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第一章:覚醒の時
ープロローグー
しおりを挟む――戦っている。
若い男と大きな髑髏型の魔物――
あれは、誰だったか――
【う、後ろから……い、いつの間に……】
「これでとどめだ……!」
【そんな……! ぼ、僕はぁぁぁぁぁ……!】
若い男が剣を胸にある宝石に突き立てた瞬間、その巨大な体は砕け散った――
◆ ◇ ◆
――思い出した――
僕の記憶の奥底にあったであろう"それ”が、とてつもない勢いで……まるで録画を再生されるように、鮮明に蘇る。
僕はそれを確かめようと体を動かそうとする。
「痛っ……」
全身が悲鳴をあげて拒絶する。
……そうだった……僕は、僕たちは……大魔王との決戦中だったんだ……うっすら目を開けると、金髪の女の子が僕を抱えて叫んでいた――
「しっかりしてくださいレオス君! ≪キュアヒーリング≫!」
女の子が魔法を使うと、僕の体から痛みが消え、呼吸が少し楽になるのを感じる。そこへ男が吹き飛ばされて目の前に転がってきた。
「くそ! 強すぎるぞこいつ……!? おい、レオスに回復魔法をかけるくらいなら俺達にかけろ! そいつはポーションで十分だろ!」
「そんなことできませんよ! レオス君をここまで連れてきたのはあなたですよアレン! だから連れて行かない方がいいとわたしが言ったじゃありませんか!」
「チッ……まあいい。レオバール! ルビア! こっちへ来い! このままじゃ埒があかねぇ、一斉に仕掛けるぞ! エリィは防御結界を全力で張れ」
そう叫ぶのは勇者アレン。このパーティのリーダーであり、僕をこんなところまで引っ張ってきた張本人。そして剣聖レオバールに拳聖ルビア。最後に僕を抱えている金髪の女の子が賢聖エリィ。
そして――
「ぐっふっふ……まだ何かをするつもりかな、人間達よ。まあまあ強かったが儂にはちぃっとばかり及ばんかったのう? まあそれでも? 儂のかわいい部下たちを可愛がってくれた礼はせねばなるまい! キリッ! ……なーんちゃってな! ぐふぉふぉふぉふぉ!」
驚くほど軽い口調で緊張感の欠片も無いが、こいつは大魔王エスカラーチ。50年ほど前にどこからともなく現れ、世界を恐怖のズンドコへ陥れた者だ。その実力はガチで、出現してから四つある国が兵を差し向けたり、実力のある冒険者などが挑んだがいずれも敗退。徐々に世界征服への進行を続けていた。
「この光の剣でトドメをさしてやらぁ! 足止めを頼むぜ!」
「足場を崩す『グランドセイバー』!」
そして人間達はいつしか世界を見守っていたという女神が残した光の剣に縋り、剣を抜ける者を広く募集した。
その中の一人であるアレンは幾多の試練を乗り越え、他の候補者達をぶっちぎって勇者となり、大魔王の元まで辿り着いたのだ。
「≪ホーリーウォール≫」
「『撃滅拳』! おりゃああああ!」
――彼等は強い。
商人の息子で、無限収納のカバンしか能のない僕の何十倍も強いのだ。しかし大魔王はそれ以上だった。果敢に攻める勇者パーティだったが、大魔王は怯みもしない。
「これで終わりだぁぁぁ! 『真・竜牙斬』!」
真・竜牙斬……アレンの持つ現在最強の技。これまでに倒してきた六魔王をことごとく葬ってきた奥義。渾身の力で振り下ろし、エスカラーチを袈裟がけに斬った。
だが――
「む、無傷だと……!?」
「それが最高の技かね? ちぃっとばっかしこの辺が斬れたが、ふむ期待外れじゃな」
エスカラーチの服が少し切れていたが、あの攻撃でたったそれだけしかダメージを与えられなかったショックは大きかった。
「そんな……!?」
「嘘だろ……」
エスカラーチの言葉に絶望するレオバールとルビア。その表情に満足したのか、ニヤリと笑って口を開いた。
「それで勇者とはぬるいわ! ≪カオティック・ダークムーン≫!」
指を胸元でわっかにし魔法を唱えるエスカラーチ。月明かりに似た光閃が僕たちを襲い、直後、エリィのホーリーウォールは砕け散った。
カシャァァァン!
「い、一撃で!? さっきまではそんなこと無かったのに……! きゃああああ!?」
「ぐわあああああ!?」
ホーリーウォールが防ぐが砕けてしまう。そしてその威力は衰えず、全員吹き飛ばされてしまった。すると小指でとがった耳をほじりながらエスカラーチは言う。
「さっきまではお前達がどれくらいやれるか試してみただけじゃ。でも今のが最大なら万策尽きたじゃろ? って、聞こえて無いか」
吹き飛ばされた四人はほぼ虫の息。そこへエスカラーチは――
「まあ、六魔王を倒したのは褒めてやるがな。また復活して力をつけられても困るし……トドメをさしておこうなぁ≪カオティック・ダークムーン≫」
おっと、まずい……あれをもう一回食らったら流石に死んでしまう!
ドォン!
「やれやれ、儂に城を壊させおって……。それにまた六魔王を作らないといかんとは面倒なことじゃ……今度はもちっと頑丈に――」
踵を返して玉座に戻ろうとする大魔王エスカラーチ。だが不意に立ちどまり、ゆっくりと、立ちのぼる煙へ向き直る。
「……おかしいのう。儂は確かにカオティック・ダークムーンを放ったはずじゃが……」
「げほっ……そうだね、間違いなく放たれたよ」
僕は咳き込みながら煙から出てくる。
「……ならどうして貴様は無事なのだ? それに勇者共も無傷……」
「あー、その辺は察してくれると助かるかな……どっちにしてもあんたはここで消えるから回答は出来ないけど」
「はっ! 確か貴様は商人だったはず。運よく生き延びただけの小僧が言いよるわ! いきなり≪カオティック・ダークムーン≫!」
ドォン!
「馬鹿め、何かさせる前に消す。それが儂の流儀よ! はっはっは! はーっはっは――」
「うーん、いきなりぶっ放すのは中々いい手だと思うけどね。いちいち相手の口上とか聞いてられないのは分かるよ」
「――は!? な、なぜ生きておる……!?」
「何故って……ガードしたから?」
「そ、そんなばかな!? 儂の最強魔法をどうやって……」
「こんな感じで――」
僕はニヤリと笑い、自身の魔力を増幅させる。そして僕の影が違う形に変化していった。それはさながら巨大ながしゃ髑髏のように――
「な、なななな……なんだこの魔力は!? け、桁違い……だ、大魔王の儂を凌ぐというのか!? それに魔力の質が――」
「そこまでだよ。後は地獄で考えるといい」
てくてくと、散歩でもするように僕はエスカラーチの元へ歩いていく。
「か、≪カオティック・ダークムーン≫! ≪カオティック・ダークムーン≫!」
バキン!
「馬鹿な……!?」
エスカラーチが冷や汗を流して後ずさる。こんなはずではなかった、こいつは一体何者だ、そういう表情を見せている。僕は散歩を楽しむかのようにエスカラーチの目の前まで歩き、一言呟く。
「≪インフェルノブラスト≫」
「あ……あ……ああああああああああああああああああ!?」
そっとエスカラーチの体に手を置いて魔法を使うと、一瞬で体が業火に包まれた。
「おのれ……だが、人間共よ、いつの日か必ず復活して――」
「もういいから消えなよ≪クリムゾン・アッシュ≫」
「ちょ、まだとちゅ――」
ボソッ
僕がトン、と撫でるように魔法を使うと、最後まで言い終えることなく、エスカラーチは灰となって消えた。
「あんたの攻撃で思い出さなかったらやばかったけどね。僕の前世は"悪神”……"大魔王"程度じゃ僕は倒せないよ」
僕が一瞥していると、背後から呻き声が聞こえてくる。
「う……う……レオス君……?」
ホーリーウォールのおかげで他の三人より傷が浅い賢聖エリィの声だった。さすがに頑丈な防御魔法を使うね。
ちょっと待っててね……みんなを助けるその前にっと……光の剣を灰の上に刺してっ……
「≪ダークヒール≫」
アレン達を治療し、僕はさっきの場所でまた気絶したふりをする。
そっと目を閉じると、僕がこの世界に産まれる前のことを思い出していた――
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