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第七章:荒れる王都
その134:それぞれの疑念
しおりを挟む「それじゃあ、俺は先に戻ってるぜ」
「ああ。……いいのか、俺を倒すように言われていたのだろう?」
「後回しに決まってんだろうが、もう一人の大魔王……なんつったっけ、クロ……クロ……クロワッサン?」
「美味しそうです!?」
「まあなんでもいいけど、そいつが暗躍しているならお前の力が必要だろうし、一旦休戦だ。話は俺も聞きたい」
翌日、ヴァルカンは途中でメモリーを拾って魔族領へと戻ると言い出したので今は門の前で見送りをしているところだ。
話の内容は先の通り、クロウラーとやらの存在が危険ではないかというものだった。
「ヴァルカン兄ちゃん、また来るよね?」
「おう、まだトランプでお前に勝ち越してないからな」
「いや、もう勝ち越すのは無理でしょ……」
「あはは、ヴァルカンさん弱いですからね!」
「お前には言われたくねえぞ勇者!?」
ヴァルカンがファムに食って掛かるので、俺が横から顔を出す。
「呼んだか?」
「あ? いや、そうだなお前もそうか……ふん、まあいい。死ぬなよお前等」
「うん! またね!」
コギーが大きく手を振ってヴァルカンを見送り、やつは振り向かずに片手を上げて挨拶し、町から出て行った。
となると、あの町にももう少し騎士を派遣しないとメモリーとミーヤが居なくなれば戦力が一気に落ちる。打診をすべきだとこのまま城まで出向こうかと歩き出す。
「遅くなりましたけど、ようやく魔族領を目指せますね」
「そうね。だけど、戦いじゃなくて話し合いの場になりそう」
「移動中に訓練でもしようと思ったが、黒竜達が居ればすぐに到着する。国王に話をしたら全員で出発するぞ」
「はーい」
イスラの適当な返事を流しつつ、城へ向かう。
「ザガム様ではありませんか。どうぞお通りください」
「顔パス……」
「はは、彼の活躍はもう何度も覚えがありますし、先の蘇生についても話を聞いていますからね。登城したら通せと言われていますので」
何度か顔を合わせた門番が笑ながら門を開けてくれ、俺達は中へ。
程なくして謁見の間へと招かれ、脇にはエイターも居た。
「ザガム、この度は大変助かった。亡くなったと思われた町人が全員蘇ったとの報告があった。スパイクからもドラゴンについて聞いている、ありがとう」
「気にしないでいい。少し話があるのだが、いいか?」
「聞こう」
少しやつれたか? まあ、ここ最近の騒動は心労が絶えないだろうから仕方ないか。
そして魔族のこと、クロウラーのこと、俺が勇者の血を引いていたことを告げる。
すると横で、神妙な顔をしていたエイターが手を上げて口を開く。
「僕から。ザガム殿は勇者だった、ということでいいのかな? だけど、同じ時代に二人存在するというのは聞いたことがないんだけど」
「確かに。しかし、俺の記憶では間違いなく母が勇者だった。150年前のことなので、その間にも勇者は居たはず。想像だが、血を引いた者は勇者ではなく、神に選ばれた者だけが勇者という存在なのだと思う」
勇者は大魔王を倒すため時代に現れるから―― ん? なにか今、違和感が……
「それで、ザガムはこれからどうするのだ?」
「あ、ああ、俺達はこれから大魔王メギストスに会いに行く。幸い、黒竜に乗れば二、三日もあれば到着する。そこで話を聞いてみるつもりだ」
「大丈夫なのか?」
「真相を知るのは俺を拾ったあいつだけ……そんな気がする。危なかろうが、行かなければと思う」
「メモリーさんもなにか知っていそうでしたしね」
ファムが真面目な顔でそう言い、ルーンベルが頷く。古参の【王】もなにか知っている可能性は確かにあるか。
「そういうことで、町に常駐させてきたメモリーも領に帰るので、兵を増員した方がいい」
「分かった、すぐ手配しましょう。……いい酒がまた手に入ったんだ、必ず戻って来てくれよザガム殿」
「ああ。クロウラーの手の者がこっちに来るかもしれないが――」
「良い。他の国と連携を取るつもりだ、グェラ神聖国にも打診はしてある」
「そうか」
エイターが出て行くのを見送りながら俺は考える。
……魔族は強い。
さらにあいつらは強力な力がある。それでも俺に助けを求めてこなかったところを見ると、メギストスとの会話の方が重要だと思っているのかもな。
「屋敷はそのままにしておくぞ、全てが終わったら戻ってくるのだ」
「頼む。では行こう」
俺達は謁見の間を出ると、すぐに屋敷へ戻り準備を整える。
……ハンバーグ、これ以上は先延ばしに出来なさそうだ、食べに行くか?
◆ ◇ ◆
――謁見の間――
「大丈夫でしょうか……」
「大魔王クロウラーのことか? グェラ神聖国やヒズリーン帝国を掌握していたであろうからな。ただ、ファム達の前に現れた魔族が勇者で女を狙っていると言っていたらしいから、恐らく今後はそちらへ力を注ぐのではないかと考えている」
「あ、なるほど。そうなると国を攻めるより先に狙いますかね」
「恐らくな。だが、大魔王クロウラーは……我等、人間の敵でもある。150年前の惨劇は今でも語り草だ」
国王アレハンドロが大臣のザップに目を向けながら腰を上げる。
「大魔王を倒すために勇者が遣わされる。それはもしかすると、クロウラーの復活に備えた神の意向なのかもしれないな」
「ですな。それにしても陛下はお変わりになられました」
「それもザガムのおかげだろう。あいつは【冥王】だったが、勇者の血を引いていると。独自の正義感ではあるが、人のことを考えられるのは勇者っぽい。メギストスは日和見で攻めてこないとタカをくくっていた私の目はあれで覚めた」
「ぽいって……とはいえ、150年前の母で彼はあの若さ。おかしいと思いませんか?」
ザップが訝しみながら顎に手を当ててそう言うと、アレハンドロも頷く。
「……魔族ならあり得るが、勇者は人間からしか出てこない。母が人間なら父もそうなるだろう……」
「ザガムはメギストスに拾われた、と言っていましたが魔族に変えられたんでしょうか?」
「うーむ……勇者の息子が勇者にはならない……メリットが思い浮かばん。まあ、それはそれだ。騎士と兵士達に厳重な警戒を通達。【霊王】が来た時の比ではない戦いが来るかもしれんんとな」
ともあれ真実はザガム達に託すしかないと、アレハンドロはザップに指示を出す。
全ては大魔王メギストス。
彼が知ることは一体なんなのか――
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