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第百六十八話 ポンプを求めて町中をというもの

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「ウルカ様、お久しぶりですな!」
「こんにちはモダンさん! 突然お邪魔してすみません」
「いえいえ、いつでも歓迎いたしますぞ。あのカトブレパスは元気ですかな?」
「うん。今は庭に居させてもらっています」

 僕の言葉に町長のモダンさんが微笑みながら頷く。
 用事的に時間がかかるのでシルヴァやフォルテ、ハリヤーはこのまま庭に居させて欲しいことを伝える。するとモダンさんは顎に手を当ててから口を開く。

「時間がかかる用事とはいったいどのような……?」
「この町にも給水用のポンプがあると思うんですけど、その構造を見せて欲しいんです。設置してあるものをバラバラにするか、作っている人を紹介してもらえたら……」
「ポンプですか。確かに高価な品なのでこの屋敷にはあります。他の家庭でもあるところにはありますが、一度バラバラにするとなると困りますなあ……」

 まあそれはそうだと思う。しかも時間がかかると宣言しているから、しばらく水が出せなくなるということだしね。
 しかしアテがあるらしくすぐに提案を出してくれた。

「ポンプを作っている訳ではありませんが、修理と設置をしてくれるお店がありますから紹介しましょう」
「あ、お願いします!」
「では職人を呼びましょう」

 と、モダンさんが言ったところで僕は手を上げてそれを止めた。

「紹介状とか書いてもらっていいですか? 買い物もするので、直接たずねてみようと思うんですけど」
「そうですか? 私は別に構いませんので少々お待ちを――」

◆ ◇ ◆

「話が早くて助かるな」
「うん。工房は町の東側にあるみたいだね」
「職人さんも派遣されてくるようですし、また忙しくなりますね]
「パンのお店が出来たら買うと思うわぁ」

 とりあえず前回の交渉で派遣してくれる職人さんはパン、理容、コックといった生活がちょっとよくなる人達を集めてくれた。
 二日後に出発する予定だったらしいので楽しみである。

「パンを焼いたりする工房とか必要だよね。その辺はちょっと無理をすればできるかな」
「職人さんの家を先に作ったら騎士達に不満が出ないでしょうか?」
「それは大丈夫ですよぅ。元々、キャンプ生活を基本とする予定だったのがウルカ君のおかげで変わっただけですしね」
「過酷……!? 何十年もかかる可能性があるのに……」
「ははは。そりゃどっかで建築はしていたと思うけどな。今回みたいに職人を連れてくるみたいにさ」

 ある程度危険や地盤ができてから呼ぶつもりだったそうだけど、僕がちゃちゃっと作ったので必要がなくなったらしい。まあ、一軒建てるのは時間がかかるから僕がやったほうが早いのは間違いない。

「バスレさん達は先に買い物をする?」
「いえ、ウルカ様についていきます」
「オッケー、なら工房の後でお昼ご飯を食べてショッピングをしようか」
「食料も買っておきましょうか」

 しばらくは金策するどころか消費しかできないんだよねえ……。
 ちなみに例えばパン屋さんが出店されたら、僕達はきちんとお金を出して買う。
 ただ、人口が増えるまでは国王様からの援助資金で運営することになるんだけどね。それは承知してくれているらしい。

「まずはテストケースでもいいから人を増やさないとね。住宅展示場でも作ろうかな」
「なんだいそれは?」
「あ、ここみたいよぅ」

 騎士さん達に好評だったから、こういう家がもらえますとか各町にビラを配れば少しは集まるんじゃないかな? 税金とか色々考える必要が出てくるけど。
 そんなことを考えながらベルナさんが指した家屋へと近づいていく。

「おう、こんな仕事じゃなくてもっとかっこいいのはねえのかよ!?」
「金を稼ぐのにかっこいいとか関係ねえ。もらった仕事をこなすのがプロってやつだ」
「剣とか槍を作って献上とかしたいとか思わねえのか!」
「……ふん、ガキの発想だな」
「んだと……!」

 近づいた瞬間、中から怒声が聞こえてきた。年配っぽい人の声は落ち着いているので会話からすると――

「こんにちはー」
「あ?」
「いらっしゃい」
「お邪魔させてもらうよ。町長からの紹介で来たんだけど時間はあるかな?」
「町長から……!」

 工房には二人の男性が居て、一人は親父さんって感じの灰色髪をした人。もう一人は目元が親父さんに似ているので息子って感じだろう。
 町長からの紹介と聞いて驚いている息子さんらしき人の横で親父さんが腰をあげて挨拶をしてきた。

「俺はドランという。こいつは息子のグラフだ。モダン……町長の紹介とは珍しいな」
「これ、どうぞ」
「ん」
「なんでえ?」

 僕が紹介状を渡すと、ドランさんが開いてグラフさんが覗き込む。目を通した後、ドランさんが丁寧に紹介状を折りたたんで小さく頷いた。

「ウルカ様ってことは貴族、か」
「はい。でもあんまりそこは気にしないでいいですよ」
「わかった。それにしてもポンプに興味があるとは面白い子供だな、どうするんだ?」
「えっとですね――」

 僕がかくかくしかじかして領地にポンプと下水道の構想を語ると、ドランさんは冷や汗を一筋流しながら口元に笑みを浮かべ、グラフさんはというと、

「すっげー……! ウルカって言ったか、すげえな! な、なあ、オレもその村に行ってみたいんだけどダメか?」

 そんなことを言いだした。
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