魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

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第一章

第28話 困惑

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「宿には?」
「入りきれない者も……」
「仕方ない、広場を開放して――」

 とりあえず町に全員が入りきったので門を閉める。
 クレイブの町の人達は避難民達のために宿を用意してくれていた。
 しかし人数が人数なのでいくつかある宿を全部使っても三分の一程度しか入れないようだ。
 広場にテントを用意するといった措置を取るようだ。

「姫様はこちらに。町長とがお話をしたいと」
「ありがとうございます。しかしリク様がお話を聞けないので、外でお願いできませんか?」
「は、はあ……。これは一体……? 向こうにもあるみたいですけど……」
「この方はリク様と言って、窮地を助けてくれた勇者様なのです。丁重におもてなしを」
「ゆ、勇者様……!? わ、わかりました」

 クレイブの町の人、役人かな? 彼が困惑しながら先導してくれひとまず町長の居る場所へと向かう。俺は外壁をブースターで飛び越えてから中へ入った。

「勇者ってのは違う気がする……」
「しかし光の剣を持っておったからのう」
「光の……? あ、プラズマダガーか!? あれは普通の武器だぞ」
「プラズ……? しかしあれほどの光を放つものは見たことが無い。伝説の勇者が持っていたとされる光の剣に似ておる」

 前を歩くガエイン爺さんが不敵に笑いながらそんなことを口にする。そんな大層なもんじゃないんだけど。そういや魔兵機《ゾルダート》に乗っていた奴もそんなことを言っていた気がする。

「ま、あたし達を助けてくれたのは間違いないしね♪ あ、ここかしら」
「町役場ですな」
「では、町長を呼んできますので少々お待ちを。君、テーブルセットを頼む椅子もな」
「かしこまりました」

 役人さんらしき人が、女性に指示を出しながら建物の中へ入っていく。俺達は用意ができるまで待つ。

「話が通しやすい人だといいが」
「ここの町長は顔見知りなので大丈夫だと思います」

 ガエイン爺さんの言葉にソウの町長であるサイモンさんがそう言ってくれた。まあ、戦場になることを了承してくれるとは思えないが。
 そんなことを考えていると、俺達が来た道から誰かがやってきた。

「こいつが謎のデカブツか……! 興味深いな」
「お主は?」
「おっと、失礼しました。俺はこの町でギルドマスターをやっているグレオと言います。ただならぬ事態ということで話に加わって欲しいと言われました」
「ありがとうございますグレオさん。ソウの町から冒険者も連れてきているのでそちらの対応をお願いするかもしれません」
「不満を口にしている者が多い。すまんがケアを頼む」
「ええ」

 アウラ様とガエイン爺さんが握手をしながら冒険者とやらについて話をしていた。野営をする際に報酬がどうのと言っていた奴等のようだ。
 
「シャル、冒険者ってどんな感じの奴等なんだ?」
「え? リクには馴染みが無いかもだけど、フリーのなんでも屋って感じね。ギルドから依頼を受けるのが本筋だけど、たまに個人の依頼もやっているわ」
「それは国に属しているわけじゃない?」
「うん。居つくこともあるけど、そういうのに縛られないのが冒険者だから」
「そっか。教えてくれてありがとな」
「ふふん、これくらいなんでも無いわよ! あ、来たみたいね」

 シャルがそう言ってアウラ様の方を向いた。俺も視線をそちらへ向けると、眼鏡をかけたオールバックの男が握手をしているところだった。

「お初にお目にかかります。私はクレイブの町長、エバールと申します。以後、お見知りおきを」
「エトワール王国、第一王女のアウラです。それと妹のシャルルですね」
「よろしくお願いします」
「はい。それで少しだけお話を伺っていますが、グライアード王国に襲われた、と?」

 アウラ様を先に座らせてから自身も席につくエバールさん。
 門の前で話していたことを少し聞いているようで、それならとアウラ様が続ける。

「はい……。五日ほど前に王都が巨大な人型の乗り物が強襲してきたのです。数十体は居たと思いますが、あっという間に城下町は蹂躙され城も崩されました」
「なんと……」
「騎士達は勇敢に立ち向かいましたが巨兵は硬く、一振りで何十人もの騎士達が倒されました」

 俺も目的以外はどういった状況だったかは初めて聞く。深夜、寝静まったところへ魔兵機《ゾルダート》ごと門を突破し、後は虐殺って感じのようだ。

「……今、外に一台、捕獲したものがあるのですが、彼等はあれを魔兵機《ゾルダート》と呼んでいました。両親とこちらの騎士相談役のガエイン、それと騎士達とで城を脱出し、今、ヘルブスト国へ救援をお願いしに向かっているのです」
「グライアード王国……。キナ臭い国だとは思っていたが、やってくれたな」

 グレオさんが目を細めて腕を組む。どうやら元々あまりいい国とは言えないようだ。隣国なので仲良くしていたが裏切られたって感じだな。

「ただの戦争なら深夜とて遅れは取らん。じゃがアレは分が悪すぎる。大きさも装甲も規格外で、乗っている者を倒さねば止まらん。じゃがその乗っているところも簡単には破壊できんのでな」

 爺さんが俺に目を向けたので、頷いてからコクピットハッチを開く。するとエバールさんとグレオさんが目を見開いて驚いていた。

「鉄の兵士……。この中に入っていれば確かに破壊するのは困難……」
「そうなのよね。だからあたし達は逃げるしかなかったの。で、ここからが本題なんだけど――」

 そう言ってシャルとアウラ様がこのソウの町が襲われたこと、恐らくこのままだとここへやってくる可能性があることなどを告げた。
 
 すると二人の反応は――
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