俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
83 / 253
第四章:風の国 エリアランド王国編

第七十六話 エル二ーの港町

しおりを挟む
 さて、とりあえず身バレしないよう町中へと潜りこんだ俺は宿と、この町にもきっとあるアドベンチャラーズ・ユニオンを探しに散策を開始する。

 「……」

 たまに振り返って確認するが、ティリア達が追ってきているということは無かった。どうやら今度こそ目的地へ向かったようだ。このまま別の船に乗って旅立つのも悪くは無いが、俺を探すことができるみたいなので次に会った時何を言われるか分からないのでそれは止めておく。

 「向こうとそんなに変わらないな。おや、あの看板は……」

 シャクっとアンリエッタ産のリンゴを齧りながら適当に町をぶらつくと、ユニオンを発見することができた。宿の前にユニオンに顔を出しておこうか。

 ちなみにユニオンの特徴は、どの町も似たような外観と看板をしているということで、コンビニみたいな没個性だなと思える感じ。

 「さて、流石にこの町まで俺のことは手が回っていないだろうと思いたいが……」

 中へ入るとウェハーの町とは違う配置の内装に戸惑いながら受付へと向かう。

 「いらっしゃませ! エルニー支店へようこそ、今日はどういったご用件でしょうか?」

 「何か魔物の討伐依頼が無いかと思って来たんだ。ここには初めてなんだけど、他の町と何か違うところがあれば教えてもらえるかな?」

 「かしこまりました。ではこの町での登録を行いますので、カードのご提示をお願いします」

 俺は財布からユニオンカードを取り出して受付のお姉さんに渡し、カルモの町でも見た板の上に置くとぼんやりと光り、すぐに消えた。

 「お名前はカケルさんで、レベル7の戦士ですね。受付が終わりました。えーっと……すいません、本日は討伐できる魔物の依頼は残っていないですね」

 ありゃ、そうなのか。まあ、もう夕方に近い時間だし、とりあえず登録できただけでもいいと考えるとしよう。

 「なら明日また来るよ、別に急いでいないから気にしないでいいぞ。じゃあ次は宿へ……」

 「ありがとうございます! 宿でしたら、ユニオンを出て右へ向かうと一階がレストランになっている宿屋”フラワー”がありますよ」

 「そうか、ありがたい。それじゃまた来るよ」

 小麦粉みたいな名前の宿だなと思いながら、俺は水色の髪をしたベリショのお姉さんに挨拶をしてユニオンを後にする。
 とりあえず俺の名前を見ても特に動揺したり、マスターを呼んだりすることはなかったのでここなら気軽に依頼を受けることができそうだ。

 「フラワー、フラワーっと……ここだな」

 一階がレストラン、二階には『宿』の看板があるので間違いなさそうだ。入り口は別になっているので、二階へと足を運ぶ。

 「いらっしゃいませ~何名様ですか?」

 二階のドアを開けると、赤いくせっ毛をしたそばかすのある女の子が出迎えてくれた。

 「一人で、一週間ほど滞在したいんだけど」

 「はいはい~♪ 部屋のランクはどうされますか? お客さん見たところお金無さそうだし、一番安いのにしておく?」

 「失礼だろそれは!?」

 「いやあ、でも結構見た目って重要なんですよ? 人は中身が大事! って言いますけど、初めて会う人ならパッと見の印象で8割くらい決まると思いません?」

 ハッキリ言うなあ。

 「……人を見かけで判断しては良くないぞ! 一番高い部屋より一つ下のランクを頼む」

 「マジですか!? 昨日まできっと野宿してたなって感じのお兄さん!」

 「やかましいわ。で、いくらなんだ?」

 「まあ微妙にヘタレて一つしたのランクというのは好感が持てますね。えーっと、まとめての宿泊になるので、49000セラになります!」

 一日7千セラ……いいお値段か。

 「ちなみに一番安い部屋だと?」

 「17500セラです。今ならまだ引き返せますよ?」

 ニヤニヤと笑いながら聞いてくる女の子に、俺は財布を取り出して5万セラを受け付けに叩きつけた!

 「おおー!? マジですか!?」

 するとくせっ毛の端からぴょこんと耳が飛び出てきた。

 「お、それはねこみみ……?」

 「ハッ!? ……では1000セラのお返しになります。朝食はこのプレートを一階のレストランへ持っていけば食べられますよ」

 何事も無かったかのように営業スマイルで接客に戻る女の子だが、冷や汗が凄い。しかしここで追及すると面倒なことになりそうなフラグが見えるのでここの選択肢はスルーだ。

 「サンキュー、部屋の鍵は?」

 「あ、ああ!? こ、これですこれです! ……怒らないんですか?」

 「? どうしてだ? 口は悪かったけど、別に怒る程のもんじゃないぞ。それじゃ、ゆっくりさせてもらうよ」

 「あ、はい」

 おそらく、学院の授業で聞いた闇狼の魔王がいる大陸の獣人なのだろう。向こうの国には居なかったから珍しいものが見れたな。そんなことを思いながら、俺は部屋へと向かった。


 「流石は一番上より一つ下のランクの部屋……!」

 部屋は四階にあり、セミダブルのベッドに豪華な洗面台、風呂もついていて海が見渡せる絶好のスポット。五階がもうワンランク上みたいだけどこれからどう豪華になるのか気になるレベルである。

 <ソシア様の所を出てからはテントに工房、船の中とロクな寝床に居ませんでしたからね>

 ナルレアがベッドに腰掛けた俺に話しかけてくる。確かにここ最近まともなベッドで寝た覚えがない……。

 「だなあ……久しぶりにベッドで休ませてもらうとするかね……」

 気づけば俺は眠りに落ちていたのだった。


 ◆ ◇ ◆


 <――様、カケル様。起きてください>
 
 「んあ……? 今何時だ……?」

 <20時を回った所です。そろそろご飯を食べないといけないのでは、と思い起こしました>

 「ふあ……それは助かる……」

 宿に着いたのが16時くらいだったから4時間くらい寝たのか。朝食はつかないって言ってたから下のレストランか、他の飯屋に行くしかないか。

 「レストランは朝食に期待するとして、適当に出てみるか」

 <レシピが増えるといいですね>

 「ああ、そういう目的も面白そうだな。最終的に魔王じゃなくてコックになれそうだけど」

 そんなことを話しながら夜の町へと繰り出していく。

 ユーキの居たフルスの港町と違い、漁港としての機能はそれほど大きく無いようで海産物を食べる店は多くないようだ。
 町の外は森と林が広がっており、魔物も出るがエリアランドの王が居る城の辺りは観光に適した開発をしているらしい。まあ、いつか気が向いたらそっちに足を運んでみようと思う。そろそろどこかで飯を食いたいなと思っていると、いい感じの酒場を見つけることができた。

 「一人だけどいいかな?」

 「いらっしゃい! 好きな所に座ってくんな!」

 威勢のいいおじさんがにっかりと笑い席につくよう促してくれる。店内を見ると、冒険者や一般人など様々だ。

 「……エルフが多い気がするな」

 「そりゃこの国はエルフの故郷だからね! いらっしゃい、何にする?」

 三角巾を頭に付けたおばさんが注文を聞いてくる。へえ、森が多いだけあってエルフの故郷ってのは何となく納得がいくな。それはともかく、まずは注文だ。

 「何か腹に溜まるものがいいな。酒はどんなのかある?」

 「酒はビールと果実酒だね。壁にメニューがあるけど、とりあえずマスターのオススメでいいかい?」

 特にこれ、と決めていないので俺はビールとオススメで一旦注文することにした。壁のメニューを見ながら次に何を頼むか考えていると、ふいに別のお客さんの話が聞こえてくる。


 「何か最近ゴブリンが多くないか?」

 「あれ、お前しらねぇの? 国が森を切り開いて土地開発を始めたんだがよ、それをエルフたちが気に入らないってんで抗議しているんだわ。森の魔物はエルフたちが自主的に倒してくれていたけどその件で自分たちが脅威にならない所は無視されているんだ」

 「マジか……エルフの王って風斬の魔王だろ? 国王はどういうつもりなんだ……」

 「分からん。ここ半年くらいで急に人が変わったようにそんな話になったらしいぜ」

 「まあ、俺達が倒せば金にはなるからいいけどな……」

 「女が襲われないことを祈ろうぜ」



 土地開発関連だとよくある話だ。しかし国王が魔王だと思っていたけどエルフの王が魔王だったとは……ゴブリンが多いとなるとティリア達が危ないのか? いや、でも魔王だし剣騎士も賢者もいるし大丈夫だろう……。

 「はいよ! ビールに今日のオススメ『カキのバター焼き』と『ブリのセイユ煮』だよ」

 おお、ぷりぷりのカキにバターの香りが食欲をそそる。ブリのセイユ煮はいわゆる煮つけだな。こちらも味が染み込んでいそうで美味そうだ。

 「今日のオススメはそれが最後だよ、運が良かったね」

 「マジか、ラッキーだな。後、ライスはあるのかい?」

 「ライスかい? あまり頼む人が居ないからそんなに作ってないけど、一応あるよ」

 「なら、ライスにクレイジーバッファローのステーキを追加で頼む」

 「あいよ」

 と、おばちゃんが注文を受け付けてくれたところで、大声が響き渡った。

 「何! オススメが無いだと!?」

 「ああ、さっきそこの兄ちゃんに出したので最後だ」

 「ほう……」

 マスターが肩を竦めて言うと、髪を短めに切りそろえた大きな体躯をした男が俺に向き直ってきた。あ、これ巻き込まれるパターンじゃね?
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...