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第六章:大魔王復活?
その101 冥王とフードと空気
しおりを挟む一方そのころのルビアは――
「ハッ!」
「お姉ちゃんどうした?」
「このお菓子、赤いけどイチゴを練り込んでいる?」
「おお、そうだ。あまり酸っぱいやつは売れないからこうして加工してるんだよ。あんた美人だから一つおまけしてやろう」
「ラッキー♪」
食べ歩きをしていた。
◆ ◇ ◆
フードの人物に付いて行き、森の奥へと到着。そこでフードの人物が振り返り、口を開く。
「さて、この辺でいいですかね。これで始めら――」
「お、おお、人目が無い……ここなら……おぉえぇぇぇぇぇ……」
「うぷ……いきなり吐かんでくださ……げろぉぉぉ……」
到着早々、大男と優男が限界とばかりに汚物を吐き出した。
「……あっちへ行きましょうか」
「役立たず」
「タイミングが悪すぎぃ……」
結局男二人を放置して移動し、奇しくも3人と3人で対峙する。僕はセブン・デイズを抜いて冥王達へと尋ねた。
「戦う、ってことでいいのかな?」
「ええ。そうですね。できればあなたの本気を見たいのですよ、レオスさん」
僕の名前を……? そういえばどこかで聞いたような声だ。
「そこまでする必要があるか分からないけど、戦うなら容赦はしないよ? エリィ、冥王に魔法効果は薄いから、あいつは僕がやるよ。ベルゼラと一緒にあの金髪の子とフードをお願い」
「わかりました! 《フレイム》!」
僕がオーダーして冥王に斬りかかると、同時にエリィが金髪ショートの子にフレイムを放つ。強襲だけど、スタートの合図があるわけじゃないので先制した形だ。
「自己紹介くらいさせてくださいよぅ。アタシはヴィネ。よろしくねぇ」
「速いですね! 《ウォータバレット》」
さらに魔法を放ち足止めをしようとするが、ヴィネはショートソードを抜いてエリィに肉薄する。ロッドで応戦するため振りかぶると、左手のショートソードでロッドを払い、右手に着けているごついガントレットでエリィを吹き飛ばした!
「痛っ……」
「ローブの中に仕込んでいるのねぇ。アタシはショートソードと、この小手を武器にしているの。どっちでもいなせてどっちでも攻撃できるからね!」
「エリィ! 《フレイム》!」
ゴゥ! と、ベルゼラの放った炎の渦が迫り、再度攻撃をはかったヴィネは避けるため後ろへと下がる。
「おっと! んふふ、二人とも魔法使い……なら、近づいて切り刻んだ方が早く終わるかしらぁ」
「わたしがいることもお忘れなく。では、メインデ……でぃしゅです! いでよウッドゴーレム!」
「え!?」
メキメキメキ……と、枝が木が嫌な音を立てて生成されウッドゴーレムが顕現した。あのフードが作っていたのか! いつから僕達を追いかけていたんだ……?
「ドコヲミテイル、オマエノアイテハワタシダ!」
「わかっているよ! その仮面、すぐに切り捨てる! <ファイアーボール>!」
ドウン!
「!」
ファイアーボールで足元を攻撃すると、爆発に巻き込まれまいと冥王は後ろへ下がった。だけどそれを見逃す僕ではない。アクセラレータで一気に詰め寄り、セブン・デイズを振り下ろす。
「ナンノ!」
ガキン!
「素手でよくはじけるね! でも近づきさえすればこっちのもの! <インフェルノブラスト>」
「《ダークネスシックル》」
片手でセブン・デイズを受け止めている冥王に対し、僕も片手をフリーにして脇腹めがけてインフェルノブラストを撃ち込む。冥王はそれに気づき、闇の鎌でインフェルノブラストを相殺しようとした。
ゴッ!
「ム……」
「威力は段違いだからその程度じゃ相殺はできないよ!」
「ナラバ」
短く呟き両手を広げる冥王。大技が来るか? フルシールドを展開して出方を見ると――
ぎゅ!
抱きしめられた!?
「うわあああ!? <インフェルノブラスト>!」
僕は咄嗟に冥王を突き飛ばして魔法を放った!
ピシュウン……
「ヤルナ」
どうやらインフェルノブラストは冥王の魔法吸収で搔き消されたみたい。いや、それよりも!
「いきなり抱きつくなんてなにやってるのさ!」
「ツイ」
「『つい』じゃないよ……」
「サッキカラ、オマエノカオヲミテイルト、ムネノアタリガドキドキスル。コレハオマエノマホウカ? ヘソノシタアタリモキュンキュンスル」
「何口走ってるのさ!? 知らないよそんなの。とにかく、僕は君達の目的を聞きたい。だから、終わりにさせてもらうよ」
「ヨカロウ……コイ……」
「……」
スッと両手を前に出して一言呟く。次でカタをつけないとと思いながらエリィ達を見る。
「げひゃひゃひゃ! ウッドゴーレムよ、やれぇ!」
「可愛い顔に傷がつくわよん! ぐへ!? ちゃんと狙ってくださいよ!?」
「おっと、すみませんねえ」
「《エクスプロージョン》!」
ゴォォォン!
「上級魔法ですか!」
流石は賢聖、前衛に守られていないにも関わらず、ウッドゴーレム相手でも一進一退の攻防を繰り広げていた。それにしてもあのフード、ウッドゴーレムに指示しているだけ?
「イクゾ《ブラックペイン》」
そうこうしているうちに冥王の両手から黒いドラゴンを模した魔法を使ってきた! だけどフルシールドでガードして真正面から斬ればいける!
「<フルシールド>!」
直後、ダッシュする僕。
ぺちん
「え?」
フルシールドに魔法が当たり、僕は足を止める。当たったんだけど、以前のような凶悪な顎を持ったドラゴンではなく、小さな蛇みたいなやつだった。
「ウウ……」
「冥王?」
シュゥゥゥと髑髏の仮面から煙が噴き出し、冥王が苦しみだす。チャンス!
「たあああ! セブン・デイズ力を貸して!」
僕が叫ぶと、埋め込まれた宝石が金色に輝き、技が頭に流れ込んでくる。
「”エクレール・フィン”!」
ボゥっと刀身も光り出し、一直線に髑髏の仮面へと吸い込まれるように剣が引っ張られる。
「ウアア……!?」
冥王は手でそれをガードしようとするが、手をすり抜け、仮面に剣が触れると、まばゆいばかりに輝き始めた。
「な、なにこれ!? 実体剣が無くなってる……!?」
パァァァァァ……
そして光が収束をし――
ピシィ!
「アアアアアアア……!?_」
仮面が真っ二つに割れた!
「うーん……やられた」
冥王は僕に倒れ込んで抱きつくとそのまま動かなくなった。
「終わりかな? ……息はしているから生きているのか」
とりあえず冥王の手足を縛って転がし、すぐにエリィ達へ向き直る。
「エリィ! ベルゼラ!」
「レオス君!」
「冥王は沈黙しましたか。では次の段階を……」
「なにをぶつぶつ言っているの! 《ストーム》」
ウッドゴーレムの肩に乗っているフードに、ベルゼラが強襲し風の中級魔法を撃った。いわゆる切り裂き系の魔法がフードとローブをズタズタにしていく。
「くぅ!?」
「え!?」
「嘘……」
そのフードの下から出てきた顔を見て、ベルゼラが驚愕。もちろん、エリィと僕も。なぜならその顔は――
「バス子……!?」
ベルゼラの付き人であり、ボケ担当のサキュバス……バス子だったのだ。
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