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第十五話 やりすぎのようなもの
しおりを挟むというわけで<クリエイト>の魔法をゼオラから教わることになり、陽が暮れるまで堪能することにした。
できることは結構多く、こんな感じのことを教わった。
・土を掘る、木を削る、岩などを加工することができる。
・素材を組み合わせることができる。
・イメージが乏しいと変なものができる。
などである。
ただ、液体を加工するのは物凄く難しくそれは別の魔法でやった方がいいとのこと。
「質量ってどうなってるんだろうなあ……」
【なんだ?】
「いや、魔法って凄いと思ったんだ」
実際、目の前にある折れた大木をテーブルとイスに変えてみたけど、ちょっと大木の大きさよりもこじんまりとしたセットが出来上がり残りの質量はどこにいったのかと不思議に感じていた。
「……重さとかっぽいな。詰まっている気がする」
【よくわからないが、初めてにしてはいい出来だと思うぞ?】
「あ、うん。ありがとう!」
そこが疑問じゃないけど褒められたことは嬉しいので素直にお礼を言おう。教えてくれたことのお礼でもあるけどね。
【それじゃ基本的なことは問題無さそうだから好きにやってみるといい。魔力切れだけは気をつけろよ】
「オッケー!」
とはいえここ最近すこぶる調子がいいので前みたいに倒れることは無さそうだ。使えば魔力量は増えるらしいしこういうレ〇ブロックみたいに自分でなにかを作るのは攻撃魔法を使うより楽しい。
「<クリエイト>……<クリエイト>」
【おお、凄いなウルカ】
ゼオラが開けた木の穴を拡張し、大人でも中腰になれば入れるようになった。そこから地面を掘り進めていき自分の身長と同じくらいの穴が完成。
しかしそこで問題にぶつかる。
「……やば、上がれない」
ちょっと深くなりジャンプして掴むのがやっとだった。
まあ、そこは土で足場を作ってやればいいだけなので大丈夫なんだけど。
「ふう……」
【楽しそうだな、なにを造るんだ?】
「こういうのが出来たらいいなと思っていた秘密基地だよ。木の入口の下に部屋を作るんだ! そこにベッドを置いたりテーブルやお菓子を置いてくつろげるように」
【男の子はそういうのが好きなのか? あたしはそういうの好きだけど】
「生きている時はどういうことしてたんだろうなあゼオラって」
【さあねえ。ぼんやり賢者をやっていたくらいなんだよ】
詳しく覚えていないけど本人がどうでもいいと思っているようだ。結婚していたのかとか子供は居たのかといった話はさっぱりなんだってさ。
【疲れたんじゃないか? あたしが膝枕をしてやろう】
「体に物理的な要素がないのに提案をするんだ!? ありがたいけど、全然元気なんだ! このまま進めるよ」
【お、本当? それは凄いな。退屈だしあたしも手伝おうかな】
ゼオラもやる気を出して来たのでここから二人で地下秘密基地の建設を始めることに。
ハシゴでも良かったけどもう少しスムーズに入れるよう斜めに掘り進み階段を作り、深さが僕と同じくらいになったところで部屋の作成へとはいる。
【そうだ、両手を上手く使ってやれば作業が早い】
「なるほど。足元が大変だなこれは」
部屋の入口を掘った後は内部拡張へ移る。
まずは大きさを考えて壁を作るところからだとぐるりと土を削りながらだいたいの位置で右に曲がる……のだけどここで力尽きた。
「うおお……地面の中の土って固い……」
地層が少し上と違うのかサッとはいかずに二メートルほど掘るのに三時間くらい費やした。
「これだけで結構な時間がかかったな」
【物に対してイメージが足りないのかもしれないね。その砂利交じりの土をケーキだと思ったら楽になるはず?】
「へえ、イメージは大事ってことか……ってなんで疑問形なんだよ」
僕がジト目で聞くと、口笛を吹きながら出口へ向かうゼオラ。その後を追って今日のところは帰ろうと外に出るとちょうど空が赤くなっているところだった。
「帰ろうか」
【だな】
そういえばここに来ていることは知っているはずなのに迎えに来たりしなくなったような? そんなことを考えながら屋敷へ到着すると母さんが出てきて驚いた声を上げる。
「まあウルカちゃん、泥だらけじゃないの!」
「あ、そういえば。えっと魔法で――」
と言いかけて僕はあそこが完成してから驚かせようと思って口をつぐむ。立派な基地を作って見せたいな。
「まずはお風呂に入ってから食事にしましょう。ウルカちゃんは大人しいと思ったのにやっぱり兄弟ね」
「お、ウルカおかえり。なんだ、派手に汚したな」
「ロイドもこのくらいの時はギルバードと虫取りをして汚していたでしょ」
「はは、違いないや! 本ばっかり読んでいると思ってたけどこれなら……」
「行きましょうウルカ様」
「はーい」
なんかロイド兄ちゃんがほくそ笑んでいたけどなんだろう。学校の話とか面白いし、友達とか連れてくるんだろうか?
今日の食事はオニオンスープに食パンと鶏肉のガーリックソテーと疲れた体に栄養が回りそうな食事だった。
もちろんサラダも食べた。僕は好き嫌いがない……のをいいことに、トマトを僕の皿へそっと置くギルバード兄ちゃんはなかなか可愛い。
そんな調子で満足のいく一日が終わった。
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