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第八十三話 お仕置きは仕方ないというもの

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「――以上が報告になります」
「ありがとう。ま、ゴブリン達は運が無かったってことで終わりだな」

 ギルドマスター執務室にてクライトが冒険者の報告書をから目を離して苦笑すると冒険者の男が肩を竦めて口を開く。

「ホブゴブリンが居ましたけど、クラウディア様が相手では話になりませんからな」
「なに、君たちだけでも十分対処できたと思うよ。ガイアス家の息子さん達が出てなければ無かっただろうけどさ」
「ははは。違いありません。ただ双子の強さは今の時点でDランク相当はありますし、心強いですよ。最近は末っ子のウルカ様が色々とイベントをやってくれるのでハラハラしますがね」

 冒険者が楽しいですが貴族が押し寄せてくると平民が委縮するということと、国王と王妃が来たということは喜ばしいが万が一があった場合恐ろしいと首を振る。
 その件についてはクライトも気になっていて、だからこそ防衛を厚くして万全にしたつもりである。

「……ま、それでもこの町で最強の戦力を持つ貴族の息子がやることだ。経済の回転もいい。今はこのままで問題ないだろう」
「ギルドマスターがそうおっしゃるなら我々は構いませんが、ウルカ様は妙なスケルトンを連れていたりするし、外からの人間の目は気にしたほうがいいかもしれませんね」
「うーん」

 年配の冒険者がそう言って笑いながら執務室を後にすると、クライトは腕組みをして天井を仰いで唸り声を上げる。
 しばらく目を瞑って考えていたがカッと目を見開いて一人呟いた。

「クラウディア様がいる時点でこればかりは仕方ないよな。双子が十五年、大人しく成長して卒業間近まで行ったのが不思議なくらいだ」

 割り切るしかない。
 クラウディアの息子ならもっと色々あってもおかしくないはずだがここまでなにも無かった。それが今、起こっているだけなのだと。

「ま、いよいよとなれば陛下に言えばいいよね、っと。さ、リンダを見送ってから仕事するかな」

 ウルカは賢いのでそのあたりは上手くやるだろうとクライトは考え、なるようになるかの精神で見守ることにした。
 娘も懐いているし貴族との結婚が出来れば安泰であるという打算もあった。
 特に妻のリンダが反対していないのも大きい。

「リンダが警戒するようなことがあればその時は――」


 ◆ ◇ ◆

「今日はどうするかな」
【魔法か?】
【剣術でござるか?】

 ゴブリン騒動から二日。僕はオオグレさんの部屋で一人暇を持て余していた。
 いつもなら三人と遊ぶか修行をやっている時間なんだけど、ステラ達三人は危ないことをしたということで叱られてしばらく家の手伝いをするように言われたのだ。
 あの日の夜、アニーとフォルドの両親が尋ねてきて謝ってきた。
 ウチとしては僕が悪いこともあるので謝罪は父さんと母さんもしているんだけど、反省させるためしばらく屋敷に来るのを禁止を三人に告げたというわけ。

【まあ仕方ねえよ。フォルドは女の子といい感じになったし対価としてはまあまあだろ】
「そう考えることにするよ。でもステラもアニーも十日は来ないし、久しぶりにずっと一人だからなにしようかなって」

 出会う前は一人で遊んでいたけど今じゃなにをして遊んでいたっけと思う位には三人と一緒に居ることが多い。

【ウルカ殿は外に出てもいいでござるし、修行でもして気を紛らわせるでござるよ】
「ふうむ、それもいいけど……。あ、そうだ! 村の外壁を強化する案を考えたかったんだ。ゼオラの時代とかの村はどうだったの?」

 外壁にしている丸太に鉄板を入れるという案は両親に却下されたので別の案が必要になったからね。
 そんなに金属は用意できないし村には巡回もしているから修理の手伝い程度で十分だと言われたのだ。
 暗に『他の村もそうしてくれ』と言われたら困るだろうというのがあるのだと思うとはギル兄ちゃんの言葉である。
 それはともかくゼオラの時代はどうだったのかと聞いてみると、

【え? いやああんまり変わらないぞ。やっぱり時代が進んでいるだけあってあの村でも十分強固だと思うくらいだ。今回は運が悪かったくらいだと思う】
「なるほど……」
【先にゴブリン達を発見して、迎撃態勢を取った。あのまま母ちゃんが助けに来なくても、ホブゴブリンが居ても、数で押し返せたと思うしな】

 僕には驚愕だったけどあれくらいは他の地域だと多分もっと起こりやすい事象のなずだとゼオラは言う。ここは母さんとリンダさんという特殊戦力が居るから長いこと周辺で暮らしている魔物は多分近づかないはずとも。

「そこまでなのか」
【多分、オオグレが定着したらさらに近づいてこないだろうな。この前のゴブリンは違う地域から来た流れものだろうから襲ってきたってところだな】

 そういうものらしい。
 道具のクリエイトはいいけど、防衛などをクリエイトすると戦争の道具になりそうだから目を逸らす意味でもやらない方がいいかもとゼオラは言う。

「だけどファムの村だし、フォルドのためにも安心はさせたいなあ」
【では村の周りに深い穴を掘ってみたらどうでござろう? 正門以外は入りにくい形になるのでは】
「ああ、そういうのあるよね」

 村の人と協議してそれは実現できそうな気がする。クリエイトでサッと掘ってしまうのもいいかもしれない。

「わんわん!」
「こけー」

 そんな話をしながら小屋で唸っていると外で動物達が僕を呼ぶ。とりあえず散歩でもしようかと腰を上げて外へ。

「っと、少し肌寒くなってきたかな」
「わふーん?」

 僕はシルヴァの体に抱き着き暖かさを感じ、お散歩へ。
 結局、暇な時間は修行とクリエイト……特に冬へ備える道具でも作ろうかと思いながら過ごすことにした。
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