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第18話 パーティにて
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「突然、村の敷地を貸してくれと頼んだ私達に歓迎会をしてくれるとは、すまないな」
「いいえ、カイ様のお体に障らないか心配でしたが……」
「事前にお知らせを頂いていましたし、いつもそこまで具合が悪いというわけではないので」
――ということで当日となった。
ローク様と村長、そして主賓のカイ様が挨拶をする中、俺は見守っていた。
事前にパーティをやることを村長からカイ様に伝え、承諾を得る。そしてローク様へ手紙を出してもらい、開催にこぎつけた。
もし今回がダメでも、その内……と考えていたため、今この状況はかなりラッキーだ。
村の中央にある広場にテーブルや椅子を総動員し、料理や飲み物を並べている。
もちろん、ローク様とカイ様には特別な椅子を用意した。
事前準備はかなりきつかったが……
「……」
「……」
……で、挨拶を交わしている間、俺はカイ様にチラチラと見られていた。憮然とした表情なので体質のことを喋ったのではと疑われているに違いない。
それは今からだけどな。
「――乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
そして気づけば口上が終わり、ローク様が杯を掲げてパーティが始まる。
ちなみにバートリィ家は『伯爵』の爵位とのことで、だいたい真ん中くらいの位置に居る。
さて、このパーティ自体は『前座』に過ぎない。俺をローク様に紹介してもらうためのものだからだ。
だけど、村のみんなも頑張っているしたまには息抜きをするというのもあったりするけどな。
「カイ様、なにかあったら私達にも言ってくださいね! お散歩している時に男達が寄ってきたら倒してあげますから!」
「しねえよそんな恐れ多いこと!?」
「ふふ、気をつけますね」
「悪い虫はこのサーナが蹴散らしますので……!」
「うお!? なんだその棍棒!?」
カイ様やサーナ達メイドさんも警護の人がついているものの、村の若者と楽しそうに会話をしていた。殺意の高そうなサーナの棘棍棒は見なかったことにしよう。
「お嬢様に粗相の無いようにな」
「あ、はい……」
「セキト、この村にお邪魔しているのは私達ですよ。そのような言い方はいけません!」
「は、申し訳ありません」
セキト様も相変わらずだと苦笑する。
怖い顔をしているからお調子者のコウヤやアンドレも委縮して愛想笑いだ。
「よー、レン! 飲んでるか!」
「ケリィか。今日は非番?」
「ああ! というか先輩達が、若い奴が行って来いって変わってくれたんだよ」
人々を観察しながら酒と料理を楽しんでいると、自警団のケリィが話しかけてきた。ジョッキ片手に世間話をする。
「クレアが来れなかったのは残念だったなあ」
「あれ? そういえば最近見ないな」
「あいつ、薬草の知識が凄いだろ? 町の薬屋に仕事行ってるんだ。お前、知らなかったのか?」
「ふーん。いや、学校を卒業してからそんなに顔を合わせていないしなあ」
あいつが忙しいのは知っているからそれほど驚きでもない。さっぱりした性格だしな。
「まあ、クレアのことは――」
「……」
「うお……!?」
「ど、どうした?」
「いや……」
そこで背筋に冷たいものがはしった。
慌てて周囲を探すと、笑顔だが不穏な気配を出しているカイ様と、眼鏡を光らせて棍棒を肩に担いでいるサーナがこちらを見ていた。
「怒っているだと……? いや、このパーティの意図に気づけばそうなるかもしれないが……」
「なんだぁ?」
「きにしないでくれ……」
俺がそういうとケリィは首を傾げながらカイ様のところへ行った。そのまま会話に加わっていた。
「この村は魔物の脅威とは無縁だからゆっくりしてくださいね」
「俺達、自警団がいるのでご安心を……」
「半分くらいはレンとフリンクじゃない」
「それを言うな……」
まあ、冗談を交えて話ができるのは若者ならではかと俺は耳だけ傾ける。
「ふふ、賑やかですね」
「いい村です」
カイ様とサーナがそう返していると、席を立ったローク様が村長のところへ行くのが見えた。
「この村は本当に平和だな」
「ええ、おかげさまで。その一つの要因が……レン!」
来た。
これは打ち合わせ通りで、どこかのタイミングで俺を紹介してもらう予定だったのだ。
「はい」
「ふむ、彼は?」
「彼はこの村の若者でレンといいます」
「レンです。よろしくお願いします」
「ああ、ロークだ。して、彼のおかげとは?」
そこで村長が俺のことを話しだす。
神様の加護があり、精霊を従えていることなどを。最初に話したけど記憶を消しちゃったからまた同じ説明が必要なのだ。
「……神様の!? それは本当か?」
「疑われるのも無理はありません。ですが、彼を見たら驚くと思います」
「彼?」
「フリンク!」
『はーい』
俺が名前を呼ぶと、フリンクがスッと空から降りてきた。
「うおお!?」
『初めまして、僕はフリンク! 精霊とか神様の使いみたいな感じだと思って!』
「な、なんだあれは……」
「魔物……いや、精霊?」
フリンクがヒレひらひらさせて挨拶をすると、周りからどよめきが起こる。村の人はみんな知っているので『なんか久しぶりに見たな』くらいの感想だ。
「む、むう……確かに見たことが無い生き物だ……しかも喋る……神の使い……割とブサイクな気も」
『あ?』
「おい」
フリンクが素を出しそうだったので叩いておく。さて、ここからこっそり交渉だな。
「いいえ、カイ様のお体に障らないか心配でしたが……」
「事前にお知らせを頂いていましたし、いつもそこまで具合が悪いというわけではないので」
――ということで当日となった。
ローク様と村長、そして主賓のカイ様が挨拶をする中、俺は見守っていた。
事前にパーティをやることを村長からカイ様に伝え、承諾を得る。そしてローク様へ手紙を出してもらい、開催にこぎつけた。
もし今回がダメでも、その内……と考えていたため、今この状況はかなりラッキーだ。
村の中央にある広場にテーブルや椅子を総動員し、料理や飲み物を並べている。
もちろん、ローク様とカイ様には特別な椅子を用意した。
事前準備はかなりきつかったが……
「……」
「……」
……で、挨拶を交わしている間、俺はカイ様にチラチラと見られていた。憮然とした表情なので体質のことを喋ったのではと疑われているに違いない。
それは今からだけどな。
「――乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
そして気づけば口上が終わり、ローク様が杯を掲げてパーティが始まる。
ちなみにバートリィ家は『伯爵』の爵位とのことで、だいたい真ん中くらいの位置に居る。
さて、このパーティ自体は『前座』に過ぎない。俺をローク様に紹介してもらうためのものだからだ。
だけど、村のみんなも頑張っているしたまには息抜きをするというのもあったりするけどな。
「カイ様、なにかあったら私達にも言ってくださいね! お散歩している時に男達が寄ってきたら倒してあげますから!」
「しねえよそんな恐れ多いこと!?」
「ふふ、気をつけますね」
「悪い虫はこのサーナが蹴散らしますので……!」
「うお!? なんだその棍棒!?」
カイ様やサーナ達メイドさんも警護の人がついているものの、村の若者と楽しそうに会話をしていた。殺意の高そうなサーナの棘棍棒は見なかったことにしよう。
「お嬢様に粗相の無いようにな」
「あ、はい……」
「セキト、この村にお邪魔しているのは私達ですよ。そのような言い方はいけません!」
「は、申し訳ありません」
セキト様も相変わらずだと苦笑する。
怖い顔をしているからお調子者のコウヤやアンドレも委縮して愛想笑いだ。
「よー、レン! 飲んでるか!」
「ケリィか。今日は非番?」
「ああ! というか先輩達が、若い奴が行って来いって変わってくれたんだよ」
人々を観察しながら酒と料理を楽しんでいると、自警団のケリィが話しかけてきた。ジョッキ片手に世間話をする。
「クレアが来れなかったのは残念だったなあ」
「あれ? そういえば最近見ないな」
「あいつ、薬草の知識が凄いだろ? 町の薬屋に仕事行ってるんだ。お前、知らなかったのか?」
「ふーん。いや、学校を卒業してからそんなに顔を合わせていないしなあ」
あいつが忙しいのは知っているからそれほど驚きでもない。さっぱりした性格だしな。
「まあ、クレアのことは――」
「……」
「うお……!?」
「ど、どうした?」
「いや……」
そこで背筋に冷たいものがはしった。
慌てて周囲を探すと、笑顔だが不穏な気配を出しているカイ様と、眼鏡を光らせて棍棒を肩に担いでいるサーナがこちらを見ていた。
「怒っているだと……? いや、このパーティの意図に気づけばそうなるかもしれないが……」
「なんだぁ?」
「きにしないでくれ……」
俺がそういうとケリィは首を傾げながらカイ様のところへ行った。そのまま会話に加わっていた。
「この村は魔物の脅威とは無縁だからゆっくりしてくださいね」
「俺達、自警団がいるのでご安心を……」
「半分くらいはレンとフリンクじゃない」
「それを言うな……」
まあ、冗談を交えて話ができるのは若者ならではかと俺は耳だけ傾ける。
「ふふ、賑やかですね」
「いい村です」
カイ様とサーナがそう返していると、席を立ったローク様が村長のところへ行くのが見えた。
「この村は本当に平和だな」
「ええ、おかげさまで。その一つの要因が……レン!」
来た。
これは打ち合わせ通りで、どこかのタイミングで俺を紹介してもらう予定だったのだ。
「はい」
「ふむ、彼は?」
「彼はこの村の若者でレンといいます」
「レンです。よろしくお願いします」
「ああ、ロークだ。して、彼のおかげとは?」
そこで村長が俺のことを話しだす。
神様の加護があり、精霊を従えていることなどを。最初に話したけど記憶を消しちゃったからまた同じ説明が必要なのだ。
「……神様の!? それは本当か?」
「疑われるのも無理はありません。ですが、彼を見たら驚くと思います」
「彼?」
「フリンク!」
『はーい』
俺が名前を呼ぶと、フリンクがスッと空から降りてきた。
「うおお!?」
『初めまして、僕はフリンク! 精霊とか神様の使いみたいな感じだと思って!』
「な、なんだあれは……」
「魔物……いや、精霊?」
フリンクがヒレひらひらさせて挨拶をすると、周りからどよめきが起こる。村の人はみんな知っているので『なんか久しぶりに見たな』くらいの感想だ。
「む、むう……確かに見たことが無い生き物だ……しかも喋る……神の使い……割とブサイクな気も」
『あ?』
「おい」
フリンクが素を出しそうだったので叩いておく。さて、ここからこっそり交渉だな。
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