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第二章:実家はまだ遠い
その32 協力者と敵対者
しおりを挟む「すみません、いいですか?」
「はい、どうぞ。依頼ですか? 納品ですか? 報告ですか?」
二人を連れてギルドへやってくると、真面目そうな職員がにこやかに用件は何かを聞いてくる。そこでアレクが職員へ告げた。
「依頼を申し込みたい。内容は僕達と父の護衛で、依頼を受けるのは彼になります」
「んん……? ……! あなたはアレク様! ご、護衛、ですか?」
「ええ、お父様が病に伏しているのは知っていますよね? どうも――」
リーエルが口を開くが、僕はそれを遮る。
「経緯はとりあえずいいよ。できればギルドマスターがいれば呼んで欲しい」
マスターを呼びつけるという行為が気にいらなかったのか、職員が僕にくってかかってきた。
「む、ギルドマスターはお忙しいんだ。君みたいな若造の相手をしている暇はないね」
「若いのは認めるけど、ことは一刻を争う可能性が高い。あなたの主観でギルドマスターの耳に入らず、領主様が死んだりしたら困るのはきっとあなただと思いますよ。証人はアレクとリーエルだし」
「むぐ……!」
あえて僕は意地の悪い笑みを浮かべて職員を詰めると、職員は書類を書く手を止めて口をつぐむ。さて、どうするかなと思っていると、職員の後ろに、ぬっと大きな影が現れて肩を叩いた」
「どうした、騒がしいぞ?」
「あ!? ギ、ギルドマスター! これは、その……」
「あなたがギルドマスターですか?」
職員が口ごもっている中、僕はギルドマスターと呼ばれた大男に声をかける。すると大男は僕をジロリと見て口を開く。
「……いかにも俺がギルドマスターのサッジだ。依頼か?」
「ええ、この二人に頼まれました」
「……! アレク様ではないか! どうした、厄介事か?」
僕達が頷くと、サッジさんは顎で奥の部屋を案内してくれた。来客用ソファーに事務机と、いかにもな部屋に入ると、まずはサッジさんから質問を受ける。
「――で? 護衛の依頼の理由は?」
「それが――」
アレクが叔父のこと、帰郷時に雇った冒険者に襲われたこと、父親のことをざっくり話し、そこに僕が考察を加える。
「相手はかなり頭がいいです。正直、今こうして話しているあなたも実は、という線も捨てきれないくらい周到だと思っていいでしょう」
じっと目を見ながらサッジさんに言うと向こうも口をへの字にして目を細める。
「……フッ」
「?」
「言うじゃないか小僧。安心しろ、俺はゲルデーンとは一緒に冒険者をやってた昔馴染みだ、あいつを裏切る真似はしない」
ふう、この人は白だったか……目を見ればだいたい分かるけど、揺さぶってみないと分からないこともあるしね。というか領主様冒険者やってたのか、筋肉が凄い訳だ。
「それでこいつは使えるのか?」
サッジさんが親指で僕を指しながらアレクに尋ねる。
「はい。レオスがいれば問題ないでしょう」
「ほう……ちょっと許可証をみせてくれ」
「どうぞ」
「……ジョブ、商人だと!? で、Cランク!? ちぐはぐもいいところだな、おい!」
「路銀稼ぎに依頼を受けたいんですよ。ラーヴァ国まで帰る途中なんで」
「ラーヴァだとここからまるっきり反対側じゃねぇか……Cランクなら問題ないな。この後はどうするんだ?」
ポイッと許可証を僕に返すと、今後の動きについて尋ねてくる。
「街道では結局襲われませんでした。となると、領主様と二人をまとめて消すための行動を起こすと思います。それを逆手にとって僕は屋敷で待ち構えての一網打尽といこうかなと」
「……こっちからも何人か回すか?」
「できれば。でも、こちらが屋敷に戻って油断していると思わせたいので、遠目から屋敷を見てもらえると助かります。報酬はどうしましょう?」
するとサッジさんが頭を掻きながらため息を吐く。
「お前、いくつだ?」
「? 16歳ですけど?」
「……そうか、末恐ろしいな……分かった。アレク様の依頼は受理、屋敷を監視する冒険者はゲルデーンの友人である俺が個人的に雇う形にする」
「信用出来て口の堅い人でお願いしますね」
「わぁってるよ! ……ただ、終わったら一度俺のところに来いよ?」
「? 分かりました。それじゃ行こう、アレク、リーエル。それでは失礼します」
サッジさんが『おう』と一声言いながら見送ってくれ、僕たちはギルドを後にして歩き出すと、リーリエがふらふらと声を出す。
「……私何が何だか分かりませんでした……」
リーエルが目を白黒させていると、アレクが微笑みながらリーエルの手を引きながら言う。
「頼りになるってことさ。さ、戻ろう」
そろそろ陽も完全に暮れる。
監視者を頼んだものの、襲撃はいつ来てもおかしくない。特に暗くなれば絶好のチャンス……急いで屋敷に戻り、ゲルデーンさんへ報告するため部屋へと向かう。
「父上!」
バーン!
アレクが扉を開け放つと――
「これでぐっすり眠れますよ……」
「ん、んん……んふう……!」
あのティモリアとかいう医者に注射を打たれているところに出くわし、ゲルデーンさんが変な声を上げていた!
「父上ー!?」
「お父様!」
バタバタと二人が駆けより、僕もそれに続く。
「おや、おかえりなさいませ! ちょうど今お休みになったところですよ」
「……永遠に、とか言わないだろうね?」
「? どういうことですか?」
僕の言葉には特に反応せず、きょとんとした表情で僕を見ていた。そうだ、領主様!
「ぐごー……ふしゅるるる……」
物凄い勢いでいびきをかきはじめていた。
「それではワタクシめは部屋におりますので、何かあればお呼びください。一応、二時間おきには来ますがね」
そう言ってティモリアは出て行く。僕は医者と一緒にいたソーニャさんへあの医者について尋ねてみることにした。前の主治医と入れ替わりタイミングがとても怪しいからである。
「あの人、おかしなところはないですか? 最初は良かったけど、彼が来てから体調がどんどん悪くなっていたりとかそういうのは?」
「はあ……あの方が来てから旦那様は良くなってはいないですが症状の進行が止まりましたよ? 特段おかしなところは……」
「そうですか、ありがとうございます」
「よく眠っている、筋トレなんかするから心配だったけど。ソーニャ、夕食はレオスと一緒に食べるから準備を頼むよ。レオスの部屋を案内しよう」
そう言うと、ソーニャさんが「あ!」と声を上げてアレクに伝える。
「あ、お客様の部屋なんですけ、今日お掃除が間に合わなくて……使用人の部屋でもいいでしょうか?」
「そうか……僕の部屋でもいいかい?」
「ベッドが一つしかありませんよ? ……まさか一緒に! ぶふぅ!」
「確かにそうか……」
「僕は椅子でもいいよ、慣れてるし。だいま――旅をしているよ良くあるからね、うん」
「いや、疲れもあるだろうし、ゆっくり寝ておいた方がいいと思う。使用人の部屋でもいいかな?」
「僕は大丈夫だけど……」
そう言うと、ソーニャさんが僕を部屋案内してくれた。
「うーん、ちょっとアレク達の部屋から離れてるなあ……ギリギリまで一緒に居ようかな」
その後、少しの間ゆっくりとして夕食をいただき、応接室で話をしていた。だけど昨日までの疲れが出たのかアレク、リーエルが就寝するというので僕は部屋に戻るため廊下を歩く。
「ふう、貴族の料理は美味しいね。毒も入っていなかったし使用人は白かな? ……ん?」
スタスタ……
お風呂から戻る途中、廊下であの医者が歩いているのを見かけ、僕はサッと身を隠しながら後をつける。
「(この方角は……領主様のところか。二時間おきとは言ってたけど、どうにも怪しいんだよなあ)」
探るか。
僕はティモリアを追いかけることにした。
◆ ◇ ◆
「さて、お仕事の時間だ」
「あの人は戻って来たのか?」
「少し前に『イソゲ』と伝令鳥が飛んできた、行くなら今だろう」
「部屋の間取りは?」
「問題ない。抑えてある」
「ゴブリン共を町に入れられるのか?」
「衛兵は眠らせる。始末するのはあくまで領主親子だ。レオスには勝てない、見かけたら逃げるぞ」
「屋敷で油断してるだろ? 寝てるかもしれねぇな」
「ことが済んだら後は国外へとんずらか……時間だ、行くぞ」
町はずれでダッツ達冒険者が作戦を話し合う。
ゴブゴブ……
その後ろには十数匹のゴブリンが整列していた――
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