無いか周囲を見渡してから出発した。

「さて、と。いよいよか……」
【まあ、気負いすぎるのも良くないですし、気楽にいきましょう。一応、フレイムバードに遭遇した時の戦い方は話した通りで】
「うん、そうね」
【なあに沈んでいるんですか! 山なら大丈夫ですって! この前の一団と遭遇するとは限りませんしね!】
「能天気ねえ」

 休憩中、フレイムバードに遭遇したらどうするかという話をした。
 もし出会って、さらに戦闘になったらどうするのか? レスバ曰く、ソアラが居るため発見されて攻撃された場合逃げ切るのは難しいとのこと。
 そこで彼女が提案した策は『レスバが飛んで牽制する』というものだった。
 魔族の姿になれば飛ぶことは可能なので現実的な話だ。そしてその間にソアラとあたしは適当な岩陰に隠れるなどして、やり過ごそうという作戦である。
 しかし、レスバがフレイムバードの攻撃全てを受けることになる可能性が高いため大丈夫かと心配しているという訳。

【まあ、飛んで戦うのは当然レッサーデビル達より上ですし。なんとかなりますよ】
「頼むわよ? みんなと会った時、あんただけ死んじゃったとか言いたくないんだからね」
【うははは! リクさん達とはぐれてから心配性ですねえ。まあ、出くわさないのが一番なので、目の良いわたしが空を監視しておきますよ】
「オッケー。ソアラ、悪いけど頑張ってね」

 あたしの言葉でソアラは『任せてください』といった感じで力強く鳴いてくれた。
 ソアラ含めて女の子ばかりのパーティだけど、勇者に魔族の副幹部というタッグはまあまあ悪くないとは思う。
 それにあのハリヤーの孫だしねソアラ。
 
「……」
【……】

 そんな調子で火山を登っていくあたし達。
 空はレスバ、地上はあたしが警戒することで魔物の襲撃を防がなければならない。依頼の時と違ってここから町へはすぐに戻れない。あたし達の誰かが大怪我をすれば割と立ち行かなくなるのは明白だ。

「……あ」
【どうしました?】
「魔物の死体があるわ」

 しばらく進んだところで魔物の死体を見つけた。古くも無く、新しくもないといった感じの状態なので先発した一団がやったのかもしれない。
 
【同じルートを進んでいるっぽいですね】
「みたいね。他にも登山口があったけど、ここが一番登りやすそうだったから考えることは一緒って感じ」
【魔物を倒してくれていれば楽なんですけどねえ】

 一団が蹴散らしてくれれば直近の魔物達はこちらに近づかなくなるからだそう。確かにそれなら後発で同じルートの方が助かる気がする。

「空は?」
【平和なもの……と、言いたいところですけど、二、三羽ほどフレイムバードが飛んでいますねえ。今はまだ木々がありますが、もう少し登ると無くなりますからさらに警戒を強めないといけないかもしれません】
「なるほど」

 空を見上げると燃えるような鳥が羽ばたいているのが見える。獲物を探している感じはするけど、木々の間に居るあたし達は見えていないらしい。
 油断無いようさらに山を登る。ギルドマスターのドルブさん曰く、中腹あたりまで行けば向こう側への下山ルートがあるそうだ。

【ま、気長に行くしかありませんね。ソアラがバテたらおしまいです。それにだんだん暑くなってきましたから、水分と休憩はできそうなところでやっていきましょう】
「うん」

 緩やかとはいえ人二人と物資を運んでいるためソアラ一頭では可哀想に思えてくるわね……せめてハリソンが居れば楽なのに。
 後でソアラには美味しいものを食べてもらうとして、ひとまず木々が途切れる直前で一度休憩をすることにした。

「ふう、暑いわね……」
【飲み水が無くなったら魔法で出すしかありませんが、こう乾燥していると少なそうですねえ】
「無いよりはって思いましょ。ソアラ、お水」

 ソアラは『ありがとうございます』といった感じで鳴き、水を飲んでいく。一気に飲むと疲れやすいので少しずつにしてある。

【……さて、ここからが本番ですね】
「どうやっても一泊はしないといけないし、背にできる崖とか、ひさしみたいになっている場所を探さないとね。行こうか」

 休憩を挟んでさらに上へ。
 幸い魔物は出てこないし、死体もいくつかあるのでやっぱり先に行っている一団が倒してくれているらしい。
 どこへ行くのか知らないけど、このまま下山まで案内して欲しいものね。
 
 そして数時間。
 火山特有の臭いが強くなっていき、陽が傾き始める。今は十五時くらいかな? そろそろ今日の野営場所を決めようとしたところで、それは起きた。

【……あ、急降下していく?】
「なに? ……あ」

 上を見ていたレスバが冷静に実況をし、あたしも見上げると、フレイムバードが地表へ向かっていくのが見えた。

【もう少し先って感じですね。どうしますか】
「どうするって……」

 そう言われて困惑する。
 だけど、リクが居たらどうするか? もちろん彼なら助けに行く選択をするはずだと思う。

「行きましょうか。恩を売っておけば役に立つかもしれないし!」
【リクさんみたいなことを言い出しましたねえ。だけど、その案には賛成です。恩を売ってがっぽりいきましょう……!!】
「ソアラ、もう少し頑張って!」

 あたしの言葉にソアラが反応して速度を上げてくれた。位置的にこのまま道なりにいけば遭遇するはず。
 フレイムバードがこっちに来ないことを確認したあたし達は武器を手に飛び出せる準備をした。
 そして時間にして約五分弱が経った頃、あたし達は現場に到着した。

「チッ、矢をしっかり避けるな」
「構うな、避けられても撃ち続ければ縦横無尽には動けん!」
「つあ!」
「火の大精霊様に会う前に死ぬわけにはいかん。皆の者、頼むぞ!」

 そこにはドワーフの騎士や兵士がフレイムバードと戦いを繰り広げていた。炎をまとった羽を飛ばして来たり、口から小火球を放つなど鳥のくせに遠距離攻撃を得意としていた。
 こちらが怯んだら、急降下で直接攻撃をするという戦闘スタイルも侮れない。

【ほら、面倒でしょう?】
「レスバから話を聞いていたけど、複数体を相手にするのは面倒くさいわねえ。……よし、それじゃ行きますか!」
【ソアラはここに隠れていてくださいね】

 あたしは大剣を手に御者台を飛び降りると、前傾姿勢になり一気に距離を詰める。
しおりを挟む
感想 690

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。