俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
54 / 253
第二章:異世界人は流される編

第四十八話 真夜中の追跡

しおりを挟む


 「どこ行きやがった……!」

 窓の外から飛び出した人影の後を追い、屋敷の外へ出るが見失ってしまう。ダッシュしながら俺は考えを巡らせる。

 ……ソシアさんを抱えてそれほど速く動けるはずがない。でも道にいないってことは……。

 「上か!」

 見上げると、屋根づたいに走る人影を発見することができた! 月明かりのおかげでソシアさんの姿までハッキリ分かるほどである。

 「待てー! ル〇ン!!」

 俺は地上を走り、徐々に距離を詰めながら叫ぶと、慌てた様子で声をあげていた。

 「嘘!? もう追いついてきた!? 『魔』は高いと思っていたけど、身体能力も!? ていうかル〇ンって誰さ!?」

 「足の速さなら負けないってんだ! ≪炎弾≫!」

 ボヒュ!

 俺の放った火の玉が……ええっと……予告状といえば怪盗か! というわけで火の玉が怪盗に向かって飛んでいく。が、すんでの所で回避された。

 「うわお!? 人質がいるのにえらいのを飛ばしてくるじゃないか……!」

 「チッ、外したか。こちとら回復魔法持ちだ、ちょっとくらい許してくれる! ……多分」

 「多分!? ……何て恐ろしい男なんだ……さて、どうするかね……おや、あれは……」

 何か考え始める怪盗だが、俺は目を離さない。とはいえ、屋根の上では手が出しにくいのも事実。こっちも何か考えないと……ん?

 シュタ!

 そこで怪盗が俺のいる通りに速度を緩めずに降りてくる。

 「観念したか!」

 「どうかな? ≪ポイズン・フォグ≫」

 「何!?」

 走りながら俺に半身だけで振り返り、片手から煙のようなものを出してきた。意思をもったかのような煙にまとわりつかれると頭がクラっとした。

 「殺しは主義に反するから軽いものだけど、徐々に体の自由が失われる。派手に動くと毒の回りが早くなるから気をつけなよ?」

 確かに身体の動きが鈍くなってきた……!

 「ぐぬぬ……舐めるなよ! ≪爆風≫!」

 ゴォォォォ!

 見よう見まねで覚えた風の魔法を使って霧を吹き飛ばした!

 「げ!? むちゃくちゃだな!?」

 『速』俺の方が上、少しばかりのアドバンテージなどものともせずあと一息まで追い詰める! だが、一歩というところで悲劇は起きた!

 「もうダメだー! ……なんてね♪」

 芝居がかかった声で叫んだあと、ニヤリと口元を歪めて怪盗は十字路の中央で大きくジャンプした。

 「上に逃げても着地で捕まえれば……」

 俺は上を見ながら走っていたが、それ故に気付かなかった。

 ドーン!

 ブヒヒーン!

 「ぐあああ!? 何だっ!?」

 転がりながら目を見開くと、通りの横から出てきた馬車に轢かれたのだということが理解できた。こいつ、初めから狙ってたのか!?

 「残念だったね! それでは失礼するよ」

 ご丁寧にウインクをしながら手を敬礼のように頭の上に置いて走り去っていく。

 「まだまだ……! ≪ヒール≫」

 ダメージは負ったが回復すれば問題ない。追撃をかけようと立ち上がった所で声をかけられた。

 「も、申し訳ありません、ウチの者が……だ、大丈夫ですの? ……ってあなたは!?」

 愛想笑いをしている御者と思わしき男を引き連れて出てきたのは……レムルだった。どうしてまたこんなところに? いや、それは今考えることじゃないな。

 「レムルか、すまないが急いでいる。この通りピンピンしているから気にしなくていいぞ!」

 「急いでいるってどういうことですの?」

 「それを話している暇もないってこった! じゃあな!」

 「あ、ちょ……速っ!?」

 俺はクラウチングスタートの構えを取った後、即座にその場を離れるために駆け出した。間に合ってくれよ……!



 ◆ ◇ ◆


 「ありゃあすげえや……お嬢さんのお知り合いで?」

 「学院の生徒、ですわ……こんな時間に一人で何かを追いかけているようでしたが……気になりますわね」

 「はは、王子以外で異性が気になるとは珍しいこってです。さ、とりあえず大丈夫そうだったしお屋敷へ戻りましょうや」

 「……いえ、彼を追ってくださいまし」

 「は?」

 「聞こえませんでしたの? 彼を追いなさいと言ったのです」

 「い、いや、しかしタダでさえ遅くなっているのに……おい、ツォレ。お前からも言って……」

 「……オレも追いかけるのに賛成だ」

 「本気かよ、旦那様に叱られるんだぞ? ……へいへいしゃあねぇな……乗ってください。ちっとばっかし揺れますが文句言わねぇでくだせえよ!」

 「問題ありませんわ! 何を隠しているのか知りませんが、わたくしが確認してさしあげますわ! オーッホッホッホ!」


 ◆ ◇ ◆


 「こっちの方に来たと思ったけど……」

 見当たらない。

 俺より遅いとはいえ、怪盗の足は決して遅くなかった。なにせソシアさんを担いだままであの速度だ、ソシアさんが居なければ俺と互角かもしかするとさらに速いかもしれない。
 レムルとの会話はそんなにしていないつもりだったけど、十分ロスとなっていたらしく、辺りを見渡しても人の気配は無かった。

 「このへんはあまり人が住んでいないのか……」

 見れば、灯りのある家はそれほど多くなく、時間を考えるとそんなものかとも思うが、それにしても気配が少なすぎた。

 「ドラマとかだと廃屋のどこかがアジト、という線が濃いな。しらみつぶしに探していくしかないな……」

 「ふう……」

 「ぎゃああああ! 出たぁぁぁあ!?」

 俺が覚悟を決めた時、いきなり耳に生暖かい風を感じて俺は飛び上がって驚いてしまった。一体なんだ!?

 「いいリアクションね。こんばんは、異世界の人」

 長い紫の髪をポニーテール状に束ね、ライダースーツのようにピッチリした体のラインがハッキリわかる魅惑的な皮の服を着た女性が俺ににっこりと笑いかけてきた。それを見て俺は口を開く。

 「あ、あんたは……誰だっけ……?」

 ガクッとこける女性が焦ったように俺の襟を掴んで目をじっとみながら一気に捲し立ててきた。

 「本気!? 昼間あったばかりなのに忘れるかしら? そりゃ髪型も服も違うけど、予約までした相手にそれはちょっとないんじゃないかしらね?」

 俺も目を細めて見返すと、その正体に気付いた。

 「あ!? レリクスの横に居たメイドさん……!」

 「やっと気づいてくれたのね」

 「そらそうだろ、メイドがこんなところにいると思う訳がない。何をしてるんだ?」

 「まあ、一理あるわね。 で、何を、ね。忘れたの? 婚約者候補には密偵をつけているって話」

 密偵……そういえばレリクスが身辺調査のためソシアさんにつけていると言っていたが……。

 「お前が、そうなのか……?」

 「ええ。ソシア様が学院に行っている間は学院を徘徊するお洒落なメイド。夜は淫靡な密偵……それがこの私、ペリッティよ!」

 「そうか、俺は急いでいるからまた今度な」

 昼とまるでテンションが違うペリッティについていけないので、俺はさっさとソシアさん探しを再開する。

 「待ってよ待ってよ!? 冷たいわね!」

 「ええい、離せ! 俺は……」

 首をぶんぶん振りながら俺の腰にしがみついてくるペリッティを引きはがそうとした時、ペリッティが微笑んだ。

 「ソシア様を探している、そうでしょ? フフ、私はソシア様についている密偵よ? 誘拐されるところは見ていたわ。アジトを突きとめようと思って様子を見ていたけど、あなたがヤツを追いかけてくれたおかげで、私の気配には気付いていなかった。だから、最後まで追跡できたわ」

 「何? それじゃ……」

 「ええ、ソシア様の居場所は分かっているわ。行きましょう」

 「……分かった」

 罠かもしれないが、闇雲に探すよりは乗っておいた方がいいかもしれない。

 一応、ソシアさんの寿命が尽きるのは今日ではない。『こっちよ』と合図をしてきたペリッティに頷き、俺は後についていった。
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...