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第百四十七話 家にも色々ありましてというもの

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「ふんふふ~ん」
「クルルル♪」
「こけっこー」
「ばうわう」

 というわけで宴が終わった翌日。
 僕はオミヨさんとクレシオスさんの家を作っていた。正確にはまずオミヨさんからだけど。

「間取りはこれで問題なかっただろうか?」
「大丈夫だよ。ちょっと小さいくらいじゃないかな? 将来結婚とか考えると広い方が――」
「けけけけけけ、結婚!?」
「こけけけけけ!?」
「ストップストップ!?」

 僕の言葉にオミヨさんがジェニファーの首を絞めながら動揺を見せた。危うくジェニファーが程よく締まって今晩の食卓に並ぶところだったよ。

「こほん。私は二十歳。今のところその考えはないので大丈夫」
「そっか。まあ、その時が来たら建て直してもいいしね。でも犬小屋は必要なんだ」
「うむ」
「わおん?」

 そう言ってシルヴァをじっと見る。当のシルヴァはよく分かっておらず首を傾げていた。

「シルヴァはあげないからね? 普通に犬か魔物を拾ってきてよ?」
「う、うむ……」

 こういうことはハッキリと断っておく方がいいと思い先手を打っておく。欲しいとは言わないまでも貸してくれくらいは言いそうだったからね。
 ウチのシルヴァは可愛いから仕方ないけど。

【ウルカよ、骨組みはこんなものでいいか?】
「あ、ボルカノありがとう! それじゃどんどん作っていくよ」
「クルルル!」

 オミヨさんが欲しがったのは2DKの間取りで、ウチと同じく縁側と庭を希望。
 キッチンはそのままだけど、寝室は畳がいいということで一部屋は畳部屋となった。オオグレさんの小屋にあった囲炉裏は庭に茶室みたいな感じで作っておいた。
 精神を集中させるための部屋として一畳程度の部屋である。

「できた……!」
「おおおお……! 夢にまで見たマイホーム……! しかも故郷仕様とは……。ウルカ殿、かたじけない」
「ここまで来てくれたお礼みたいなものだから大丈夫だよ。領地を広げていくから協力、お願いしますね」
「もちろんだ! ふふ、では早速――」

 そう言って庭へ入っていくオミヨさん。この時点で昼前になったので、やはり一日二軒が限界だと感じる。
 足取りが軽いオミヨさんを見送った後、僕は次の土地へ赴く。

【……終わったでござるか?】
「オオグレさん。終わったよ!」

 そこでひょっこり出てくるオオグレさん。同郷なので話をしたいと考えているけど、オミヨさんはアンデッドが苦手なので隠れてもらっていた。

【うう、後生でござる……】
「まあまあ、いつか分かり合える時が来るかもしれないし。それより、安全ヘルメット似合うね」
【ほほ、そうでござるか?】

 僕の言葉にスッと姿勢を正して『安全第一』と書かれた黄色い木のヘルメットに手をかける。工事中ですというのを知らせるため、僕を含めて作業に当たる者には全員被ってもらっている。
 ……まあ、動物達が欲しがるとは思っていなかったけど。

「にゃー」

 お気に入りになったらしいフォルテの上で伸びきっているタイガも被っている。ジェニファーもハリヤーも『安全第一』だ。

【我のヘルメットも良いであろう】
【そうでござるな!】
【お揃いとは悪く無いものだ。では移動しよう】
「うん」

 何故かご満悦のボルカノを引き連れて歩いていき、次のクレシオスさんのところへ到着。すると――

「い、いや、だって一時避難場所みたいなもんだろ?」
「あたし達のクジ、結構後だったからさぁ、しばらくは住むつもりなんだよねぇ」
「そうそう♪ 3LDKまではいけるなら一人一部屋いけるじゃん」
「で、でも、ウルカ様が大変だよ? ……それに出て行ったら広い家は寂しいだろうし……」

 ――と、ギャル騎士二人となんだかワイワイやっているところへ遭遇する。

「こんにちはー! 家を作りにきました」
「あ! ウルカ様ごきげんよう、です。ははは……」
「ウルカ様ぁ、しばらく一緒に住むのはいいですよねぇ?」
「え? まあ、家主が良ければ。でも嫌がっているのはダメかなあ」
「「嫌がってないわよね♪」」
「うわあ!?」

 その瞬間、二人が両脇から抱き着いてクレシオスさんの鼻から血が出た。いい人そうだなあ。

【ひゅう、羨ましいでござる】
「オオグレさんはいいから。それじゃ、見せてもらってもいい?」
「あ、は、はい」

 家の設計図を見て僕は目を丸くする。見た目的には普通の家だけど――

「あの、この部屋はどうしてダブルベッドなんですか? それにお風呂も二人で入れるくらい大きい……」
「あはは、だってぇ。クレシオスが寂しいって言うから一緒に、ね?」
「えええー!?」

 金髪ストレートのギャル騎士である、確か名前はキャシーさんがウインクをする。照れるというかなんとも言えない顔のクレシオスさんにもう一人の茶髪ギャル騎士、サラさんが口をとがらせる。

「あ、じゃあ私もダブルベッドにする」
「いいって、キモいクレシオスはあたしが引き受けるからぁ」
「ちょ、二人とも喧嘩しないで」

 なるほど……この二人、クレシオスさんのことが好きなんだな!? 煽っている風に聞こえるけど、その実、牽制し合っているのがよくわかる。名前もだけど主人公っぽいしねクレシオスさん……!

「まあまあ、いいですよこれで。その内どっちかがクレシオスさんの奥さんになると思いますし」
「「ならないわよ!?」」
「そうですか? このダブルベッドでエッチなことをするんでしょ」
「こ、子供が……!」
【わお、珍しくウルカ殿が面白いでござる】
「わんわん!」

 僕の言葉に顔を赤くする二人のギャル。クレシオスさんは聞いていなかったようでオロオロするばかりだ。

「こ、子供が考えるエッチなんてたかが知れているわよぉサラ」
「そ、そうね。キスくらいでしょ――」
「え? 〇〇を××して△△を――」
「「ストップ!? ガチじゃん!?」」

 禁止用語が飛び出したところでオオグレさんがはしゃいで、クレシオスさんが片膝をついた。ギャル二人が慌てて止めてきてちょっと離れたところで話をする。

「……ウルカ様、気づいているじゃんね」
「まあ。僕、奥さん候補が今は三人居るし、本もよく読むから」
「ませてる!? ……ま、まあ、そういうことよねぇ……あいつには言わないでよぉ」
「もちろん!」

 こんな面白そうなことをすぐに終わらせるわけにはいかない。もしかしたら子供が本当にできるかもしれない。そうしたら新領地第一号の子だ。
 そして僕は悪い顔で言う。

「……それで、ダブルベッドは一つでいいのかな?」
「「……全部屋に」」

 承った。
 この恋模様の結果は楽しみだな。先の話だろうけど。
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