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第六章:ヴァント王国の戦い編
第百四十九話 生死をかけた戦い
しおりを挟む「ぐほ……!?」
「ニド!? ぐは……!」
「グランツ! ニドさん! 『疾空破』!」
【ふむ。風の力に風の技を使うとは愚かな。ふん!】
「そ、そんな!? わたしの最強技なのに!?」
グランツとニドを叩きのめし、エリンの技を手を払っただけで打ち消したグラオザム。その隙に、フェルゼンとドアールが斬りかかる。
カン!
ガキン!
【ふむ。いい斬撃だ。風と土では相性が悪いのによく持っている……流石は英雄殿といったところか?】
「俺は無視かよ! そらあ!」
【寝ているがいい】
「ぷあ!?」
ぼぐん! と、ドアールの顔面に拳が入り、壁へと叩きつけられ気絶するドアール。
「てめぇ!」
すでに血だらけのフェルゼンが剣を振るう。戦闘が開始されてから数十分。ダメージが取れていない訳ではないが、力の差は歴然としていた。
【おっと、危ないな? ふむ。あの人間、死ななかったか。あの青い目の男にやられたダメージは回復していないようだ――】
「(こいつはつえぇ……! 普段なら喜ぶべき、そして死に場所として相応しいが相手が破壊神のしもべじゃ死にきれねぇ……それに冒険者共も皆殺しにされちまう……)どおりゃああ!」
【無駄だ】
ガッ! ドゴ!
「がああ!?」
左腕と胸にダメージを受け、吹き飛ばされるフェルゼン。そこに近くにいたサンが回復に走る。
「……大丈夫……じゃないですよね……≪ハイヒール≫」
「悪ぃ!」
「強すぎる、カケルさんはどうやって勝ったんだ……」
回復したフェルゼンがシュタっと立ち上がり、同じく回復したグランツが横に立ち呟く。それにニドが答えた。
「あの時、俺達は気絶していたから見てないんだ。光翼の魔王が見ていたはずだが……」
「光の嬢ちゃんか。今はカケルと一緒にいるのか」
そこでアルが口を開いた。
「ああ。あの時は風斬りの魔王もいたんだけどな、まるで歯が立たなかったよ」
「(あいつは魔王の使命より森の守護を取ったからな……レベルなんざ上がってないだろうからそうなるか)」
【万策尽きたか? ではトドメを刺してやろう ≪ブラックウイ――≫】
「あの技……!? あれは私達を一撃でなぎ倒した魔法!」
コトハが悲鳴に近い声を上げると、グランツ達は構えを取り、備えようとした。だが、その時グラオザムの近くで倒れていたシュラムが呻いた。
【も、もうダメだ……し、消滅する……】
【ふむ!? もうちょっと! もうちょっとだけ耐えろ! すぐ贄を用意してやるから!】
【そ、そう言ってからもう結構経つよな……あの、町とかで人を攫って、とかにしないか……? もうこの際動物でもいいから……】
【あと一歩のところで……! ≪ブラックウインド≫!】
「いきなりかよ!? うお!?」
怒りながらブラックウインドを放ってきたグラオザム。
「くっ、すごい威力だ……!?」
「いや、あの時に比べれば全然マシだ……」
【ふむ……弱くなっているか、もう少し待て!】
【は、早くぅ……】
気持ち悪い声をあげるシュラムに舌打ちをしながらフェルゼン達へ向き直る。何とか立ち上がりながら、トレーネがハニワゴーレムを抱き上げて話しかけていた。
「痛い。へっくん、大丈夫?」
吹き飛ばされたり、切り傷を負ったりとメンバーがボロボロにされる中、ハニワゴーレムは少しヒビが入っていた。だが、胸をドンと叩き、平気さをアピールする。
「わ、私のゴーレムだぞ!? さ、さあ! あいつを倒せ!」
パンドスが叫ぶと、ハニワゴーレムはコクリと頷き、トレーネの手から離れ、フェルゼンへと突撃した。
「あ」
「おう!? なんでえこのちっこいのは。忙しいんだ、後にしろ!」
フェルゼンは叫ぶが、ハニワゴーレムはちょいちょいと足を突いて振り向かせようと必死だ。
「おっちゃん。へっくんが何か言いたいみたい」
「くそ忙しいのに……あん?」
フェルゼンがハニワゴーレムへ向くと、パァァとした感じで両手を広げて喜び、身振り手振りで自分を指したり、グラオザムを指したりとちょこちょこ動いていた。
「……ゴーレムってあんなに動くものだっけ? どうなの?」
エリンがパンドスの胸ぐらを掴んで尋ねると、しどろもどろになりながら答える。
「た、多分だが、ここは土の力を封印した神殿だから、ゴーレムが特殊な形で、う、産まれたのかもしれない」
「なるほどね」
ぽいっと捨てて状況を見るエリン。するとフェルゼンがニヤリと笑った。
「ほう……お前見どころがあるじゃねぇか! いいぜ、気にいった! 行くぞ!」
コクリとハニワゴーレムが頷き、フェルゼンの前に立つ。フェルゼンはつるりとしたハニワゴーレムの頭を掴んで、マナを送り込み始めた!
【ふむ? 悪あがきは止めた方がいいぞ。楽に死なせてやる】
「まあ見て行けって。こいつの男気をな!」
ゴゴゴゴ……
「へっくんが!?」
トレーネが驚いたのも無理はない。フェルゼンのマナを供給されたハニワゴーレムがぐんぐん大きくなったからだ! 2メートル……3メートル……そしてついに天井ギリギリの10メートル近くへと成長したのだった!
【な!? こけおどしを! ≪エアドライブ≫】
グラオザムの放った風の渦のような魔法がハニワゴーレムを直撃する、しかし大きさが違いすぎ、ダメージは殆どなかった。
「……やっちまえ!」
フェルゼンが叫ぶと、ハニワゴーレムは前のめりに倒れ始めた!
【な、何!? 攻撃を……! いや、ダメージが薄かったか! 回避を! ど、どこに行けばいいのだ!? うわあああああああ】
ズゥゥゥン……
「嘘……」
みんなが沈黙し、コトハが目を丸くして呟くと、グランツ達が歓声をあげた!
「やった……! やったぞ! すごいぞへっくん!」
「へっくん頑張った」
「うーん、確かにあれなら避けられない……」
思いも思いの感想を言い合っていると、ペリッティが叫んだ。
「まだよ!」
ガシャン!
「ああ!? へっくんが!」
ハニワゴーレムが撃ち抜かれ、その開いた穴からグラオザムが飛び出してきた!
【ぐうう……一度ならず二度までも……確かになりふり構っていられんか……】
「ここでトドメだ!」
【急にいきり立つとは痴れ者が!】
フェルゼンが首を落とそうと斬りかかり、満身創痍のグラオザムがそれを受ける。
「チッ、まだ元気じゃねえか!」
ブオン!
【まだだ……他の封印も解かねば……ここは退く。貴様等の顔、覚えたぞ】
剣撃をかわしながらシュラムを抱え上げ、グラオザムは羽を広げて空を飛ぶ。
【……】
【ふむ……いかん、とりあえず魔物でも食わせねば……さらばだ】
天井を破壊しながら、海底神殿からグラオザムは逃げていった。それに気づき、ペリッティは神殿を背にして走り出す。
「私は先に戻るわ! 万が一外にいる子供達が狙われたらまずい! それに今のやつなら私でも勝てるかもしれない」
「俺も行くぜ! おめぇらはゆっくり戻ってこい!」
するとトレーネが悲しそうな顔でフェルゼンに言う。
「おっちゃん、へっくんは死んじゃった……?」
「……いや、あそこを見てみろ。それじゃあ行くぜ!」
「ええ!」
フェルゼンとペリッティが走り去ると、壊れたハニワゴーレムの足元の地面がもぞもぞと動き出した。
「?」
トレーネとサンが近づくと、ボコッとハニワゴーレムが頭を出し、トレーネ達を見上げると照れくさそうに頭を掻いた。その姿は少し小さくなっている。
「へっくん!」
トレーネが喜んでいるのを見ながらグランツが安堵のため息を吐いた。
「何とか生き延びた、か?」
「そのようだ……死んでいてもおかしくない状況だったが……死者が居ないのは幸いだ……」
ボロボロのニドもグランツへ疲れた様に言う。そこに女性陣が二人の背中を叩きながら笑いかけてきた。
「さ、わたし達も戻らないと! 子供をおうちへ送り届けるまでが依頼でしょ!」
「そうですよ、ほらニドも立って」
「……お互い、厳しい女を彼女にしたもんだな……」
「ふふ、それがエリンのいいところだよ」
「のろけるねぇ……」
ブラックウインドで気絶したパンドスを引きずりながらグランツ達は地上を目指した。
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