俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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第六章:ヴァント王国の戦い編

第百四十八話 本当の危機

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 「なかなかやるじゃねぇか! 『穿孔牙』!」

 【ぬうう! このレベルでは大技が出せん……! ≪ストーンスクラップ≫】

 鋭いフェルゼンの突きが、斬撃がシュラムへと繰り出される。シュラムは検討していたが、徐々に力負けをしてきていた。

 「す、すごい……あれを簡単にいなすのか……」

 「魔王ならではってところだろうな。カケルもデブリンを倒した時、あんな感じだったしな」

 グランツが回復され、フェルゼンの戦いを見ていると、ニドも隣に立ち言う。畏怖と力の象徴たる魔王の存在感はそこにあった。

 「なんでもいいから尻だし男を倒して欲しい。見苦しい」

 「……全くその通り」

  だが、トレーネとサンの言葉で一気に緊張が途切れた。ガクっとしながらもコトハが口を開く。

 「ま、まあ、今回はサンたちの言うとおりですね。このまま行けば押しきれそうですし、下手に手を出すより見ていた方が良さそうです」

 「おう、嬢ちゃんの言うとおりだ! こいつは俺の獲物だ、邪魔したら許さねえぞ」

 【≪アースブレイ――≫ぐぬ!?】

 ベキンと、岩と土で出来た剣を砕かれ、まともに切り裂かれるシュラム。ババッと後退し魔法を連続で放っていく。

 【消耗が激しいが仕方あるまい……≪グランドネイル≫≪グランドスプリット≫ぉ!!】

 「うお!?」

 間合いを離され、追撃をかけようとしたフェルゼンに、地面からの棘が襲う! 足止めを受けたところに、地面が割れ、バランスを崩す。

 【まだだ! ≪アースブレイド≫! かぁぁぁ!】

 「チィ!」

 咄嗟に身をよじって首への直撃は免れたが、装備していたアーマーにヒビが入った。返す刀でアースブレイドを粉々にしながら口笛を鳴らす。

 「ひゅう、あぶねぇ」

 【くぅ……英雄相手ではこのレベルでは無理か……! ならば! もういっちょ≪グランドスプリット≫!】

 ゴゴゴ……

 「あいた!?」

 シュラムがさらに裂け目を作り、そこに足を挟むフェルゼン。その瞬間、シュラムが走る。

 【こうなっては仕方ない、お前の血と肉。いただくぞ!】

 「わ、私!? ひ、ひいいい!」

 先ほどはプライドを優先して食らわなかったパンドスに狙いをつけ、襲いかかる。

 「まずい! これ以上レベルを上げられたらエリアランドの二の舞になる!」

 パンドスはグランツ達とは逆の位置で一人身を縮めているので、障害はなく、後数秒で骨と化すに違いない。誰もがそう思っていたその時である。

 「ゴ、≪ゴーレム生成≫! わ、私を守れ!」

 【ゴーレムなど粉みじんにしてくれる】

 歓喜の声をあげ、迫るシュラム。それと同時に、パンドスの目の前の地面が、ズズズ……と盛り上がる。

 「で、出てこい! は、早くぅ!」

 【残念だったな! もらった――】

 後一歩、だが、その後一歩が届かなかった!

 ズン!

 【うぐお……!?】

 パンドスの声に応えたゴーレムが急激に成長。即座に頭突きで攻撃し、シュラムの股間へと激突した。たまらず頭からヘッドスライディングをかまし地面に転がる。

 「……ゴーレム?」

 「ハニワに見えるけど……」

 マナが少なくなったパンドスは大きなゴーレムしか生成できなかったので、シンプルな形のゴーレム(ハニワ)が誕生していた。


 「今のうちに逃げないと……ああ……こ、腰が……」

 「世話が焼けるわね、こっちよ!」

 影に隠れて様子を伺っていたペリッティがへたり込むパンドスとハニワゴーレムを抱えて呻くシュラムから離れ、グランツ達の所へ戻る。

 「は、はあ!? た、助かった……! よ、よくやってくれた!」

 パンドスが涙目でゴーレムのつるんとした頭を撫でると、褒められてカタカタと体を揺らすハニワゴーレム。足は無いのに主人の周りをぐるぐるとまわっていた。

 「かわいい。あれ欲しい」

 「……脅せば作ってもらえるかも」

 トレーネとサンが物騒なことを話していると、ようやくシュラムが立ち上がり、数度ジャンプする。同時にフェルゼンも首を鳴らしながら足を引っこ抜いて地面に立つ。

 【ま、まだだ……!】

 「さっきの打ち合いで分かった。お前じゃ俺には勝てん。そろそろ本当に終わりにしようや」

 もう飽きた、とばかりに笑いを止め、大剣を構えてシュラムを見据え、駆け出した。

 【≪グランドネイル≫!】

 「終わりだ『塵ト化シ灰トスル……!』」

 地面を抉らんばかりに剣を下げ、そこから上へと斬りあげる! 剣が輝き、シュラムの身体を閃光が走った。

 ブバシュ……!

 【が、あああ……!!?】

 ざっくりと斬れたシュラムは、腹が裂け、右腕が飛んだ。両膝をついて血を吐いて倒れる。

 【ま、まともに復活していれば……き、貴様など……!】

 「まだ生きてるのか、流石に破壊神の力の一部。タフじゃねぇか。嫁に死なれた後は適当に生きている俺だが、やることはきちんとやらねぇと怒られちまうからな」

 【お、おのれ……】

 「あばよ。残りの封印も潰してやるから安心して死ね」

 首を刎ねれば息絶えるだろうと、フェルゼンが大剣を振りかざした。それを見てニドが安堵して呟く。

 「何とかなったか……これで一つは潰せた」

 「しかし、不完全な復活でもこのレベルの相手では魔王様の強力無しで倒すことは不可能だな……」

 グランツが拳を握り悔しそうに呻く。いよいよ首が刎ねられると思った瞬間、フェルゼンが吹き飛ばされた!

 ガゴン!

 「ぐお!? なんだってんだ!?」

 不意打ちだったので、防御せず吹き飛ばされたフェルゼンはかろうじてズザザ……と、ふんばる。だが、ヒビの入ったアーマーは砕け散り、口からは一筋の血が流れていた。

 そして、シュラムの前に立ち、フェルゼンを吹き飛ばした人物を見て、ブルーゲイルの面々は青ざめていた。

 「あ、あいつは……!?」

 アルが叫ぶと、その人物がシュラムに声をかける。

 【ふむ。危ないところだったなシュラム】

 【お、お前は……グラオザム……! ふ、復活していたのか……】

 【ああ。近くにお前の封印があることを思い出してここまできたのだが、不完全な状態のようだな。ふむ、そして見たことのある顔もいるな。生きて帰れた幸運をまた捨てに来るとは】

 バサっとマントを翻しながらニド達を見る。

 「あ、ああ……だ、ダメだ!? こ、殺される……! あいつは本当にやばい!」

 ドアールが冷や汗をかいて叫び、サンがごくりと唾を飲みこむ。

 「あいつがエリアランドで封印されていたやつか……! 確かに、ここにいるだけで目がくらむ……!」

 「まいったわね……正面からは私でもきついわこれ」

 グランツが震える手で剣を持り、ペリッティがダガーを構える。すると、グラオザムが目を細めて一行を見る。

 【ふむ、これだけ贄があればその傷も丸だしの尻も回復するだろう。手伝ってやるぞ】

 【助かる……私は……動けそうもない……あと、尻のことは言うな……】

 グラオザムがグランツ達の元へ歩き出そうとしたところで、すぐ横から大剣が伸びてきた。

 【!】

 スッと下がり、それを難なく躱すと、目の前にフェルゼンがニヤリと笑い立つ。

 「いいねえ、もう一匹沸いて出たか。それにお前の方が強そうだ」

 【ふむ。今度は英雄の登場か。光の勇者、風の守護者には会ったが、やはり邪魔をするのだな】

 「知るかよ! てめぇもここで消えてもらうぜ! おい、お前等今のうちに逃げろ! こいつは確かにまずそうだ!」

 フェルゼンが咆哮をあげると、グランツがハッとしてニド達に声をかける。

 「魔王様だけに戦わせるわけにはいかない! みんな、手伝おう!」

 「わたしも行く」

 「怖いけど……や、やるしかないよね」

 トレーネ、エリンが前に出て言う。

 「お、お前はここで私を守るんだぞ!」

 カタカタ

 パンドスがハニワゴーレムを撫でながら叫んでいると、ハニワゴーレムが足元の土をこね、剣を作って構えた。

 「やっぱりかわいい。名前はへっくんにしよう」


 その近くでは、体の震えが止まらないニドが呟く。

 「……ええい、静まれ俺の体! 俺も、い、行くぞ!」

 「仕方ない、リーダーだけ見殺しってのもね」

 アルもガチガチと歯を鳴らしながら軽口を言う。

 「ま、俺達がやばくなったら二人は逃げてくれ。ペリッティさん、コトハとサンを頼むぜ!」

 そう叫びながらドアールが走り、グランツ達もフェルゼンに加勢するため戦闘態勢に入った!
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